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【APH】せつないほどに、痛い。

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 愛されなかった子どもが、俺を憎んでいた子どもがどうして俺を愛するようになったのだろう。



「…どうして、」



 知らないままでいたならば、こんなにも辛く胸を掻き毟られるような想いに打ちひしがれることなどなかっただろうに…。











「…兄さん、兄さん」

不意に肩を揺すられ、プロイセンはぼんやりと目を開く。靄がかかったような視界に青が映る。

「…フリッツ?」

美しい濁ることのない青い目をしていた。心持ち横に傾いた頭。口元に浮かぶ柔らかな笑み。プロイセンは手を伸ばす。
「…兄さん」
小さな手のひらがプロイセンの手を掴む。おずおずと細く頼りない指先がプロイセンの頬を撫で、濡れた頬に柔らかい唇が押し当てられる。
「泣かないでくれ。兄さん。…兄さんにはおれがいる。おれはあなたをひとりにはしない。…おれはずっとあなたのそばにいるから…」
濡れた瞳に映るのは柔らかな陽の光。美しい青。…親父が、俺が望んだ、「ドイツ」。

「…ドイツ」

俺の血肉の受け皿。俺と親父が望んだ美しい器。それに俺のすべてを注ぎ込もう。そうすれば、更に器は満たされ、完全なものとなるだろう。



 ああ、とても、ひどく穏やかな気分だ。



この器が完成したなら、親父は喜んでくれるだろうか?俺を誉めてくれるだろうか?
そうしたら、俺はあなたの元へといけるだろうか?

「…Ich liebe es …Mein sch?nes Reich…」

白くまろやかな頬を夢見心地に撫でる。子どもは今にも泣き出しそうな顔でその手のひらが与える愛撫に目を閉じる。

「…Ich liebe Sie auch.」

微笑んだプロイセンの目蓋が再び眠りに落ち、頬を一滴、涙が伝う。それを子どもは唇で掬い、舌で受けた。

「…あなたを愛してる。プロイセン、だから、おれを置いて行こうとしないでくれ」



プロイセンが何を望んでいるのか知っている。知ってしまった。
おれにあなたが忠誠を誓うのは、彼のひとの為。
おれにあなたがすべてを与えるのは、彼のひととの約束を果たす為。
おれをあなたが愛するのは、おれがあなたの器だからだ。



「…渡さない。プロイセンはおれのものだ」


生かすのも殺すのも、この青年の生殺与奪権はこの手の中にある。
子どもはプロイセンの頬をやさしく撫でる。