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闘神は水影をたどる

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海賊


 フェリドは宣言どおり、掌握した小舟に乗って、オベル主港に帰還した。
 舟は近くで見ると、海賊船と騒ぐのもはばかられる、お粗末なものだった。大洋に浮かべる乗り物として信じがたいことに、それは河船程度の装備しか積んでおらず、オベル海兵を呆れさせた。
 乗組員三人に問いただせば、彼らは西廻り航路を使う商船の定期便に狙いをつけるため、岩礁に隠れて品定めをしていたという。通常どおり海軍船が出てくれば、岩礁の多い地形を利用し、小回りのきく操舵船で逃げ切れるとふんでいたらしい。フェリドの奇行にも近い奇襲が運良く功を奏したわけである。
 一度海中に落ちたのか、ずぶ濡れになった海賊が、肌をより青白くさせて震えながら白状した。
 結局、フェリドが戻ったのは出発から四十分近くが過ぎた頃である。酒の産地としては随一であるカナカン酒の相伴は、次回持ち越しとなった。
「掌握は十五分で済んだのに、逃げる奴を追っかけ回していた末にこうなったんだ」
 もちろん、海賊船の掌握とは、操舵、乗組員すべてを思うままにすることである。引き際悪く言い逃れるフェリドだったが、最後には少年のように唇を尖らせていた。
 オベル主港に、午後の平穏が戻ってくる。
 そして、フェリドの嗅いだとおりに、天候が変わった。
作品名:闘神は水影をたどる 作家名:めっこ