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【リリなの】Nameless Ghost

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 リンディに先行していち早くオペレーティングを開始していたエイミィが矢継ぎ早にそう報告する。

「結界解除は?」

「現在術式の構成を走査中です。しかし、こちらの使用している術式構成とかなりの違いが認められ、解析にはかなりの時間が必要となります」

 エイミィとは違うオペレーターがそう答え、モニターの中心には解析を示すプログラミングの実行画面と、現在海鳴において観測されている封鎖結界の様子が映し出される。

「アリシアさん達は?」

 エイミィの報告を受けていち早く行動を開始したアリシアはただ一言、「戦域に介入する」とだけ伝え駆けだしていった。それを追う形でフェイトとユーノもそれに追従した。

「現在トランスポーターで職員ともめているようです」

 本局の転送室の前で職員に突っかかり今にも噛みつかんばかりの勢いで口論を交わすアリシアの姿もモニターの端に示されている。

「提督権限でトランスポーターの使用要請を」

「了解!」

 リンディはそれだけ告げると一旦艦長席に腰を下ろし、一つ呼吸をつき早まる心音を押さえつけた。

(ともかく、封鎖結界の解除を最優先。容疑者の捕縛は状況を確認してからね)

 ふう、とリンディは吐息と共に肩をなで下ろし、スッと瞳を開き刻一刻と進む状況を眺めた。

(とにかく今は現地の民間人の安全を第一に。無事でいて、なのはさん)

***

「くぅぅ……」

 突然襲いかかってきた少女は、話を聞く余地も残さずただひたすらになのはの戦力を奪おうとするだけだった。

「お前、堅ぇな」

 なのはの防御をプロテクションごと吹き飛ばした少女は、空中で必死に体勢を立て直すなのはに向かってそう呟いた。
 ブン! と威嚇するように手に持つ大槌【グラーフ・アイゼン】を振るう少女になのはは戦慄と共に恐怖を感じた。

「なんで、こんなことするの?」

 プロテクション越しに衝撃を受けた腕をかばうように右手で押さえる左腕からは僅かに先決が漏れ出してくる。なのははその痛みに歯を食いしばり、必死になってレイジングハートを構える。
 シューティング・モードにシフトされた彼女のデバイスは音叉状に展開された先端フレームを輝かせ、桃色の追尾弾を4発同時に発射した。

「バカの一つ覚え!」

 先ほどから執拗に自分を追いかけるその射撃魔法【Divine Shooter】に彼女は指の間に数個の鉄球を生み出し、大槌の一降りと共にそれを高速で打ち出した。

《The high-speed pursuit bullet approaching, the decoy discharging》(高速追尾弾接近、デコイ発射)

 レイジングハートは襲いかかる鉄球に対し、主の魔力反応に酷似した光弾を生成し、なのはが移動魔法【Flash move】を使用し上空高く舞い上がる行動に応じて、そのデコイを後方へと加速させた。

「このヤロ、ちょこまかと」

 半分の鉄球がデコイに誘導されて明後日の方向へと飛んで行ってしまったことに少女は歯ぎしりをして、もくろみ通り上空へと退避したなのはをねらい、大槌を振りかぶり一直線に襲撃をかけた。

【Protection】

 攪乱できなかった鉄球の追尾から逃れることに一瞬意識を向けすぎていたなのはは、その少女の襲撃に反応が遅れてしまった。

「くっ!」

 レイジングハートが展開した自動防御機構を真っ正面から打ち付けるヴィータの攻撃になのはは声を漏らし、レイジングハートの忠告通り、彼女はまともにそれと張り合わず、むしろその力を離脱に利用するようにその力の流れに身をゆだねた。

(やっぱり堅い。それにこいつ冷静だ)

 歴戦の記憶を持つヴィータであっても、なのはの戦い方には何処か年相応というものが感じられず、先ほどの誘導弾をごまかしたデコイといい、自分がもっとも得意としている結界抜き攻撃【テートリヒ・シュラーク】でさえ下手に押し切るらずいいようにあしらわれている。
 それにしては、とヴィータは後退しつつ錫杖の先をこちらに向ける少女に目を向けた。

(行動選択はすごく冷静で的確。だが、どうしてこいつはこんなにも余裕がない?)

 こちらに輝く先端を向ける少女の瞳は負けたくないという気概と、勝てないかも知れないという恐れに満ちあふれている様子だった。
 それに、ヴィータが先ほどから切り札を使わず、決定打にかける攻撃をしているのにも理由がある。
 この手合いの先ほどまでの戦い方は、何処か単独で戦うような仕様になっていないと感じられたのだ。
 ならば、どこかに伏兵が居るのか仲間がこちらに向かってきているのか。
 出来ることなら、それらが到着する前に何とか決着を付けたかったが、出来る限りそれらに備えて温存しておく必要もあった。

(だけど、少し時間がかかりすぎたね)

 少女、なのはの杖の先端から放出された大規模砲撃魔法【Divine Buster】の威力に舌を巻きながら、その奔流の影に隠されていた誘導弾【Divine Shooter】を上手いと思いながら回避を続け、ヴィータはやはり少し本気を出さないと下せる敵ではないと判断した。

「あんまり使いたくないけど、グラーフ・アイゼン、カートリッジロード。ラケーテン・フォームに形状変化」

 ハンマーで殴り返した【Divine Shooter】の光弾が近くのビルに着弾し撒き散らされる土煙に身を隠し、ヴィータは自身のデバイスにそう命令を下した。

《Ja》(了解)

 グラーフ・アイゼンはそう一言だけ報告し、ハンマーのヘッドとグリップとをつなぐジョイントをスライドさせチェンバーを開放した。
 そこにはジョイントを覆うように円状に搭載された弾丸のようなものが並んでおり、スライドさせたジョイントが元の姿に格納されると同時になにがしかの激発音が響いた。

「……!! な、なんなの?」

 土煙の向こう側へレイジングハートを構え、煙が張れるのを待っていたなのははその中心で急激な魔力の増大を感じ、一体何があったのかと息を飲んだ。
 その魔力増大と共に姿を示したヴィータはその手に持つデバイスを大きく振りかぶり、そして叫んだ。

「アイゼン、ラケーテン・ハンマー」

《Ja!!》

 レイジングハートは一瞬、その形状を目にして冗談だろうと思ってしまった。ハンマーのヘッド部分にあしらわれた追加武装。相手を打ち付ける本来なら平坦であるはずのインパクト部分の片方には先端のとがった角錐が設えられ、その反対側にはそれこそ冗談としか思えないような装備、あえて言えばロケット・ブースタというべき魔導推進器が装備されていた。

「フォース・ワークス。貫け! アイゼン」

 レイジングハートは拙いと判断した。

《Master. As for receiving that in the avoidance, there are not sun and a collection, too》(マスター! 回避を、あれを受けてはひとたまりもありません)