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【リリなの】Nameless Ghost

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 しかし、ヴィータの追加武装による魔導推進器の出力はそれまで何処か愚鈍に思えた彼女の移動力を爆発的に向上させ、その速度に反応できなかったなのはの防御を打ち付けた。

「しまった!!」

 なのははその攻撃を反射的に受けてしまい、後悔するしかなかった。それまではたとえ防御の上から殴りつけられてもレイジングハートの判断に従いその力を後退の速度に利用することで何とか直撃を避けてきていた。しかし、今彼女が持っているのはそれまでのハンマー攻撃とは速度も突破能力も違うものだ。
 なのはは遅れた判断と共に、致命的な選択ミスをしてしまった。

「まともに受けられるとでも……!!」

 |ロケット《ラケーテン》|ハンマー《ハマー》のグリップから感じる確かな抵抗感と手応えにヴィータはニヤッと笑い、さらにブースターの出力を向上させブースターの排気口から莫大な量の魔力推進剤を撒き散らした。

「いやっ!!」

 大量のヒビが広がる防御障壁の表面になのはは恐怖を感じる。

「……思ったか!」

 なのはは反射的に突破してくるハンマーの衝角から身を守るべく、レイジングハートを盾のように構える。
 しかし、プロテクションを容易に突破したその推進力に魔力で強化を行っていないただの錫杖では明らかに力不足だった。

「レイジングハート!!」

 先端と取手をつなぐ結合部に亀裂の入る愛杖になのはは悲鳴を上げる。

《Urgent leaving I do. Clench a tooth》(緊急離脱を敢行します。歯を食いしばってください)

 レイジングハートはそう一言だけ警告すると、自身のフレームから漏れ出す魔力を起爆させ、小爆発を起こさせる。
 なのははその瞬間的に過大な反発力になすすべもなく翻弄され、あっけなく吹き飛ぶとその背後にそびえるビルの壁面にまともに背中を打ち付け、窓ガラスを崩壊させながらビルに突き刺さる。

「けほ……、こほ……。あうぅ……痛いよぉ……」

 左の鎖骨にヒビが入ってしまったかもしれない。
 レイジングハートは所々にノイズの混じる制御システムを稼働させ、主の状態を確認し現状の打開策の検討にリソースを振り分けた。
 なのはは、衝突と共に飛来した瓦礫の破片に所々肌を傷つけ、数カ所からにじみ出る鮮血に気が遠のきかける。

「あたしをここまで手こずらせるとは、なかなか大したもんだったな」

 ザッという重苦しい足音が響き、もうもうと湧き出る灰色じみた砂埃の中からなのはの敵、ヴィータが姿を現した。
 なのはは痛む脇腹を右手で押さえながら、利き手である左に破損の激しいレイジングハートを持ちそれに相対するが、ヴィータは一切の慈悲もなく角張った先端のラケーテンを振りかぶり再度なのはにそれを打ち付ける。
 後退する場所はない。しかし、機能不全を起こしかけているレイジングハートではその攻撃を受けきるだけの強度のある障壁を展開することは出来ない。
 せめて、主人の魔法構成速度がもう少し速ければこのタイミングでもさらに強固な結界【ラウンド・シールド】を展開することも可能なのにとエラーの続く思考の中レイジングハートはそんな望みを持った。

 なのはが展開したプロテクションは、全くの防御効果さえも示さずあっさりとラケーテンの前に崩れ去り、先端が着弾したバリアジャケットは最終防衛【リアクター・パージ】を敢行した。
 なのはが身に纏う白いバリアジャケットの上着は桃色の残滓を残し魔力へと帰り、その反作用を利用してヴィータのラケーテンを僅かに押し戻す。

(悪あがきだ)

 威力をそがれ、手応えを消された事にヴィータは僅かに舌打ちをするが、それでも再度壁に激突した相手を見て、ひとまず敵の戦闘力を無効化したことを良しとしてハンマーのヘッドを元の平坦な形状に戻しそれを床に向けた。

「あんたには恨みはない、命を貰うつもりもないし、目的さえ果たせればもうあんたの前には現れない。だから餌になってくれ」

 一歩ヴィータがなのはに近づく。なのはは退路のない壁際に力なく崩れ去り、それでも最後の力と気力を振り絞り、破損し先端の赤い宝石にもヒビが入り今にも折れてしまいそうなレイジングハートをヴィータへと向ける。

「勇敢だな。こんな風じゃなかったら、戦友にでもなれていたかも知れないけど、残念だよ」

 相手に武装解除のつもりがないのなら仕方がないと、ヴィータは再びグラーフ・アイゼンを振りかぶり、「フォース・ワークス」と呟きながらなのはが手に持つデバイスを完全に破壊すべくそれを一閃させた。

(こんなところで終わっちゃうの? 嫌だ、嫌だよ……、誰か、誰か助けて! ユーノ君、クロノ君、フェイトちゃん、アリシアちゃん……。ユーノ君、ユーノ君!!)

 閉鎖された室内を切り裂くヴィータの一閃。そして、満ちあふれる翠の魔光。最後を予感してなのははギュッと目を閉じたなのはの視界に最後に映っていたのはそんな光景だった。