【リリなの】Nameless Ghost
ユーノは最後にそう短く受け答えをし、アリシアはそのまま念話の回線を遮断した。
窓の外、少し遠くの方から車が停車するブレーキ音が聞こえた。念話は電話とは違い、周囲の環境の音が聞こえてこないものだから、ひょっとすれば彼女は会話の途中で外に出ていたのかもしれないと思いながらユーノは「ふぅ」と一息ついた。
「時には子供らしく……か」
自分が子供らしくない子供だと言うことはよく理解している。スクライアにいるときも、8歳でミッドの魔法学園を卒業したときも、その在学中も自分はずいぶんとひねくれた子供だったという自覚もある。
それは、自分よりも年上でありながら子供らしさというものをなくすことをしなかったベルディナの影響だったのか、それともスクライアに対する恩義を果たすために早く大人になりたいという感情からだったのか。そればかりは今となっては思い出すことが出来ないが、ユーノは置き去りにしてきてしまった子供である自分を取り戻すことも悪くはないかもしれないと思った。
ユーノはしばらくうつむいてその気はなくとも背中を押してくれた少女と自分の理由となってくれた彼女の姿を思い浮かべ入浴のために部屋を後にした。
作品名:【リリなの】Nameless Ghost 作家名:柳沢紀雪