子供の情景
何かを思い出すように、エイトは自分の両手を見つめる。
「それで俺が、今ここにいるから」
「……なんだよ、それ。つまんねー」
心底期待はずれといった顔をして息をつくと、ククールは再びエイトの膝の上に身を投げ出した。エイトは頭をかきながら、申し訳なさそうに照れ笑いをする。
「アーアー、幸福な子供時代の記憶を持ってるやつはいいねー。歪まずまっすぐ。愛されるわけですよ、誰からも」
ククールはエイトに背を向けるようにごろりと横に転がった。
「俺には拒絶の記憶しかねーよ」
つぶやくククールの表情は、エイトからは見えない。
「環境が同じなら俺もお前みたいに育ったのかね」
「いや、それはないと思うけど」
にべもないエイトの返事に、ククールは瞬間言葉を喉に詰まらせた。その後、ぱっと体を起こし、
「お前、たまにきっついよな!」
エイトを指差してわめく。
「優しくないよー」
傷ついた風を装い、ククールは再びエイトに背を向け、彼の膝に転がった。
「ごめん」
銀色の髪に触れる。ククールは拗ねたように身を縮めた。
「愛が足りないのよね、愛がー」
嘯くククールの背中は、なぜか小さな子供のように見えた。