二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【リリなの】Nameless Ghost

INDEX|87ページ/147ページ|

次のページ前のページ
 

 よく考えれば二人にこだわる必要はなかったのだ。ただ、なのはは何となくアリシアとユーノが一緒に寝るということが気にくわなかっただけで自分がいて二人っきりじゃなかったらそれで良かったのだ。それにフェイトも加わって一夜を共にする。
 最高の提案だとなのはは思った。

「じゃあ、私はフェイトちゃんの部屋で準備してくるから。後でね!」

 と、実にすがすがしい朗らかな笑みを浮かべつつフェイトの自室に走っていくなのはに、クロノ、アリシア以下、ユーノとフェイトさえも呆然とそれを見守ってしまった。

「クロノ……この落とし前、どう付けるつもりだったの? 流石に無茶だ」

 ユーノは恨みがましくクロノを睨むが、クロノはクロノで実にバツが悪そうに目をそらし、

「いや、ああいっておけば流石に黙るだろうと思ったんだが。ついでにフェイトからも反対意見が出れば諦めざるを得ないだろうと思ってだなぁ。僕だって、こんな事になるなんて予想できるか!!」

 半ば逆ギレよろしくクロノはそう喚いてソファーにドスンと腰を下ろした。

「えっと、やっぱり……四人一緒? 流石に恥ずかしいな」

 フェイトは苦笑混じりにアリシアの顔見るが、アリシアもまたフェイトと同じような苦笑を浮かべつつ諦め混じりのため息を吐き、

「まあ、こんな事が出来るのも今のうちと思っておけば良いんじゃないかな? とにかく、フェイトも用意してきなさい」

 そう言ってアリシアはポンポンとフェイトの背中を叩き、一旦自室へ戻ることを促した。
 フェイトは最後にため息を吐き、いつの間にか子犬モードですやすやと寝息を立てていたアルフを胸に抱き上げる。

「うん、分かったよお姉ちゃん。じゃあ、後で」

 ソファに腰を下ろし、俯き加減でヒラヒラと手を振るアリシアに手を振り替えしフェイトはリビングを出た。

「はあ……、一応話しがまとまったようだな、アリシア。すまないが一つ頼み事を聞いてくれるか? 本当なら母さんの方から言うべきなんだろうけど。君に提督付きの民間協力者として依頼したい」

 依頼と聞いてアリシアはだらしなく伸ばした足を引っ込め、若干乱れた髪と服の裾を直し、表情も真剣なものになって居住まいを改めた。

「いや、そこまで改まらなくてもいい」

 急に人が変わったのように振る舞うアリシアにクロノは少しだけ気押しされ、アリシアの対面の席に腰を下ろした。

「いえ、依頼の話しとなればこれぐらいは妥当でしょう。ハラオウン執務官」

 フェイトとユーノは本局にいたときからアリシアのその振る舞いを見慣れていたためその対応も素早かった。
 ユーノは少し長くなりそうだなと察し、アリシアに先に部屋に行っていると伝えリビングを後にした。

「まずは、契約書と今回の依頼書だ。契約書には変更はない。依頼書もその契約書の範囲内に収まるように作られている。母……いや、ハラオウン提督のサインも入っているからとりあえず確認してくれ」

 アリシアは、無言で頷き、クロノから渡された契約書の書類一式と今回の依頼書という一枚の紙に目を通し始める。
 細かい字を読むときに掛けるようになった眼鏡を見て、クロノはただそれだけでも見るものに与える印象が随分変わるのだなと改めて感じる。

 何度も言うようだが、アリシアはリンディによって雇われた民間協力者だ。つまり、彼女の給料はリンディ提督の私財から出されている。先日、アリシアはその状況を省みて「小遣いを貰う口実のようなもの」と言っていたが、リンディとは契約書を交わしている間柄であることからそれは正当な労働の報酬といっても実は全く問題がないのだ。

 まあ最も、社会的にはなんの身分も地位も持たない未成年と交わす契約書など法的になんの力も発揮しないと言われればそうなのだが、そこはリンディとクロノの人柄のおかげが、今のところその契約違反になるような依頼はアリシアにもたらされていない。

「無限書庫での資料探索ですか……闇の書の。確かに、契約の範囲内のことですね」

 アリシアの確認にクロノは「ああ」と頷いた。

「提督とも話し合ったが、これは君に頼むのが一番いいと判断した。無限書庫にいてくれれば、今回のような無茶をされる心配もない。一石二鳥の案だとエイミィも絶賛していたよ」

「こういうことはユーノの方が得意だと思いますが?」

 アリシアは一度書類をテーブルに置き、眼鏡を外してクロノに向き合った。

「分かっている。しかし、色々と面倒な理由があってね。最初は僕もそうした方が良いんじゃないかと提案した」

「やはり、ユーノが管理外世界の人間だからですか?」

「そうだ。元ミッドチルダ人だといっても、あいつの戸籍は地球だからな。流石に、局員でも嘱託魔導師でもない管理外世界の人間に管理局の施設を自由に出入りされるのは面白くないということのようだ」

「確かに、役所にとって前例のないことを行うのはかなりの労力がいりますからね。そんなものに力を使っているぐらいなら多少質は落ちても素早くかかれる私ということですか」

「君を甘く見ている訳ではないことは保証する。実際僕たちは君とユーノはこの手のことに関しては殆ど同等と考えている」

「ありがとうございます。それで、明日から早速ですか?」

「ああ、その前に会って貰いたい人がいる。具体的に二人。君もよく知っている提督の使い魔だ」

 提督に使い魔と聞いてアリシアは「ああ」と閃くものがあった。

「あの猫姉妹かこの間送ったプレゼントの感想を聞いてなかったな」

 その瞬間、アリシアの瞳が醜悪な悪戯心に輝いた事をクロノは見逃さなかった。
 明日はどうなる事やらと、クロノは来る嵐を予感しつつ苦笑いを浮かべるしか方法を見いだせなかった。


******


 クロノと明日に関する事の打ち合わせを終え、契約書と依頼書になんの不備もないことを確認し合った頃には時計の針はそろそろ日付を変更しそうな時間となっていた。

 アリシアはクロノにお休みを良い、自室に引っ込むと、そこには既に二人仲良くベッドでお休みなっているなのはとフェイトと、広いベッドの端に腰を下ろしなにやら難しい顔で俯いているユーノがいた。
 互いに抱き合いながら実に幸せそうに眠るなのはとフェイトにアリシアはつい頬を緩めるが、ユーノの様子から少し真剣な雰囲気を感じ取った。

「どうしたの? ユーノ。何か考え事?」

 アリシアは今にも落ちてしまいそうな瞼を擦りながらクローゼットを開いて寝間着に着替え始めた。
 時折背後から「うーん、ユーノくぅーん」というなのはの声や、「おねえちゃーん」というフェイトの声を左から右に聞き流しながらアリシアは服のボタンを一つずつ外し始める。

「ちょっとね、気になることがあって」

 アリシアは「ふーん」と呟き、下着と同色のシンプルで地味なパジャマのズボンを履き、上着のボタンを止め鏡台(ドレッサー)に腰を下ろした。