暴走王子と散々な影武者
でも、ぶっちゃけ痛みなんか忘れるくらいにその人物があまりに強烈過ぎた。
「ああん、もう、ぼくを置いて行っちゃうなんてひどいじゃないか、ロイ〜〜っ! もうぜ〜〜ったい離さないんだからね〜〜っ!」
言葉尻にハートが乱舞する男というのは、ロイが知る限りただ一人だ。
ああ、オレのつい今しがたまでの傷心は一体。
とめどなく流れていた涙が、また別の意味で量を増して流れ出した。
その後、北の大陸にたどり着くまでに、何度となくロイは「オレはファレナに帰るんだ―――!!」と、ファルーシュから逃れようと海に飛び込もうとした。そのたびに船員達が真っ青になって引き止めたことは、もはや言うまでもなく。
結局、もう会うことも無いだろうと思った王子との関係は、皮肉なことにこの先一生、続くこととなってしまったのだった。
作品名:暴走王子と散々な影武者 作家名:日々夜