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【リリなの】Nameless Ghost

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 風呂上がりには適当で済ませてしまったスキンケアをやり直すため、アリシアはUVカット素材の入ったジェル状の化粧水を手に乗せ顔や腕など露出している部分に塗り始める。化粧水といってもこれは立派な医薬品で、それなりに値段のするものなのだがアリシアはそんなことお構いなしにたっぷりと肌に塗りつけた。

 美容のためではなく生きるための手段としてやらなければならない対策に、当初は嫌々だったものの最近は随分慣れてしまったなとアリシアはぼんやりと思う。

「さっきアリシアが言った3の数字のことで引っかかってね」

「ああ、そのこと」

 化粧水が乾くのを待ちながらアリシアは医者から処方された眼薬を差しながらユーノの言葉に耳を傾ける。

「どうして、ヴィータ達は4人なのかなって思って」

「………確かに、そうだね……古代ベルカ、闇の書の666ページだと、4人は確かにおかしいな。これだけ凝るんだったら本当なら3人か6人というのが妥当か……」

 既に電源が落とされた暖房のせいで次第に冷涼になっていく部屋の空気にアリシアは若干眠気を奪われ、その分ユーノの言葉に集中することが出来た。

「安定を好むなら中途半端は嫌うと思うんだ。ひょっとすれば、そこまで神聖な数字でそろえるのを聖王に対して遠慮したとも考えられるけど。それなら最初からそこまでそろえないはずだと思う。そもそも666なんて数字を出さない」

 アリシアは「難しいな」と呟きながら、寝るときには邪魔になる長い髪を丁寧に一つにまとめ上げ始める。眼鏡を外した視界には鏡に映る自分の姿が若干ぼやけて見える。

(あれのせいでまた視力が落ちたか……嫌だな)

 いつか失明してしまうのではないかとアリシアは僅かに恐怖を感じながら、ユーノの提示した課題に思考を走らせる。

「だから、こう考えられないかな? 後二人いるって」

「二人? 主の他にまだ一人いるって事?」

 ヴォルケンリッター達4人に主を含めると5人という数字が浮かび上がってくる。古代ベルカ的に言えば何となく5は避けたくなる数字だ。悪魔の数字とまでは言わないが、何となく締まりのない感覚がするといったもの。騎士団を名乗る集団がそのような数字を採用するとはとうてい思えないというのがユーノとアリシアの双方は意見を一致させる。

「ヴィータ、シグナム、ザフィーラ、アリシアを収集した――たぶんシャマルって名前だと思う人。それに、闇の書の主。そして、後一人。僕は、6人目がまだどこかにいるんじゃないかって思うんだ。まだ誰の前にも現れていないだけで。そして、それがこの事件のものすごい重要なキーパーソンになるんじゃないかって。そう思えて仕方がないんだ」

 時折なのはとフェイトがもぞもぞと身体を動かす衣擦れの音が静かな部屋の中で妙にはっきりと響き渡る。

「後一人か……ひょっとすれば、それは闇の書そのものかもしれないね。闇の書が意識を持っていて、人の形になれるならだけど」

 アリシアはそう言いながらまとめ上げた髪がほどけないか確認すると、そのままのそのそとした足取りでユーノが腰を下ろすベッドに潜り込んだ。
 隣で眠るなのはとフェイトの体温で暖められたシーツがとても心地よく、冷気で奪われていた眠気が一気にアリシアに襲いかかる。

「僕の考えすぎだとは思うけどね。照明、消すよ?」

 ユーノは立ち上がり、蛍光灯のスイッチを切り、自分も布団をかぶって横になった。
 側で感じるアリシアやなのは、フェイトの吐息や鼓動がどこか心地が良い。確かに、恥ずかしいという感覚はあるが、これはこれでなにやら得難いものを身に受けているのではないかと思えてしまう。
 なのはの幸せそうな寝顔、フェイトの安らかな寝息に当てられ、ユーノも次第に感覚が冗長的になってくる事を感じた。

「お休み、ユーノ。明日は早いから……出来れば起こしてね」

「うん、お休みアリシア。なのは、フェイト……」

 ストンと落ちていくような感覚に二人は抗うことなく身をゆだね、部屋に訪れた暗闇に心地よく身体が溶けていくような感覚に襲われる。どこかそれは自分というものがなくなってしまうのではないかという恐怖を一瞬だけ与えるものだった。しかし、今自分は一人ではなく孤独でもないと思えて、ユーノはむしろこのままみんなと一緒に溶けていけるのなら、それはそれで良いかもしれないと薄れていく感覚の中でそう思い浮かべていた。

 カーテンの向こうから差し込む月明かりが四人を包み込み、部屋には安息の静けさが満ちた。