美少女オタクと鏡音レン
誕生日
突然だが、なんともうすぐマスターの誕生日だという。
レンは困っていた。正直、プレゼントを買う金銭的な余裕はない。だが、何もないというのはあまりにも寂しすぎる。
そこでレンは、姉たちに相談することにした。
「マスターの誕生日、どうすればいいかなぁ……」
「そうよねぇ。私たちじゃたいしたものは買って上げられないし」
相談すれば、どうやらミクたちも困っていた様子。三人で頭を悩ませる。
そのとき、リンの頭上でピンと電球が閃いた。そして、にっこりと、リンがレンを見て笑った。レンは背筋に怖気が走るのを感じた。
「何、思いついたんだよ……」
恐る恐る、尋ねてしまって後悔した。がしっと、リンがレンの肩をつかんだのだ。
「そうよ。わざわざプレゼントなんて買わなくっても、いいものがすぐソコにあったじゃないの」
リンの黒い笑みが、レンに迫る。
「い、いやぁぁぁっっっ!!」
哀れ、鏡音レン、ロードローラーの錆となった。(違)
「マスター」
ミクとリンが、ニコニコとした笑顔で帰宅したマスターを待ち受けていた。
「何だお前ら、気味悪いぞ」
「気味悪いなんてひどいです! せっかくマスターに誕生日プレゼント用意して待ってたのに!」
誕生日プレゼントという台詞に、マスターはぽかんとした。カレンダーを頭の中で数えてみて、納得する。そういえば、今日は自分の誕生日だったのだと。
「そ、そっか。お前らありがとうなっ」
感激のあまり、マスターはミクとリンを抱きしめていた。誕生日プレゼントをもらえるのなんて、一体何年ぶりだろう。
「で、そのプレゼントはどこに?」
こっちこっち、と二人に連れられ、リビングへ。
浮かれていたマスターはそこになにが待っているのか、まったく疑っていなかった。
「こ、これか!?」
目の前に現れたのは、巨大な箱。しかも、ごとごとと動いている。
それを、リンがガンッと蹴りつけた。箱は、おとなしくなった。
一体、何が入っているのか。そういえば、レンの姿が見えない……。
マスターは恐る恐る、箱に掛けられたリボンを解いた。もとはダンボールだと思われる箱が、開けられた。
中から出てきたのは……。
「レン、なんつーカッコ……っ」
後ろ手に縛り上げられ、ほとんど服も脱げかけのような姿で、くつわを噛まされたレンが、涙目でそこに座っていた。
いや、正直言うとちょっと、このおいしいシチュエーションでそんな涙目で見上げられると、ものすごく萌えはするのだが。
「お前ら、いくらなんでもこれはやりすぎ……」
だが、怒鳴る相手はすでにそこには居なかった。
「じゃ、マスター、後はごゆっくりー」
パタンと閉ざされた扉。にこやかな笑みを残し、二人の腐女子は問題だけを残して去っていった。
もがくレンを、マスターは振り返ることができなかった。
マスターは究極の2択に迫られていた。
1.レンの縄を解いて開放してやる。
2.おいしくいただく。
さて、どうするマスター。
その続きはまたいつか。
作品名:美少女オタクと鏡音レン 作家名:日々夜