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【リリなの】Nameless Ghost

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《Sorry, previous owner.I whom you picked up had become dirty.》(申し訳ありません、元所有者。貴女に拾っていただいた私は汚れてしまいました)

「そりゃあ、致命的だったな。お前が初めて奪った命が害虫だとは泣かせるぜ」

《May I cry seriously?》(本当に泣いても良いですか?)

「泣けるもんなら泣いてみやがれ、石ころ」



「ひとまず、一体どうやってアリシアに転生したのか。その事は聞かせてもらえるのか?」

 アリシアとユーノ、レイジングハートの話に水を差すようで心苦しかったが、クロノは執務官としての業務を優先し、事情聴取を再開させた。

《Isn't it possible to read air, too, in addition to being hasty,Low enforcement officer? The bill which made the scene of the reunion of the family spoiling is high and is stuck? Specifically, it is about 1 day minute of my luxurious full maintenance tour.》(せっかちな上に空気も読めないのですか? 執務官。家族の再会のシーンを台無しにしたツケは高く付きますよ? 具体的には私の豪華フルメンテツアーの一日分ほど)

 レイジングハートほどの高性能でありながら旧式のインテリジェントデバイスはそのメンテナンスには莫大な技術が必要となる。それを一日かけてフルメンテナンスをしようものには、どれだけの人材と資金がかかることか。
 クロノは、自分のデバイスであるS2Uの保守点検をする傍ら、レイジングハートの簡易的なメンテナンスも行ったことがあり、そのあまりにも洗練された制御システムとそれを覆う筐体の優美さにひどく感銘を受けていた。
 それと同時にレイジングハートの一筋縄ではいかない整備をよく知っており、彼女(?)の言う豪華フルメンテツアー一日招待券がどれほどの値段になるかを想像し、頭部と腹部に鈍痛を感じた。

 さらに、その整備中のことあるごとに、

《Officer,The service of you is too disorderly.》(執務官、あなたの整備は乱雑すぎる)

 とか、

《The service of the device needs the fineness as it handles the body of the woman. but however, will be wasteful even if it says to you who don't have a woman experience》(デバイスの整備は女性の身体を扱うような繊細さが必要なのです。もっとも、女性経験のないあなたに言っても無駄でしょうが)

 等、聞けば心的外傷(トラウマ)になるほどの言葉を浴びせられた記憶が脳裏をよぎり、さらに落ち込む始末だった。

 次第に頭の下がっていくクロノを無視して、アリシアはその質問に答えた。

「執務官の質問には、ジュエルシードの影響だとしか答えようがないね。正直なところ、私も詳しいことは分からないんだ。気がついたらこの身体になってたって具合だからな」

 そして、アリシアは返事を待たず、自分自身の推論を述べることとした。
 だが、それは推論であって全く証明の出来ないことだった。
 彼女の言うようでは、おそらく輸送船を襲ったプレシアの魔力に込められた娘の復活の願いと、ユーノがとっさに思い描いたベルディナの無事を願う感情を、発動したジュエルシードが正しく叶えたというのが妥当な線だろうということらしかった。
 身体をなくし、魂のみとなるベルディナと魂を失い入れ物のみとであったアリシア。そして、その両方を満たす結果が、今ある状態なのではないかというものだ。

「ただし、ジュエルシードがどのような方法を使って私の身体にベルディナの魂を封じ込めたのかは分からないな。そもそも、魂にしてもリンカーコアにしても不明な部分が多すぎるわけだからね」

 リンディはその推測に耳を傾け、

「確かに、ロストロギアならそれも可能かも知れないわね。というよりは、ロストロギアぐらいでないと不可能か」

 と呟いた。

「無限に転生を繰り返し、永遠に宿主に寄生し続けるロストロギアもあることですから、アリシアの言うことは全くの見当違いだとも言えないと思います」

 ようやく調子を取り戻したクロノもアリシアの説を指示した。

「……そうね……あの魔導書の例もあることだし、そう納得するしかないかもしれないわね」

 リンディの脳裏に十数年前の悲しい事件が一瞬浮かび上がるが、リンディは自身の業務を優先し、その感傷を振り払った。

「良いでしょう、アリシアさん。これで事情聴取は終わりにします。ごめんなさいね、疲れたでしょう。今日はもう休んでいなさい」

「いや、曖昧な話ばかりで悪かったね」

 リンディの言葉にアリシアは僅かに肩をすくめ、曖昧な笑みを返した。

「では、君の処遇についてはこれから検討する。決まり次第連絡するのでもう少し待っていて欲しい」

 立ち上がったリンディに従い、クロノは最後にそう言い残すと、ユーノをつれて医務室を出ようとした。

「えっと、クロノ。もう少しだけここにいても良いかな?」

 そんなクロノに反してユーノは、リンディとアリシアの表情を伺うようにチラチラと目配せをした。
 なるほどと、クロノは先ほどのレイジングハートの言葉を思い返した。家族の再会のシーンを邪魔されたのは何もレイジングハートだけではなく、彼もその例外ではなかったということだ。

「あまり遅くなるなよ?」

 クロノは、ユーノからベルディナが彼の父親の代わりのような人物だと聞いていた。これは、越権行為にも近いことだったが、家族というものに特別な感情を持つハラオウン親子はそれを快諾し、そのまま医務室を出た。

「ありがとう、クロノ、リンディさん」

 閉まる扉の向こう側から漏れた声に、クロノとリンディは少しだけ安心を覚え二人はそのまま通常業務へと戻った。

(死んだはずのアリシアと死んでしまったベルディナ。その両方を背負う、今の彼女。アリシア・アーク・テスタロッサか……本当に、歪な名前だ)

 事後処理の作業をしていたエイミィから救援の連絡を受け、クロノはふとそう思いながらアースラの廊下を静かに歩いていった。