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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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英邁



ロックアックスを攻略する。

ヒナタがシュウに戦う意志があることを告げ、皆が広間に集合した。
王国軍に対し同盟軍はその半数程度。
シュウの策によりキバ将軍がミューズ市に出向き王国軍の部隊を誘き寄せることで3万対2万の兵にはなるだろうが、それでも1万の差。
だが誰1人恐れる事はなかった。

キバがクラウスに別れを告げ一足先に出陣していった。

クラウスはずっとそれを見送り続けていた。

「・・・今回は僕も参加しようと思っているんだが。」

ロックアックス攻略作戦を広間でシュウが告げる前に、ヒオウがいつになく真剣な表情でシュウの部屋を訪れてきた。

「・・・いったいどういう風の吹き回しだ・・・?」
「・・・お前も多少は気付いているんだろう?ヒナタの疲労具合について。最近それが酷くなっているとは思わないか?今は大事な時。出来れば僕は彼の部隊について警護したい。あと、今のままだと圧倒的に向こうの人数が優勢だ。僕がそれをいくらか減らし出来る限り早く片付けたい。とりあえずいつもの格好だと誰もが僕だと分かるだろうから、別人に扮し、例の紋章は使用せず戦おうと思ってはいるが。」

いつもののん気な話し方ではなかった。
過去を知る者ならまるで3年前のヒオウを見ているようだと言っただろう。
シュウは暫く黙って考えていたが、特に断る理由はなかった。
それにこの様子だと、シュウが例え反対してもヒオウは参戦しただろう。

「やほー、ヒナタ。」

部屋で出陣の準備をしているヒナタに知らない人が話しかけてきた。でもこの声・・・。

「っヒオウッ!?」

バンダナがなかった。
髪が赤毛になっていた。
全身黒い戦闘服を着ていた。

そして顔には化粧が施されており、女性に見えた。

「うん。」
「えー・・・。何してんだよ・・・。なんか脱力すんなー。・・・でも、化粧、似合うな、もてるよ、きっと。」
「ありがと、かなり嬉しくないけどね。実はね、今回だけちょっと参加しようかなって思って。兵に差はあるし、どのみち僕は暇だしねー。でもほら、普段の格好だと敵さんにもすぐばれちゃうでしょ?だからちょっと変装したんだよねー。僕って分からない?」
「うん、声聞かないと分からなかったよ。って、マジ!?えー?どういう風の吹き回し?まあ暇つぶしってとこがヒオウらしいけどさー。ま、いっかあ。うん、サンキュー、助かるよ。」
「良かった。じゃあこれ知ってんの君と軍師殿だけなんだよね。秘密だから。ってことで僕は君と共に行くから、よろしくね、隊長さん。」

こうして軍は出陣した。
ヒナタの部隊では、皆が誰だあれ、と噂していた。

ヒナタは皆には簡単に、今回だけの助っ人だとだけ説明した。
誰かがその赤毛の女に話しかけるが、ちらりと見ただけで、一言も口をきかずに首だけふったので、口がきけないものと皆は思ったようであった。

まあ、しゃべれば声でばれるかもしれないからね、とヒナタとヒオウは苦笑していた。


騎士団領に入ったところで、王国軍が出現した。ユーバー、マチルダの軍も加わっている。
戦いは長引きそうだと思われた。
・・・だが・・・。


ヒオウは馬を自在に操った。
まるで自分と一体だというように。

そうして駆け回り、次々に敵を倒していく。
武器は剣と弓を持ち、それを上手く使い分けていた。

ヒナタは改めて、ヒオウが敵でなくて良かったと思った。
ヒオウは圧倒的で強大な力を敵に見せ付けていた。
周りは戦いのミューズが現れたと士気を上げている。

掛け声すらなく、ただ黙々と、いっそ美しいと思えるほどの技で敵を倒していく。

ヒオウはいつも棍を持っていたから、これほど剣や弓が使いこなせるとは、とヒナタは最初思った。
しかし考えると不思議でも何でもないか、と気付く。

ヒオウは棍の使い手としては最高だった。
何気なく振るっているようで、決まった型を一分の狂いもなくとっており、それこそお手本が服を着て動いているようなものであった。
その上機敏で臨機応変に対応出来る。悔しい事にヒナタがヒオウに敵った事はなかった。

それほどまでに武芸に秀でている人である。
多分一通りの武器は使いこなせるのは勿論、それで戦ってもまず負けることはそうないのではないかとヒナタは考えた。

だがいくらヒオウが強くとも敵も複数いる。

仲間が重軽傷を負いつつもまだまだ沢山いる敵と戦っているのを見て、ヒナタは自分の右手を上げようとした。
するとそれに気付いたヒオウがすっと近づいてきて黙って首をふり、手でヒナタを制した。

「・・・でも・・・」

また首をふると、ヒオウは左手を上げる。そして何かに集中した。

ヒオウの額と左手が光りだす。

激しい風が巻き起こり湧き出た水がまるで竜となり敵に襲い掛かる。

・・・水竜・・・。
膨大な生命力を持つ魔物ならいざ知らず、一般兵は次々と倒れていった。
その反面重軽傷を負っていた味方達は風が運んできた恵の水により完全に回復していた。

「・・・すごい・・・。一人で組み合わせ魔法が使えるなんて・・・。」

ヒナタまでもが圧倒された。
組み合わせ魔法は威力が絶大な分、魔力の消費も尋常ではない。

そういえばこの間何気に調べてみたら、魔力はやはりルックが1番高かったが、ヒオウはその次くらい、メイザースに劣らない高さであった。
力も守りも技も運も何もかも高いってズルイ、とへそを曲げてヒオウに苦笑されていたっけ。


敵の形勢が危うくなってきた。
だがそこに新たにクルガンの部隊があらわれた。敵は底なしかと思われた。

するとシュウの合図があり、新たな味方援軍が現れる。
敵もきりがないと思ったのか、ジョウイの撤退命令が出た。

援軍とはいったいと誰もが思っていた。
もはや軍は出切っていた筈。

「まったく人使いがあらいよ。私らまで引っ張り出すとはね。」

援軍はレオナやバーバラといった非戦闘員だった。


同盟軍もグリンヒルに戻り、1度体勢を立て直すことになった。

グリンヒルに到着した時には、すでに赤毛の女の姿はなかった。
人々は彼女は天が使わした女神だともてはやしていた。
誰もがあの強さ、美しさ、凄まじさを忘れないであろう。

シュウも内心驚きと賞賛に満ちていた。
カリスマ英雄との噂高いかの人物は、ヒナタに連れられて来てからこっち、呆れるような事ばかりしでかしてくれていた。
勿論一般兵等にはそういった事を知る事はないが、仲間内ではヒナタと並ぶいたずらっ子ぶりだと言われていた。
それでも過去を知る者が多いという事と、パーティを組んで一緒に戦ったことがある者が多い為、別に英雄という事を疑う者はいなかったが。

ただシュウはそういった姿を見たことがなかった。
そして今日、それを目の当たりにし、鳥肌がたった。
やはり、凄い人物であったのだと、思い知った。

「や、ヒナタ、お疲れ様ー。」

ヒオウがいつもの扮装で何事も無かったように現れた。
ヒナタとシュウは目をあわせてふ、と笑う。


「では、ロックアックス城を落とす為の策を説明する。」

シュウの声が響いた。