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【リリなの】Nameless Ghost

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『それでもだよ、クロノ執務官。ねえ、今からフェイトを前線から外すことは出来ないのかな? 正直なところ、私はこれ以上フェイトを戦わせたくない。過保護だとは思うけど、フェイトには戦闘の無い所にいて欲しいと思ってる』

「それは、僕も同感だ。フェイトだけじゃなく、なのはもね。だけど、現実的に戦力が足りないんだ。今でギリギリ。フェイト、なのは、ユーノ、アルフ。この四人でギリギリ。本局の武装隊を借りられたらまた話しは変わるだろうが、それでも今更戦力を外すことなんて出来ないのが現実だ。僕は僕でここからなかなか離れられないし、母さんも常時ここに待機してられる立場でもない」

『ギリギリということだね。私が戦えればまた話しは別か。全く、つくづくこの身体が憎いよ。後5歳は肉体年齢が高かったらある程度は実践に耐えられるっていうのにね。歯がゆいな』

「それでも、君は先の戦闘でこちらの被害を最小限に抑えた。君のその能力を僕たちも利用できればと思うけど、残念ながら5歳児を戦場に送り込むような決まりは管理局にはない」

『それは分かってるよクロノ執務官。今回私が介入したことが上層部にばれれば何かと面倒なことになるってことぐらいはね』

「自重してくれ。僕の方からはそれしか言えない」

『ひとまず、今はレイジングハートの改造に従事するよ。その後のことはそのときになってまた話し合おう』

「君にやって貰いたいこともいくつかある。じゃあ、また。フェイトも言ったけど、身体をこわさないように注意しろ」

『私の身体を壊す一番の原因が何か言ってるね。本当にそう思ってくれるんだったらビールでも差し入れて。じゃあ、作業に戻るよ』

 アリシアは肩をすくめ苦笑しながら通信回線を切った。

「未成年にビールなんて飲ませられるか」

 仮に差し入れたとすれば、管理上の大問題になる。管理局の執務官が幼い子供にビールを与えたと言うことと、未成年の執務官がビールを購入したという二重の罠が待ちかまえているのだ。

 ちなみに、成人であるリンディとエイミィは二人とも日常的には酒を口にしないため、ハラオウン邸の冷蔵庫にはビールなどの酒類の備蓄は無い。
 アリシアがこの家に住むようになれば、こっそりと備蓄を増やしそうだなとクロノは思いつつ、アリシアとの会話を反芻しながら眉間にしわを寄せた。

 私はこれ以上フェイトを戦わせたくない。クロノはアリシアの言葉を何度も何度も思い浮かべる。

「僕だってそうさアリシア。そうできればどれほど良いことか」

 ただクロノが疑問に思うのは、フェイトが戦うことを是としているのかと言うことだ。彼女は言い意味でも悪い意味でも従順だ。それは、彼女なりの処世術なのだろうが、命の危険にさらすようなことを躊躇しないことは歪だとクロノは思う。

(いや、それは僕が言えたことじゃないな。情け無い、自分のことは棚に上げるようになってしまったか)

 思えばすべてが歪だとクロノは感じた。あるいはこの世界そのものが歪なもので成り立っているのではないかとクロノは考えてしまう。
 詮無いことだとクロノは思考を打ち切った。