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【リリなの】Nameless Ghost

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 話が一段落し、三人とも自分の飲み物に舌鼓を打っていた頃、通路の向こう側からクロノがフェイトとアルフ、ユーノを引き連れてやってきていた。

「艦長。フェイト・テスタロッサの拘束解除申請が受理されました。こちらが書類になります」

 クロノはリンディのそばにやってきて敬礼をし、彼女に手に持っていた情報端末を渡した。
 リンディは「ご苦労様」と一言告げてそれを確認し、そしてにっこりと笑ってフェイトの方に顔を向けた。

「はい、確認しました。おめでとう、フェイトさん、アルフさん。これであなた達は監視付きではあるけれど晴れて自由の身よ」

 リンディは手に持つ端末に電子署名を施し、それをフェイトに手渡した。
 フェイトはその書面を胸に抱き、わき上がる喜びに頬を染めた。

「はい、ありがとうございました。リンディ提督、それに皆さん。本当に……ありがとうございました……」

 そういってアルフ共々そこにいるアースラメンバーに対して深く頭を垂れるフェイトの肩は細かく震えていた。

「おめでとう、フェイト」

 漸く今まで彼女が味わってきた苦労が実を結んだことにユーノも感動を隠しきれず、フェイト程ではないがついもらい泣きをしてしまいそうになった。そして、何よりも地球に残してきたなのはとフェイトを漸く引き合わせることが出来ると言うことにユーノは一番の喜びを感じる。

「ユーノもありがとうね。ユーノがちゃんと証言してくれなかったら、私……」

「いや、僕は原稿通りに証言しただけなんだけどね。そもそも原稿はクロノとアリシアが作ったものだし。僕は何もしてないよ」

 ユーノはフェイトの感謝の言葉に赤面し、照れ隠しに鼻頭をかいた。

「ううん、ユーノがなのはと出会ってくれなかったら。私はたぶん、人形のままで終わってたから。私はユーノにはなのはと同じぐらい感謝してるんだ」

 なのはと同じぐらいと言われればユーノはどれぐらいフェイトが自分に感謝してくれているのかがよく分かった。しかし、ユーノにとってなのはとの出会いというのはナーバスな側面がある。
 アリシアは僅かに陰るユーノの表情を見て、喜びの涙に鼻をすすらせるフェイトに歩み寄り、その胸を優しく抱きかかえた。

「良かったねフェイト。これで、高町なのはと会えるよ」

「うん、お姉ちゃんもありがとう。……だけど、お昼のあれはもう勘弁してね」

「善処する」

 そんな姉妹の交流についつい涙を漏らすアルフが照れ隠しに咳払いをしたところである一種の儀式は終了した。

「それじゃあ、私は地球への渡航許可を貰ってきますね」

 エイミィは一足早く立ち上がると、かねてからの約束通りフェイトとアリシアの地球への渡航許可の申請を行うためトランスポーターの管理室へと向かおうとした。

「ああ、よろしく頼むぞエイミィ」

 まだ感動の余韻が冷め切らないフェイトの肩を叩きながらクロノはエイミィを見送った。エイミィはそんなクロノの様子をまるでフェイトの兄のようだと思いながらトランスポーターの管理室へと急いだ。

「やっと、やっとなのはに会えるんだね」

 今まで映像の向こう側でしか交流することが出来なかった初めての親友を思いフェイトはそう一言呟いた。

「うん、そうだねフェイト。なのは達がね、フェイトとの再開と出会いを祝してパーティーをしようって計画してるんだ。アリサとすずかも居るから、きっと賑やかになるだろうね」

 その計画はユーノも発案者の一人であり、この数ヶ月間地球で出来た友人達とその計画を練るのはとても楽しいことだったと呟いた。

「パーティーか、楽しみだな……。だけど、どうしようお姉ちゃん。私、パーティーに着ていけるような服持ってない。それに、プレゼントも用意してないよ」

 パーティーと聞いてフェイトは少しあわてた様子でアリシアに相談を持ちかけた。確かに、フェイトの衣食住に関してはアリシア同様、リンディが面倒を見ている状態だ。彼女が用意した衣服の中には確かにパーティーに着ていくフォーマルなドレスや煌びやかな衣装はなかったはずだとアリシアは記憶している。
 それに、フェイトがリンディから貰っている小遣いの額では親友やこれから友人になる少女達へのプレゼントをそろえるほどの余裕はない。

「まあ、プライベートなパーティーだったら今着てるので十分じゃないかな? プレゼントは……そうだね、私が何とかしてもいいけど、どうする?」

 アリシアには翻訳の仕事で得た蓄えがある。しかし、彼女は未成年の上に就職適例年齢さえもクリアしていない状態なので、その仕事は常にリンディ名義となっている上にその報酬もまたリンディが一括して管理している状態だ。
 必要な時は言ってくれれば渡すと言われている蓄えだが、この半年ほどで得られた金額はいったいどれぐらいになっているのか、実際の所アリシアはこれを暇つぶしのためにしていたため金銭的なところには余り興味がなかったのだ。

「だけど、お姉ちゃんに払って貰うわけには……」

 フェイトの遠慮深い性質が出てしまったようだ。アリシアは少し嘆息し、つま先を立てて背伸びをし、フェイトの頬を両手で包み込んだ。

「フェイト、たまには私にも姉らしいことをさせて貰いたいんだけどね。それともこんなに小さな姉の世話になるのは嫌だってことかな?」

「そ、そんなことはないけど」

 アリシアに頬を抑えられるままにフェイトは少しうつむいてしまった。
 アリシアは仕方がないなと、側で肩をすくめるアルフに向かって視線でフェイトを説得するように促した。
 アルフはその視線に込められた言葉を正確に理解し、フェイトの肩を叩いてにっこりと笑った。

「良いじゃないか、フェイト。せっかくアリシアがお姉ちゃんらしいことがしたいっていってんだからさ。それでフェイトが友達とうまくやれるってんだったらアリシアだって嬉しいだろうよ。それに、フェイトもこれからは嘱託なんだろう? それだったらいつかその給料でアリシアに恩返しすればいいんじゃないかい?」

 さすがはアルフだとアリシアは思い、フェイトの頬からそっと両腕を離した。

「うん、そうだねアルフ。あの、ごめんなさいお姉ちゃん。今回はお世話になります」

 嘱託の初任給は絶対アリシアへのお礼に使おうとフェイトは心に決め、そっと頭を下げた。

「ああ、任してよフェイト。一緒に最高のプレゼントを選ぼう。ユーノも手伝ってくれるよね?」

「うん、喜んで」

 四人はそういって微笑み合った。
 その様子を一歩引いたところで見つめるハラオウン親子は、「やっぱり家族とか友達って良いものよね」と幼い彼らの幸いを心から祈り祝福した。

「大変! 大変だよ、クロノ君、リンディ艦長!!」

 そして、エイミィのその声がすべてを決定づけた。

「騒々しいぞエイミィ。管理局の廊下は走るな」

 クロノは大声を出して息を荒くするエイミィをとがめるが、彼女はそれさえも聞き入れることが出来ずさらに声を張り上げた。

「なのはちゃんとの交信がとれないの。今、海鳴に広域封鎖結界が張られててたぶんなのはちゃんがそこに……」

 夜の緞帳はそうして幕を上げた。