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暴走王子と散々な影武者

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15歳の3年後



※グッドエンディング後。北の大陸に役者修業に「行けなかった」if版ロイの話


 女王騎士長代行というのは、忙しい。
 女王騎士の管理はもちろんのこと、女王国軍の指揮統率、王都の警備指揮。そんな軍事面に関わることが主な仕事なのだが、本来女王の伴侶であるその立場は、女王の仕事をときに代行することもあり、各国使節との面会や、議会との打ち合わせ、その他もろもろの雑務も入る。
 それらをこなすと、やっと一息つける頃にはもう夜も更けた頃、ということも多い。
 だから、ファルーシュの「もうひとり女王騎士長代行がいてくれたら」という愚痴もまあ、わからなくもない。
「騎士長代行閣下、次の面会の方が、下でお待ちです」
「閣下、こちらの書類にサインお願いしまーす」
「王子ぃ〜? 来週からの終戦記念式典の準備、なんですけどぉ」
「兄上! そのようなことはかまうでない! こちらを先に頼むのじゃ!」
 次々とファルーシュに持ちかけられる仕事の山。
 しかし、それを疲れた様子も見せず、いつものにこやかな笑みを崩さずに、こなしていく。それが、先の戦争終結後、3年たった今の女王騎士長代行、王兄ファルーシュ・ファレナスの姿である。
 あるのだが。
 この状況は、絶対に間違っている! にこやかな笑顔の仮面の下で、そう叫びたくてたまらないロイだった。
「なんで! あれから! 3年もたつってぇのに! 未だにオレは王子さんの影武者やってなきゃねーんだぁぁぁ〜〜〜!!!」
 誰もいなくなると途端に募っていたストレスが一気に噴出す。
 そう、戦が終わってから3年。ロイはあの戦いが終わった直後、本当ならファルーシュが救国の英雄として周りからもてはやされているうちに、ファルーシュが忙しくてロイになんて気を回す余裕などないうちに、さっさと国外逃亡してしまうはずだった。
 むしろ、そのとき既に北の大陸へ向かう船の切符は買って、あとは出発するだけだったのだ。
 確かに、王子の格好で山賊をしてまわっていて、何のお咎めもなしに王子軍で影武者をやらせてもらっていた恩があるのに、それはあまりにも恩知らずなんじゃなかろうかと自問もした。しかし、あの頃ファルーシュは気を許せばロイのことなどお構いナシで、何日でもロイを寝室に連れ込みそうな勢いで……。いや、むしろ今もたいして変わりはないのだが。
 ともかく、それ以上そこにいたら身の危険が増すばかりと、逃げる準備は万端だったのに、旅立ちのその日、船に乗り込むために港へ行ったとたん。
「ロイ殿ですね。騎士長閣下がお待ちです。我々と共に太陽宮までお越しください」
 ロイの計画はみごとに水の泡となった。
 あの、新しい騎士長となったその直後のとんでもなく忙しい時期だったはずなのに。ファルーシュはまったくもってロイのことなど忘れていてくれていなかったわけである。
 そして、それから3年たってもまだ、ロイは逃げ出すことができていなかった。
 むしろ、逃げ出そうものならあとあと周りにも自分にもひどいことになることがわかっているだけに、今はもう逃げ出そうと試みることすらためらわれるようになってしまった。
「ちくしょう……。オレは今頃北の大陸で花形役者まっしぐらだったはずだってーのに〜〜っっ!!」
 だが、叫んでも今の状況はよくなるわけでもない。
 むしろそうやって叫ぶことで時間が浪費され、目の前にうずたかく詰まれた書類の山が一層高くなってしまうだけ。
