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麗しき刃の調べ

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ひくり、と、深王の口元がひきつった。続いて、微かな震えとともに、深くためいきをつく。彼の前には、とある冒険者の一団がいた。海都から深都へと種々の困難をへて至り、今は深王の言葉をいれて動いているとても優秀な冒険者の一団だ。もっとも、揃ってしまりのない笑いを浮かべている彼らを見て、そうであると気づく人間は皆無だろう。
「オマエたちがゲートキーパーを破壊したとき、私は確かに言った。あれは失われた技術が作り出したものの一つで、一定期間をおいて復活する。だから、当面は好ましくない人間に対する警戒を強めなくてはいけないが、それもしばらくの話。オマエたちがしたことは確かに問題だが、あまり気にやむなと」
 うんうん、と、冒険者たちはもっともらしい表情でうなずいている。
 だが、と。深王は地を這うような声で言った。
「壊してしまったという事実については気にやむなと言ったが、どうせ復活するから壊していいなどといった覚えはない!」
「言った言った」
「今言った」
「黙れ!」
 口々にさえずる冒険者に対し怒気を発すると、深王は手近にいたウォリアーの服をつかんだ。
「一度ならず、二度も三度も……あれはぶしつけで好ましくない侵入者を止めるための要だと言ってるだろうが、ああ? 一回ファイアオイル頭からかぶってみるか? その足りない頭が炎の魔剣に変わるのだ、楽しそうだろう?」
 ぎりぎりと機械の指の関節を鳴らしながら、深王はウォリアーを睨みつけた。ウォリアーはまじめに百年の時を生きる存在の言葉を聞いているように見えた。
 息切れなどするはずもないが、脅し文句のバリエーションはつきる。特に穏やかな深都で心静かに世界樹の声を聞くことに没頭していた深王ともなれば、そもそもそういった下賎なもののバリエーションが豊かなはずがない。その一瞬の間隙をついて、ウォリアーは口を開いた。
「あ、鼻毛出てますよ」
 ぽかんと深王は目を見開く。次の瞬間、世にも恐ろしい笑みが浮かび、どこかで歯車がかみ合うような音が響いた。
「卿らはどこまで私を愚弄するつもりだ!」
 わーい、怒られた! と。反省の色なく騒ぎながら、冒険者たちが逃げまどう。それを謎の機械の部品が追い、部屋の柱や壁に当たってがしゃんがしゃんと壊れ落ちた。
「なんてお優しい」
 そのさまを見ながら、アンドロの少女がうっとりとそう口にする。しばし彼女が、ぎりと歯を食いしばる深王の姿を見ていた。だがやがて小さくうなずくと、静かに部屋を出た。



作品名:麗しき刃の調べ 作家名:東明