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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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逐次



それぞれがそれぞれの行き先へと歩いていく。

「じゃあおんしも無理はするなよ。」
「うん。シエラ様はもうしなきゃいけない事はやったんだし、もっとゆっくりしていけばいいのに。」
「ふふ・・・。まあそれも良かろうがの。じゃが長らく奴を追いかけておったからの。久しぶりにそれこそゆっくり旅してまわろうかと思ってな。」
「ふーん、そっか。じゃ、気をつけてね。」
「・・・おんしも・・・あの死神にいいように振り回されん事じゃ。」

シエラはぎゅっとヒナタに抱擁すると、ぼそっと呟いた。

「やあ始祖様。誰に振り回されるって?」

ヒオウがにこやかに現れた。
シエラは紅い目をちらとそちらに向け、鼻を鳴らした。

「ふん。誰の事かは説明せずとも分かろうて。おんし、くれぐれもヒナタを泣かせるでないぞ?」
「僕が?ヒナタを?何を仰るかと思えば。耄碌でもされたんでしょうかね。」
「・・・いい度胸じゃな・・・?」

2人の間にはまるで暗雲が立ち込めているようである。

「あーもーケンカしないっ。何で2人っていつもそんな風なのかなー。」

ヒナタが割って入った。

「ふん、まったく無礼な小僧じゃ。今回はヒナタに免じて許してやる。それではの、ヒナタ。またいつか会おうぞ。」

ヒオウをにらみつけた後、ヒナタに向き直り別れを告げたシエラは去っていった。

「ようやく行ったよ。」

ヒオウはやれやれといった風にため息をついた。

「ほんと何でヒオウとシエラ様はそんな風なんだよ。」
「えー?何でかな。まあ馬が合わないんじゃない?」
「そうかなあ。ある意味2人って似てるように感じるんだけどさあ。」
「僕とあの人が?冗談。」

それよりも、とヒオウはヒナタに向き直る。

「シュウとクラウスが探してたみたいだよ?ヒナタがさ、誰か出発する度に見送ってるからどうも決裁書類がかなり溜まってきてるようだね。」
「げ。あーそうだった。ようやく戦争終わって鬱陶しい事務処理から解放されるとか思ってたけど・・・これからもあるんだよなあ。」

ヒナタはため息をつきながら歩き出した。
まあがんばってねーとヒオウはのん気そうに言った。


デュナン城からは日々仲間たちが暇を告げていた。
ヒナタはそれを少し寂しく思いながらも笑顔で送り出していた。

勿論、ここに残って一緒に働いてくれる仲間もいる。
オウランは親衛隊長の職を務めている。
ハウザーは軍の指揮官として。
ゲンゲンやカボチャはコボルト部隊に。
バドはモンスター使いとして。
ゴードンはゴードン商会を広める為頑張っている。
ジュドは守護神に続く新しいモチーフを探している。
シロウはここの賭博場にいる。
テッサイもここの鍛冶屋に。
ハンスは防具屋に。
レブラントは鑑定屋に。
バーバラは国庫を取り仕切っている。
レオナの酒場は今も賑わっている。
そしてフェザーもここを守ってくれている。

他にもただ他の街に行っただけで会おうと思えばいつでも会える仲間もいる。

それでもやっぱり皆が揃っていた時とは違うなとヒナタは思った。

「ヒオウはまだいてくれんの?」

歩きながらヒナタが聞いた。
あの戦いが終わってから数日。
ヒオウはずっとここにいてくれていた。

「んー、そうだね。でも僕もそろそろ一旦帰らないとグレミオが泣いて押しかけてきそうだ。」

”ぼっちゃんっっ”と叫びながら押しかけてくるグレミオの姿が簡単に想像できた。

「あー・・・はは・・・、確かに。普段はすごく穏やかでいい人なんだけどなー。ヒオウの事となると、凄いよね、グレミオさんって。」
「まあね。昔からだから。という事だから、僕も今日帰るよ。」

シエラもいなくなったことだし・・・と内心思いつつ。

「そっか。しゃあないよね。」
「大丈夫、僕はまた来るから。君もいつでも来れる時にくればいいから。」
「ん。」

ヒオウはにっこりと笑って、すっと手をのばし、ヒナタの髪をなでた。
そして暫く黙ってヒナタを見る。

「?どうしたんだ?」
「・・・ん?いや、別に。まあ、先は長いんだし、ゆっくりと、と思ってね?」
「は???んーまあ確かに長いよな。」

首を傾げるヒナタにニッコリとまた笑いかけ、じゃあね、とヒオウは帰っていった。

「・・・・・。あっ、そろそろ戻らないとヤバイ。シュウに鬼が君臨するっ。」

ふと思い出し、ヤバッと言いながらヒナタは急いで階段を駆け上がった。
エレベータはなぜかアダリーがサウスウィンドウに戻ってから故障したのか、動かなくなった。

こうやって色々なものがどんどん形をかえていくんだよな。

・・・でも僕はもう変わらない。

あの時から多分。
今は全然実感はないけれど・・・。

見た目はずっとこのまま。
背ものびない。
どうせならもうちょっと成長した後にそうなってくれたらな、仕方ないけど。

今は見た目も中身も一緒だから分からないけど、あと5年、10年・・・と時が経っていくにつれてどんな気持ちになんだろう。
ヒオウに聞いても、まあ慣れたし仕方ないよ、としか言わない。

どうせヒオウだしな、どうでもいいとか思ってんだろうな・・・。


ヒオウ。


彼も僕も変わらない。
時が経っても、色々なものがどんどん形を変えていっても。


僕らの間も変わらないでいられるだろうか・・・。


出来ればずっとこのまま変わらなければいい。

・・・でも・・・いずれそういう訳にはいかなくなるんだろうか・・・。
不変なものなんて、ないんだろうか・・・。

・・・年をとらない、こんな自然の法則から反した事が存在するくらいなんだから、不変だってあっていいはず。


・・・でも・・・。


「ヒナタ殿っ。まったくあなたという人はっ。どれだけ書類を溜めれば気が済むんですっ。」

執務室に駆け込むなりそれこそ相変わらずなシュウの怒鳴り声。

「うるさいなー、やるよ。ちゃんと来ただろ?シュウは相変わらずだな、はげるぞ?」
「誰のせいだと思ってるんだーっ。」

横ではいつものようにクラウスが静かに笑っていた。