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I love youにアイを込めて

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予想はしていたから、それほど驚きはしない。
それでもやっぱり口に出されてしまえば、別れの言葉というのはそれなりの重みを伴って響くわけで。

(…こいつも、早く気づいてくれりゃあいいのになあ)

何故だか笑いが漏れてきた。
俯くフランシスは、そんな俺の様子には気づいていない。


「何で?」
「ん?」
「何で別れようなんて言うんだ?」
意識してなかったけれど、なんだかやけに優しい声が出た。
それに安心したのかますます子供みたいに俺に引っ付いてくるフランシスをあやすみたいに抱き寄せて、ぽんぽんと背中を撫でてやる。
ここが公共の場の一角であるとかそんなことはもはやどうでもいい。照明は落とし気味だし、客はみんな自分の話に夢中だから。

「……」
「なあ、ファニー、どうしてだよ」
「…アーティが優しいから」
「……?」

真意を読み取ろうと顔を覗き込もうとしたら、むずがるように首を振ってさらに胸に顔を埋めるように抱きついてくる。
大の男――それも年上だ――に抱く感情ではないんだろうけど、可愛い。可愛いから抱きしめてやった。



「アーティは優しいのに、俺は何にも出来ない」
「…何言ってんだ」
「いっぱいいっぱい愛してる。誰よりも愛してる。でも、何より上手に愛したいのに、うまくいかない」
「……」

奴が動くたびにふわりと香る上質なワインの香りに、いまさらながら完璧な酔っ払いだなあと苦笑する。
こちらはそれほど飲んでいない。でも、なんだかふわふわとした心地がする気がした。

自分が自分でないような、むしろ自分でありすぎるような。そんな感覚。




「ねえ、アーティ、俺は大事なものを上手に愛せなくなっちゃったんだ」




顔を上げずにぽつりと呟いた奴の顎を捉えて持ち上げた。
抵抗しないで素直に顔を上げたのに若干拍子抜けしながら、潤んだ瞼にキスをする。

「……アーティ」
「別れたいっていうなら、まず第一歩はその腕を放すことじゃねえの?」
「…………」

胴体に回された腕の力は緩んだけど、俺が腕に力を込めたせいで身を引き離されることはない。
困惑気味の表情でわずかに俺を見上げるフランシスに俺は笑いかけた。

「まあ、お前が離したところで、俺は離してやんねえよ」
「……なんで?」
「上手に愛されてなんかやらねえ、って言ってんだ」
「!!」


唇に触れるだけのキスをしてやったら、また泣きそうな顔をするから逆に笑えてしまった。







「なあ、ファニー」
「……何?」



付き合い始めて何年立ったろう。
長すぎて長すぎて、もはや何があったか細かいことまで思い出せないけど。

それでもこれだけは確かだと記憶している。



「愛してるよ」

心の底からの愛の言葉を送ったのは、今日このときが始めてだったと思うのだ。
















I love youにアイを込めて

(そうして、そうして、また愛すのよ)






作品名:I love youにアイを込めて 作家名:あさひ