 仕方なく、それに取り掛かろうとして一枚ぺらりと書類をめくり、途端に頭痛が襲ってきて、ロイは書類の山に突っ伏した。
 よくもまあ、ファルーシュはこんなしち面倒な書類を見て理解できるものだと思う。
「てか、なんでオレがこんな書類王子さんの変わりに見なきゃねぇんだよ……」
 そう、そんなことは王子が帰ってきてから押し付けてしまえばいいだけの話。自分にこんなことを押し付け、どこかへと一人くりだしていきやがった大馬鹿野郎に。
 ロイは傍らにおいてあったメモにもう一度眼差しを向けた。
 今日の朝、昨日のアレで気だるい中、起きて一番に目にした小さなメモ。ロイに朝から怒りの絶叫をさせた小さなメモ。
『ちょっと出かけてきます。今日の仕事代わりによろしく。 お土産買ってくるから、楽しみにしててね♪』
 見たとたんにまた沸々と怒りがわいてくる。
「ふざけんじゃねぇっ」
 ああ、もう今日は何もせずに寝てしまおう。帰ってきてから、ファルーシュが全部終わっていない仕事の責任を取ればいいのだ。
 そう、ソファの上に身を投げ出して。一眠りしてしまおうと目を閉じかけて。
「ただいまー、ロイ〜〜っっ!!」
 バタンと派手な音と共にファルーシュの執務室の扉が開けられる。
 とたんにロイの額に青筋が浮いた。
「てめぇ……どこほっつき歩いて……っ! のあ〜〜〜っっ!!」
 だが、そんなロイの怒りも、顔に満面の笑みを浮かべ、ロイめがけてまっしぐらに突進するファルーシュにはなんの静止にもならず、みごとロイは半身を起こしかけたその身体を、ファルーシュの身体ごとまたソファの上に沈めることとなった。
「あーロイっ! 会いたかったよ〜っ 一人にさせちゃってごめんね〜。さみしかったよね〜っ、ぼくもす〜〜〜〜っごいさみしかったんだぁ〜〜っ」
「んなわけあるか〜〜っ!! ってか、てめぇ何服脱がせてやがる〜〜っっ!!」
 ぎゃーっと叫んでファルーシュを押しのけようとしても、ファルーシュは容易にはどいてくれない。むしろ、もがくロイを的確に組み敷いて、するすると複雑な騎士服をいともたやすく脱がせにかかる。
「ああ、もう、もどかしいっ! なんで、今日に限ってこんなしちめんどくさい服着てるのさっ! ま、でもあっさり脱がせられちゃうのもちょっとつまんないんだけどねぇ〜」
「てめぇがオレに身代わりやらせたんだろうがっ!! つか、こんな真昼間から、ふざけてんじゃねぇっっ」
 ぜいはあ、とロイはファルーシュの下で必死の抵抗をする。
 まだ日も傾かない真昼間。しかも、騎士長の執務室の扉は開け放たれたまま!
「やだなぁロイ、今更照れなくても〜」
「照れてねぇよっ!!」
「いいじゃな〜い、せっかく、ロイにお土産買ってきたんだからさ〜」
 ロイの台詞などやっぱり完全に無視するファルーシュは、ふと傍らの小包を、ロイを拘束したまま片手で器用に広げていく。
 土産に気を取られているうちにとロイは必死でもがいたものの、ファルーシュの執念のような拘束からのがれることはできなかった。
「じゃーん、こっちはバベッジ特製〜っ、それから、こっちはムラード特製〜っ」
 と、取り出したのは、なにやらスイッチのついた妖しい物体と、妖しい薬の小瓶。何なのか聞かずともロイの背筋に悪寒が走った。
「戦争からやっと3年たって、ぼくもやっと18歳になったんだよ。もう、どれだけこのときを心待ちにしたか!」
 じゃあ、さっそくと、ファルーシュはそれを手に、ふふふと妖しい笑みを顔中に浮かべた。
「……だ、誰か、助けてくれぇ〜〜〜〜っ」
 青ざめたロイの、涙交じりの細い悲鳴はしかし、誰にも届くことはなかった。


作品名:暴走王子と散々な影武者 作家名:日々夜