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【リリなの】Nameless Ghost

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 なのははまだ聞かれてもいない弁明をしながら両手を振りながら愛想笑いを浮かべる。

『驚かせてごめん、なのは』

 横目で確認したユーノはこっちに目を向けることなく周囲の男子生徒と話をしている。何となくだが、なのははずるいと思った。

『……後で、いっぱいお話ししてくれたら許してあげる……』

 念話でもユーノにそんなわがままを言うのは恥ずかしい。そう、これはわがままだとなのはは自覚している。思えば、こうやって他人にわがままを言えるようになったのはユーノが最初だ。

 ユーノは何というか、強くあろう、他人に迷惑をかけないようにしようと頑なになる心をまるで平気な顔で解きほぐしまう人物だとなのはには感じられる。

 なのはは帰宅前のHRで教師の諸連絡を耳から耳に流しながら、やっぱりユーノはずるいと思ってしまう。たった一言でこっちの心を乱し、そばにいるだけで背中を温かくしてくれて、目に見えない所に行かれては寂しさで笑顔を浮かべることが出来なくなってしまう。

 存在そのものに心が揺さぶられてしまう。自分がそうでありながら、彼はいつだって平然としてまるで自分を年下の妹みたいに扱って……ずるいと感じながらもそんな関係に安らぎ、いつまでもこうしていたいと思ってしまう。

『ユーノ君は、卑怯だ……』

 何となく納得できない、対等ではない気がするとなのはは思う。そして、その思考が念話のラインに乗っていたことを彼女は気づくことが出来なかった。

『……………』


********

【魔法技術が神秘に端を発しているかどうかは厳密な証拠となる記述はどこからも見つかっていない。しかし、現代魔法においてもベルカに代表される古代魔法においても願い、祈り、求めるという魔法の基本原則から鑑みると、それらは自然界の何らかな超越存在に対して協力を願い、それより力を得るという一種の自然崇拝的な宗教的儀式を思わせるものである】

「うーん……」

 なのははハラオウン邸、仮設駐屯所のリビングで腰を落ち着けながらアリシアより「訳して読んでおけ」と言われた本を開きながら、辞書を片手にペンを走らせる。

【そもそも魔法技術とはそれまで定義が不可能だった超自然的な……】

 と、なのははそこまでノートに記してその先の単語を見、眉をひそめた。

「えーっと、”in other word”? 違う言葉で……でいいのかな?」

 なのはは念のため【ワイズマン出版、現代ミッドチルダ語辞典(日本語訳版)】をパラパラとめくりその言葉の意味を確認しておいた。
 この辞書は、ミッドチルダで出版されたもっともポピュラーな辞典を日本語訳されたものだ。
 元々、これはユーノの所有物で彼が日本に住む際にアリシアからもらったものらしい。
 この辞書の翻訳自体はアリシアが行ったものであるが、出版物の関係から勝手にそんなことをしてもいいのかという疑問に対して彼女は「売り物にしない限りは問題ないはずだ」という実にグレーな回答をもらっている。

 それをなぜなのはが持っているのかというと、つい先日、アリシアが『魔法を習得するには身体で覚えるだけではなく体系的な修練も必要だ』とのことを言われ、そのためには本を読むのが一番だということからこのようなことになったのだ。

 一日最低でも二ページは翻訳するようになのはは指示され、今のところは何とかそのノルマを達成できていると言うことだ。

 二ページ程度なら大したことはないと思うだろうが、多少英語に似ているとはいえ習ったことのない異国の言葉に使われている文体は専門書特有の非常に硬い表現。しかも、小学生であるなのはが両手で抱えなければならない規模の書物で一文字あたりの大きさも小さくそれらがびっしりと敷き詰められた非常に細かい紙面。

 ある意味、ミッドチルダ出身者であるフェイトやクロノでさえ『目が痛くなる』というものを翻訳しながら勉強せよと言われているのだ。
 正直良くやっているとユーノやクロノも言葉をそろえる。

「えーっと、【言葉を換えると、超越した状態の現象】ああ、超常現象か……【超常現象を確たる……】えっと、【数学的、物理的な論法で書き示すことこそが魔法技術の発祥であると私は解釈する】……あうぅ、難しいよぉ……」

 目が痛くなるどころか頭が痛くなる。知恵熱で倒れそうだとなのはは思いながら単語の意味をつなげながらその意味を解釈していく。

【しかし、現代魔法に代表されるような、デバイスを用いてその儀式的奇跡をプログラム的に行使する方法論がいつの時代に発案され主流になっていったのか、それを示す記録は未だ発掘されていない。私が十年近くの時間をかけて無限書庫にこもり調べ上げたものであっても、それが1000年近く昔にさかのぼること、そして、その始祖であるデバイスがどうも[トライアル・アーツ]と呼ばれていたらしいということしか分からなかった】

《Wow. My name is written this page, master. This writer of this book had very good intelligence》(おお、私のことが書かれていますよ、マスター。この著者はなかなか目の付け所がいいですね)

 なのはが書き記していく文章の中にかつて自分に付けられていた名前を発見し、レイジングハートはどことなくうれしそうに紅い光を点滅させる。

「もう、邪魔しないで、レイジングハート」

【このように、我々が今日次元世界で広く使用している魔法技術にはその原初において未知の部分が多く存在する。特にインテリジェント・デバイスに関してはいかにして人間的な知性を機械に与えることが出来たのか、その目的に至るまで数多くの謎が隠されている】

「えーっと、【この論文では、インテリジェント・デバイスの自意識やその目的に関しては詳しく追求する予定はないが、それら魔法技術に関していかに未知の部分が多いかを知るきっかけとなっていただければ幸いである】。ふーん、結構分からないことって多いんだね」

《Because human's doing also have much nonsence reason. It is difficult to search the meaning of all things》(人の行うことには時にナンセンスな目的も多く含まれているものですからね。それらすべてに意味を求めることは難しいかと)

「分かってなくても使えるんだから、不思議だよねぇ」