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【リリなの】Nameless Ghost

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「本日は喫茶翠屋をご利用いただきありがとうございました。私はこの店の店長をさせていただいています高町士郎と申します。本日はなのはの親友のフェイトちゃんとアリシアちゃんの歓迎会ということで、フェイトちゃんとアリシアちゃんにはこれをきっかけに少しでもこちらの生活に慣れていただければと思っております」

 といって士郎は、フェイトとアリシアの方に目を向け笑いかけた。
 アリシアはその士郎に軽くお辞儀を返し、フェイトは恥ずかしそうに頬を赤らめて俯いてしまった。

「では、食事と飲物の準備も整ったようです。あまり長々と喋っていると嫌われてしまいそうですのでこれくらいにしておきましょうか。では、皆さんお飲み物をお取りください」

 士郎の言葉に同調し、皆新たに配られた飲物を手に取り軽く頭上に掲げた。

「それでは、フェイトちゃんとアリシアちゃんをはじめとした異国の方々への歓迎と皆さんの今後さらなるご活躍を祝して」

『乾杯!!』

 互いにグラスが重ね合わされる音が店内に響いた。

「な、なんだか照れくさかったね。お姉ちゃん」

 未だ頬を赤らめて赤いオレンジジュースを飲むフェイトが隣でウーロン茶を口にするアリシアにそっと話しかけた。

「そうだね。だけどいい人だったよ士郎さんは。落ち着いたら二人でお礼に行こう」

「うん、そうだね」

 フェイトはニッコリと笑い、運ばれてきたイタリアのランチをモチーフにした料理に舌鼓を打った。

「はやぁ、忙しかった」

 すると、さっきまで店の奥に引っ込んでいたなのはが若干くたびれた顔をしながらアリシア達の席に顔を出した。

「お疲れ、なのは」

 ちょうどアリシアの正面の席に腰を下ろす、これまた金髪で長髪の少女アリサ・バニングスがなのはをねぎらうように手を振って迎えた。

「ありがとう、アリサちゃん」

 なのははそう言って翠屋のロゴが入った黒いエプロンを脱ぎ、フェイトの隣りに座った。

「お手伝いできなくてごめんね、なのはちゃん」

 なのはのもう一人の友人である月村すずかもなのはに料理を渡しながら労いの言葉をかける。

「いいよぉ、今日はみんなはお客様なんだから」

 すずかにお礼を言いつつ朗らかに笑うなのはは本当に楽しそうにフェイトとアリシアに顔を向け今度は満面の笑みを浮かべて口を開いた。

「改めてフェイトちゃん、アリシアちゃん、ようこそ日本へ。これからは一緒に居られるね」

「う、うん。そうだねなのは。とても、嬉しい」

 はにかみやなのはこの少女を前にしても同じか、とアリシアは思いながらこのメンバーがそろっていながら姿が見えない少年を捜した。
 今は地球に住んでいる少年、ユーノはアリシア達が座る席からは少しだけ離れた席でハラオウン家の面々と共に高町家の面々と談笑をしているようだった。
 なるほど、ユーノと地球の人々の関係は良好のようだとユーノに地球での生活の場を与えたアリシアとしては改めて安心を覚えた。
 しかし意外だとアリシアは思った。あまり交友関係を広げようとしないユーノだが、一度できた友人とは極力一緒にいたいと思うのが彼だ。しかし、この場では彼は友人関係よりも大人同士の社交の方に顔を出している。
 またぞろ、変な遠慮が出ているのか。せいぜい、なのはとフェイトの再会に水を差したくないとか、女の子同士の会話に口を挟みたくないとか。まあ、そんなところかとアリシアは当たりを付けた。

「まったくユーノめぇ。また変な遠慮して!」

 どうやら、正面のアリサも同じのようだ。彼女はフェイトとなのはの会話につっこみを入れつつ、時々言葉に詰まってしまうフェイトをフォローしつつも大人達に混じって雑談するユーノに少々ご立腹のようだ。

「へぇ……」

 アリシアは泡の出る白葡萄ジュースを傾けながらアリサの様子を意外そうに眺めた。

「なによ?」

 アリシアが漏らした声を不躾だと思ったのか、アリサはアリシアに鋭い視線を向けてくる。

「ああ、ごめんなさい。てっきりユーノはこっちでもあまり友人が出来ていないのじゃないかと思って。だけど、その心配はなかったって事かな」

 その心配の仕方はまるで、子供の心配をする親のようだとアリサは一瞬思うが何となく自分の胸中が見透かされたような感じがして不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「おっと、不機嫌にさせてしまったね。お詫びにユーノを呼んでこよう。なのはとフェイト、それに……スズカだったかな? それでもいいかな?」

 アリシアの提案にアリサ以外は快く肯いた。

「アリサちゃん?」

 腕を組み不服そうな顔で椅子にのけぞるアリサをすずかが宥める。どうやら、ユーノに関するとアリサはどうも不器用になってしまうようだった。
 確かにこの年頃になると多少なりとも自分と異性との違いが分かり始めるものだ。それに、どうもこの少女は他の少女達に比べると幾分か早熟している様子で、今まで女だけでやってきたグループにいきなり男という異物が入り込んだことに対する拒否感を持っているのだろう。
 もっとも、アリサに関してはそれだけが理由でもなさそうだがと若干頬を染めるアリサを見てアリシアはそう思うが、それ以上の追求はやめた。茂みに石を投げて虎を出す気はない。

 アリシアは「まあ、仲良くしてやってくれ」と言い残し、席を立ってユーノの座るハラオウンと高町のファミリーが集まる席へと足を運んだ。

「ユーノ。ちょっといい?」

 アリシアは、歓迎会が始まる前の席でなのはの兄だと名乗った恭也という青年と談笑するユーノの肩を叩いて呼んだ。

「ん? どうしたのアリシア?」

 いきなり話を中断させられて、ユーノはきょとんとアリシアに問い返す。

「ご指名が入りました。あちらのテーブルのお嬢様型のお相手をお願いいたします」

 と、演技の入った恭しさで指さすテーブルにはなのはやフェイトが少し苦笑しながらユーノに手を振る光景を見ることが出来た。
 ユーノは「あっ!」と声を漏らし。

「ごめん、恭也さんと話す機会なんて珍しかったからつい。すぐに行くね!」

 そう言ってユーノは、恭也に一言詫び、急いでなのは達のテーブルに走っていった。
 別に遠慮をしていたわけではなかったのか。とアリシアは呆れるが、ユーノの到着にだらしなく頬をゆるめるなのはに、幸せそうななのはを見て幸せそうにするフェイト、憮然としながらも何かとユーノをかまうアリサに、アリサの行き過ぎを制御するすずかを見て安心することが出来た。
 しかし、そうなってしまうと今度はどうも自分があの輪に入りにくくなってしまった。

「アリシアちゃんだったね。楽しんでる?」

 ユーノという話し相手を妹に取られてしまった恭也はユーノの代わりに残ることとなったアリシアに声をかけた。

「ええ、楽しんでいますよ恭矢さん。ここはいいですね。みんな暖かい。なんだか生まれ故郷に戻ってきたような感覚にとらわれます」

 アリシアは帰還をあっさりと諦め、今までユーノが座っていた席に着いた。

「あら、嬉しい。これからもよろしくね。うんとサービスするから」