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【リリなの】Nameless Ghost

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 説明になっていない答えだと言うことはフェイトも重々承知していることだった。実際、その答えにアリサもすずかも若干怪訝な顔を浮かべているが、フェイトの言いよどむ様子から余り他人が触れることではないと察しそれ以上の追求は差し控えることとした。

「それにしても。ねえ、なのはちゃん。ユーノ君はどうしたの?」
「そうよ、ユーノよ! 何であいつ学校に来てないのよ!?」

 すずかの問いにアリサは叫び声のようなものを上げて答えた。ユーノは既に日本に戻ってきていることは、先日のテスタロッサ姉妹の歓迎会で明らかなことだ。そもそもユーノがしばらく日本を留守にしていたのは、故郷にいる身内のことでやむを得ない事情があるとのことだった。
 その身内とは、今この場にあるフェイトのことに違いなく、アリサとすずかはフェイト達はユーノの遠い親戚なのだという説明を受けている。
 そのフェイトが、今ここにいるということはユーノの本国での用事は終わったと言うことではないか。
 そうであるはずなのに、蓋を開けてみればユーノは学校に顔を出さず、あの歓迎会の以降顔を見せていない。
 ほぼ一月ぶりの再会になり、アリサはユーノに対して不器用でしかいられなかったが、それでも心の根では彼の帰還をとても嬉しく思っていたのだ。

「あう、ユーノ君はまた国に用事が出来ちゃって。フェイトちゃんのお姉ちゃんと一緒にちょっとだけ帰省してるの」

 嘘は吐いてない、嘘は吐いていないとなのはは少し乾いた声で笑いながら冷や汗を浮かべつつアリサとすずかの表情を伺う。

「なのは、あんた。また隠し事してるんじゃないでしょうね?」

 なのはは隠し事が苦手だ。とても苦手であると言わざるを得ない。そんな彼女の虚偽が人の上に立つことを常日頃から学び続ける名家の令嬢達に通じるはずはない。

「あの、アリサ。ユーノは一週間ぐらいしたら戻ってくるから。心配しなくてもいいよ?」

 フェイトのその言葉にアリサは少しドキッとした。

「べ、別に心配なんかしてないわよ。ただ、なんだか、あれよあれなのよ」

 あれとかこれとか使い始めるのは知性の後退だぞ、とアリシアがこの場にいればそう言っていただろう。それぐらい、傍目からはわかりやすくアリサは狼狽していた。

「アリサちゃんは、ユーノ君がいないのが何となく物足りないんだよね」

 いいコンビだもんねぇとすずかは普段の二人の様子を思い浮かべながら、天然なのかわざとなのか分からない仕草でクスクスと笑った。

「あはは、アリサちゃんはユーノ君のこと大好きだもんね」

 なのははすずかの尻馬に乗りながら朗らかに笑う。しかし、なのはの飾らないその仕草に逆にアリサは頭を抱え、すずかは少し困ったような笑みを浮かべた。

「えっと、なに?」

 状況がつかめないフェイトはそう言うしかないが、状況は既にフェイトを相手にしていなかった。

「なのは、あんたねぇ。あんたがそんなんだとそのうちユーノが他の人のものになるわよ? それでも良いの?」

「えっと、ユーノ君は誰のものでもないと思うのですが……」

「だから! そうじゃなくて!! ああもう、このニブチンカップル!!」

 端から見ればどう見てもデキてるとしか思えない二人のこの朴念仁っぷりにアリサは激高するが、なのはとユーノの両者は未だ思春期も二次性徴期も迎えていない子供らしい関係であるとも言えるのだから、別段なのはがせめられる必要は無いのだ。
 それでも、家の教育の賜物なのか、同年代の少女としては多少早熟気味のアリサとしてはそんな二人の関係がもどかしくて仕方がないらしい。

「あの、アリサはどうして?」

 なのはとユーノのことになるとあそこまで熱くなってしまうのか分からないフェイトは自分と同じく話題の隅に追いやられたすずかにそっと耳打ちした。

「フフ、アリサちゃんはなのはちゃんとユーノ君が大好きだからね」

 答えになっていないような答えを貰い、フェイトはさらに困惑を強くする。

「ところで、フェイトちゃん。フェイトちゃんの連絡先を教えて欲しいんだけど」

 そんなフェイトの困惑をはぐらかすようにすずかは話題を変更した。

「えっと、家の電話番号でいい?」

 この国では主要な連絡手段が電気転送式の会話装置であることは知っていたフェイトは、ハラオウン邸の家電話の番号を思い出そうとする。

「あれ? フェイトってケイタイ持ってないの?」

 寸前までなのはに詰め寄り、組み敷いて馬乗りになって両頬を引っ張っていたアリサはフェイトの言葉にあっさりとなのはを解放し二人の話題に入ってきた。

「けいたい? 何を携帯するの?」

「あはは、携帯電話だよフェイトちゃん。ほら、こういうの」

 ヒリヒリと痛む頬を撫でながらなのははスカートのポケットから愛用の携帯電話を取り出し、画面を開いてフェイトにみせた。
 その画面には、半年前アースラで取った画像が示されておりフェイトは少し嬉しくなった。
 なのは、フェイトを中心としてユーノ、アリシア、アルフ、クロノにリンディにエイミィ。みんな画面の向こうで微笑みかけ、そこに写っている自分もはにかみながら笑っている様子にフェイトは少し恥ずかしくなった。

「ひょっとして持ってないの?」

 きょうびの小学生なら誰でも持ってるわよと言うアリサに、フェイトは少し困った様子を浮かべた。
 ミッドチルダにもこの手の携帯端末は存在するが、遠隔地との連絡に特化したものではない。魔法技術が主流となっているミッドではわざわざ端末を使わずとも念話という設備を必要としない技術が存在するのだ。

 しかし、これからしばらく地球で過ごすからにはこういった現地の端末も持っておくべきではないかとフェイトは考える。

「えっと、前に住んでた所はそう言うの必要なかったから」

 何となくみんなが持っていると聞かされると持っていない自分が恥ずかしくなってしまう。バルディッシュで代用することも出来るだろうが、管理外世界でむやみに魔法技術を使用するわけにもいかないのだ。

「ふうーん。イタリアって結構発展してると思ったけど、そうでもないのね」

 血筋的にもグローバルを地でいくアリサは久しく訪れていない遠い欧米の半島に思いを馳せた。

「あ、えっと。私が住んでたところが田舎だったからだと思う。この国がすごい都会で、初めて来たときはビックリしたよ」

 実際の所、海鳴市はミッドチルダの地方都市程度の規模でしかない街なのだが、確かにフェイトの記憶にある故郷は緑豊かな人の少ない辺境だった。それに比べれば、目もくらむような人の多さに違いない。
 嘘は言っていないよね? と焦るフェイトに、なのははフォローを敢行する。

「特にフェイトちゃんはあまりお外に出なかったらしいから、仕方ないよアリサちゃん」

 あははと自然な笑みを浮かべるなのはにフェイトは念話で『ごめんね』と礼を言った。

「だったら今度携帯電話、一緒に買いに行こうよ」

 名案とばかりに手を叩くすずかになのはも「それ良いね」と同意した。

「でも、リンディさんに聞いてみないと」