二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

麗しき刃の調べ

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 




 ばたばたと静まり返った天極殿星御座の廊下を走っていた冒険者たちは、やがて速度を緩めた。そして、ちらりと謁見の間をふりかえる。
「だからやめようって言ったじゃないですか」
 ためいきをつくプリンスに、パイレーツがあっさりと無理だと申し渡す。
「経験値とドロップ考えりゃあ、アレを放っておくなんてのはどーかんがえてもなかろーもん」
 そうだそうだとファランクスが頷く。二人を見、プリンスは小さく唸った。
「つーかあのドロップって、もしかしてもう一回組み立ててみたらネジが余りました状態じゃあなかろーか」
「……せめて、ゲートキーパーが復活するまでは我々があそこを守るとか」
 わははと笑いあう二人に対し、恐る恐るプリンスは申し出た。だが。
「あそこから先に進むなとな」
「だから、必ずぶっこわす前提で話すのはやめてください!」
 思わず声をあらげたプリンスに対し、ファランクスがばしばしと肩を叩く。
「世の中いろいろと一筋縄ではいかんのだ」
「元凶はアンタたちでしょう!」
「お、コイツ一人だけいい子ぶりっこする気だぞ」
「高く売れますねってドロップ抱えてほくほくしてたくせに」
「だってあの時は宿代もなかったから!」
「金がないのは首がないのと一緒じゃのー」
「そうそう同じ同じ」
「だから、危急の場合はともかく必要以上には」
 オッサン二対若者一の不毛な議論は、背後からおずおずとかけられた声で中断した。肩で息をするプリンスと、不審げにふりかえるパイレーツ・ファランクスの視線の先には、超古代の技術でつくられたアンドロの少女――オランピアがいた。少しだけお時間をいただけますか、と。まるで初めて世界樹で出会ったときのように、彼女言った。
「ありがとうございます」
 豪快に頷くファランクスに、にこりと笑顔を見せると、彼女はすっと冒険者たちに近づいてきた。
「あまり深王様に心労をおかけしないようにとお願いにまいりました」
 よろしいですか、と。そう言って、彼女は小首を傾げる。
 しかしなぁ。もうしわけありません。別に心労をかけるつもりでは。そうそう勝手に。ごちゃごちゃと手前勝手な言い分を並べ立てる冒険者たちの姿に、すいと彼女は目を細めた。
「ゲートキーパーで遊んでないで、さっさと神殿を抜けてフカビトつきをどうにかしろ」
 いきなりのドスの聞いた声に、皆は息をのんだ。その表情を見回し、オランピアは小さくうなずいた。そして。
 彼女が再度口を開きかけたところで、すいとウォリアーが進み出る。
「おねーさん、鼻毛出てますよ」
 オランピアは目を見開いた。ウォリアーはとてもまじめな表情だった。
 次の瞬間、アンドロの少女がまとう服が翻る!
「――!」
 パイレーツがウォリアーの襟首を引き、タワーシールドを構えたファランクスが進み出る。どう隠していたのかと不思議になるような大刃が鋼鉄の表面を削り、いやな音を立てる。深王のものとは違い、明らかに当てる気の一撃だった。
「撤収!」
 叫ぶや否や、パイレーツはウォリアーから手をはなし、かたわらのゾディアックを抱えて走り出す。
「つぅか鼻毛がマイブームか!」
「はりつめた空気を和ませるつもりだったんだが」
 深都にわしのゆーもあは通じないらしいのぉ、と。走りながら、どこか残念そうにウォリアーがためいきをつく。そこに、背後から冷たいまなざしをあびたゾディアックとプリンスの悲鳴が重なった。コメントはぬきにして、パイレーツが走る速度をあげる。
 後頭部を蹴り挙げる勢いで建物を出ていく冒険者たちを見送り、オランピアは刃を収めた。
「少しはまじめに進む(やる)気になればいいが」
 そう言って、あっさりと踵を返す。
 数日後、彼女が彼らとゲートキーパーの間の前で邂逅を果たしたというのは、言うまでもないオチである。
 その後彼らがどうなったか知る者はない。
 
 
fin.
作品名:麗しき刃の調べ 作家名:東明