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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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膏肓



いつからだっただろう・・・。

ヒナタはボンヤリと窓の外を見ていた。
とても気持ちの良い夜だったが今はただ真っ黒な空をボンヤリ眺めて考え事をしていた。

ここはとある街の宿屋で、街に着いた時にすぐに入った。

ここ数日野宿生活だった為せいぜい川で水浴び程度しか出来なかったので部屋に入るとすぐに交代でシャワーを浴びた。
疲れていたヒナタがベッドに入って暫くすると、ヒオウはそっと部屋から出て行った。

ヒナタは起きていた。
いや、確かに疲れていてベッドに入るとすぐにうとうと、と眠りに入っていたのだが、ヒオウが服を着替えている事に何となく気付いた。
だがそのまま眠っている振りをしていると、ヒナタの様子を伺ったあと、ヒオウはそっと出て行ったのだった。

ヒオウはほんのたまに、こうして一人でどこかに行ってしまう。
それは前から、一緒に旅をするようになってから、たまにあった。

5年程前、ヒナタはヒオウに告白された。

それまでずっと、大切なヒオウから、大事にはされていてもずっとモノとして扱われていた事をヒナタは知っていた。
何事も楽しんでいるようでいて、実は何事にも執着しない、好きでも嫌いでもなくどうでもいいと思っているヒオウ。
そんなヒオウだから、例え自分が人としてではなく、モノとして大切にされているんだとしても、ヒナタは良かった。
いや、本当は悲しい事だが少なくともどうでもいいとは思われていないという事がヒナタにとっては重要な事だった。

ヒオウが”共に”と言ってくれた。
きっと大切な仲間になる。

出会った頃ヒナタはそう嬉しく思っていた。

ヒオウといるのはとても楽しくてとても勉強になって、そしてとても安心できた。

自分が不完全な紋章のせいでちょくちょく倒れるようになってもヒオウはそばにいてくれた。
そしてヒナタを守ってくれていた。

気がつけば大切な仲間の1人、ではなく1番大切な人になっていた。
1番・・・。
そう、ジョウイよりも。
ナナミよりも・・・。

気がつけばこれからも共に、一緒にいてくれるかけがえのない大切な人に、ヒオウはなっていた。

この感情をなんて呼ぶのだろう。
親友として?
家族として?
よく分からないが、大切な大好きな人だとは分かっていた。

1度グレミオさんに2人はどういった会話をするのかと聞かれた事があった。
性的な話はするのか、とも。
普通当時の年頃ならそういった話はよくするものなのだろう。
だがヒオウからはモノとして扱われていたからか、そういった話はしなかった。そういった生々しい感情のやりとりはしなかった。
もしかしたらグレミオさんは何か違和感でも感じたのかもしれない。適当にごまかしておいたが。

だがあの日。

ヒオウは好きだと言ってくれた。
紋章を恐れてヒナタをモノ扱いしていたが、紋章がヒナタを守っていると分かり安心してくれたのか、恋人になって欲しいと言われた。

そしてヒナタも、恋がどういったものか分からないがヒオウは大切な人だから、と承諾した。

それ以来ヒオウは前にも増してヒナタを大事にしてくれるようになったのではないだろうか。
勿論普段は相変わらずいじめっ子なところのあるヒオウだが。
そしてヒナタが疑問に思うようなこともきちんと話を逸らさず答えてくれるようになった。
昔のようにどこか操作されているような感じはなくなった。その代わり前にも増して独占欲が強くなったような気もするが。

そしてたまにキスをされる。
優しい、暖かい、キス。

その度にヒナタはドキドキした。
いつまでたってもされるとドキドキする。
これはびっくりするから、とか、恥ずかしいから、とかではないと思うようになった。

・・・いつからだっただろう・・・。