【リリなの】Nameless Ghost
《I think the technology generally is so too. You can also understand to use the computer even though you do not understand substance of it. The expression may be misleading , but this is same thing》(技術というものは得てしてそういうものだと思いますよ? マスターも、パソコンのような中身がどうなっているかよく分からないものでも使い方は分かるでしょう? 語弊はありますが、それと同じようなものかと)
「ああ、そっか。わかり易いや。えーっと【魔法技術に関する未知。それらを提示することで本稿の緒言を終えたいと思う】。やっと、見出しが終わったんだ。長かったぁ……」
《Mybe rest part is only acknowledgement or reference. You can jump to read. Congratulations master. Your norm finish》(どうやら、残りの部分は謝辞や参考文献の列挙のみのようですから、とばしてもかまわないでしょう。お疲れ様でした。ノルマ達成です)
「ふう……ありがとう、レイジングハート」
《Well , the demand of Little Aricia to you is strict. She maybe think this demand is soft,but it is hard for you to demand the same to YU-NO 》(それにしても、アリシア嬢も要求が厳しいですね。本人はセーブしているつもりでしょうが、ユーノと同じものを要求するのはいささかマスターには荷が重いかと)
「むう……」
なのはにしてみれば、レイジングハートの言葉はまるで自分があまり頭がよろしくないと言われているように感じ、面白くない。
だが、クラスの秀才やアリサのような天才に肩を並べるほどの知性があるユーノと比べられればなのはは何も言えなくなってしまう。
「ただいまぁー」
少しだけ落ち込んでしまうなのはだったがリビングを開くと同時に買い物に行っていたエイミィの帰宅に面を上げた。
「あ、お帰りなさい。エイミィさん。それと、フェイトちゃんも一緒だったんだ」
リビングに同時に顔を見せたフェイトは、今度アリシアに会うときに差し入れるお菓子を買いに行っていたのだ。
なのはは先ほどまでしていた課題があったため、残念ながら一緒は出来なかったが
どうやら途中でエイミィと合流していたらしい。
「うん。スーパーでばったりと。なのははもう終わった?」
フェイトはそう言って微笑み、なのはの手元のノートをのぞき込んだ。
「なのはちゃん、お勉強してたんだ?」
「あ、はい。学校のじゃないんですけど」
エイミィはキッチンとリビングとを隔てる木板のカウンターに近くのスーパーで買ってきた食材や飲料水を置いて、少し肩を回して一息ついた。
「ふーん、なんだか難しそうなもの読んでるね。雑学書?」
「えーっと、論文です。アリシアちゃんのお薦めで……」
なのははアリシアの本『魔法学概論』と銘打たれた表紙をエイミィに見せた。
「うわぁ、これあたしも士官学校でやったよ……懐かしいなぁ」
しかも卒業間近の最終学年の最後の課題で出されたものだとエイミィは溜息を吐き、当時は寮に住む友達や級友達を集めて大勉強会を開催したと呟く。
「そんなに難しかったんですか?」
「難しいってもんじゃないよ。はっきり言って理解不能。特にあたしなんか魔法が使えないから実感できる部分も少ないし。クロノ君やリンディさんは『ためになった』って言ってたけどねぇ」
なのははこの本をアリシアから渡されるに当たり、「魔導師だったら座右の書にするべきものだよこれは」と言われていたが、それもあながち間違いではないと思い至る。
「だけど、なのはちゃんは翻訳しながらだから、私たちより大変かもね」
エイミィは本に熱い視線を注ぎ始めたなのはに少し苦笑をしながらエコバックに入れられていた食材を冷蔵庫へと移し始めた。
フェイトはエイミィの後ろ姿を見ながらなのはのノートを軽くチェックして、赤ペンで小さく丸を付けノートの隅に小さく【合格】とサインを入れた。
「ありがとう、フェイトちゃん。どうだった?」
なのはは【合格】と日本語で書かれたサインを嬉しく思い、恒例となったフェイトの評価を聞く。
「所々直訳過ぎて意味が通りにくいところがあったけど、大きな間違いはなかった。これならお姉ちゃんも合格にしてくれると思う」
完璧だとは言えなかったが、ミッドチルダ語を本格的に習いだしてまだ一月も経っていない状態でここまで訳せれば上出来だとフェイトは判断した。
普段、なのははミッドチルダの人間と話をする際には翻訳魔法というものを使っている。それは、クロノ達ミッドチルダの者達が地球で生活する際もなのはと逆の理由で翻訳魔法を使っている。
しかし、翻訳魔法はあくまで相手に対してイメージを伝達してこちらの言いたいことを”相手に”理解させるものであるため、実質的にその言語を理解したとは言えないのだ。
故に、こういった書物や書類などに記されているミッドチルダの言語は翻訳魔法で理解することはできない。
それでは些か(自分がわざわざ翻訳するのが)面倒だろうというアリシアの提案からなのはは彼女の指導でミッドチルダ語を習い始めたのだ。
「本当になのははお姉ちゃんとマンツーマンだね。羨ましいなぁ」
訓練にしてもこういったソフト面においても、アリシアは何かとなのはに付き合い、色々なことを直接伝えようとしている。
なのはとは逆に地球や日本の言葉や文化、歴史を習わなければならないフェイトやユーノ。非常に多忙でなのはに付きっきりになれないクロノやエイミィ、リンディ。
ある意味、地球の文化にある程度精通していて、かつクロノやリンディほど多忙というわけではないアリシアこそこの仕事にうってつけと言えるのだ。
だが、この半年で若干シスコンの気が生じつつあるフェイトとしては、自分も戦闘訓練や語学に関して、アリシアの手取り足取り教えて欲しいと考えてしまう。
「うう、だけどとっても厳しいんだよ?」
なのははその風景を思い出して少し背筋を凍らせる。
なのはの言う厳しいとは、何も鬼のような形相で何処ぞの海兵隊の教官よろしく下ネタだらけの卑猥な言葉を垂れ流すということを言うのではなく、また、少しでも反抗すれば直ぐに折檻をしてくる類のものではない。
「そんなに厳しい?」
フェイトも、その様子をいつもとなりでユーノと鍛錬をしながら見ているのでなのはが普段どのような訓練を受けているのかは知っているつもりだったが、それのどこから厳しいという言葉が出てくるのかよく分からなかった。
「厳しいよ、だって。容赦ないんだもん」
作品名:【リリなの】Nameless Ghost 作家名:柳沢紀雪