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どこか会えそうな場所で

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 もしかしたら、昼間だったら、オレはオレの言うべきセリフをそこに見つけられたかもしれない。でも、空はまだ夜の中にあった。真っ暗な空のどこにもオレ専用のカンペは書かれていなかった。

 あいつらしいな、と笑うように山本がつぶやいたとき、すでに空は白み始めていた。


 「ツナ」
 「んー?」
 「ヒバリが言ってた」
 「何を」
 「沢田綱吉には持たせてはいけない」
 「なにそれ」
 「俺もそう思った」

 山本は空に向けていた視線をオレに移した。

 「なあ、ツナ」
 「なあに」
 「ヒバリの事、どう思ってる?」

 これを誰かが聞いていたら、きっとあきれてしまっただろう。もしくは文法上の訂正を求めたかもしれない。6年も前にこの世から去ってしまった人間を評するのに「どう思ってる」は正しくない、と。
ああでも、と素直にオレは感心した。やっぱり山本は鋭いんだろう。



 どうって、世界を真っ二つにしても笑える恐ろしい人、じゃあ、ないかな。
口に出そうか迷って、再び空を仰ぐ。


 ちょうど夜の裾はオレの頭上にあり、先ほどよりも西へと向かっていた。その時になってようやく俺は気付いた。
この夜は、いつも朝に追い立てられ慌しく退いて行く、弱弱しい夜じゃなかったんだ。まるで朝にちっぽけな玉座を放り投げて、新しい場所へと挑んでいくような荘厳な夜。
 この夜を一度だけ見たことがある。他でもない6年前のあの日。雲雀恭弥の訃報が届いた日の夜だ。あの日悠然と去って征く夜をオレは、誰かに似ているなと白々しく思いながら見送った。
あの夜は違う夜だった。いつもやってくる夜ではなく、どこかへ行ってしまう夜で、だからこんな夜は、きっと二度と現れないだろうと思った、が、ハズレだったのか。
 あの日の夜が今、オレの頭上を覆い、6年のタイムラグを経て過ぎ去っていく。






 結局、それ以上の会話は成立することなく、俺たちは並盛を、祖国を後にした。
そして現在、オレはドン・ボンゴレとして健在。心身ともに健康、なつもりである。
けれど、あの日、親友の質問に答えられなかったオレがいたように。あの再び現れた夜の裾に、引っかかって行きたいと思ったオレがいたのかもしれない。

 そう思うようになったのも、実は、最近ある種の心境の変化が起きたからである。
いや、気付いたというべきか、それとも観念したというべきか。何にしろ、勘の鋭い親友に諭されて、オレはようやく認めようと思ったのである。
 老舗マフィアの解体作業に明け暮れる身の上、余裕などかけらもないと思っていたオレだがなんと、只今。
老いらくの恋、というか。ああそうだとも、競争相手でもあり共犯者でもあり今は亡き雲雀恭弥様よ。


 





貴方の魅力を消すには、死は力不足であったようで。
この世で最長の遠距離一方通行恋愛、つまり片想いしています。

作品名:どこか会えそうな場所で 作家名:夕凪