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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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更迭3




目を覚ますと天井が見えた。

「・・・。」

恐る恐る自分の手をみる。

目に映ったのは見なれた真の風の紋章だった。

ホッと小さく息をすると、目、覚めたんだ?とヒオウの声がした。

声をした方に目を向けると、うっすらと笑った顔のヒオウがこちらを見ていた。

「・・・まぁね。」
「あらためて、おはよう?・・・ルック?」
「・・・やっぱり気づいてた訳?」

ルックはむっくりと起き上がり、自分が寝ていたところを見ると、そこはベッドだった。
ソファーの方を見ると、そこにはヒナタがまだ眠っている。
倒れた時点では、ルックの中身がヒナタだと分かっていたからこそ、自分の体はベッドにいたのであろう。

「うん、まーねー、途中からだけど。」
「だったらなんでそう言わない訳!?」
「えー?だって隠したそうにしてたでしょ?だから乗ってあげたんじゃない、何言ってんの。」
「・・・隠そうとしたのはいっそ間違いだったと分かったよ。まったく・・・。で、なんでヒナタはあんたにたいしてあんな感じだった訳?」
「あんな感じ?」
「何とぼけてんのさ?あきらかにあんたにたいしてとげがあったと思うけど?」

ルックは相変わらずのらりくらりとしたヒオウにたいして鼻で笑いつつ言った。
ヒオウはソファーからヒナタを抱きあげ、そのままベッドに運びなおしていた。

「んー、まあ、ちょっとねー。時と場所をわきまえろとは言ってたね。」
「?何だい、それは?」

するとヒオウはニッコリ笑って言った。

「大人の事情だよ。」
「・・・。」

ルックは呆れたようにため息をつくと髪をかきあげながら座っていたベッドから立ち上がり自分の服を払いながら整えた。

「で?」
「・・・何」
「原因は、何?」
「・・・さあね、僕にも何がなんだか。ただヒナタ自身が疲れていたようだね。一つはそれで紋章にも違和感を感じていたんじゃないか。あれは強い紋章だからね・・・僕も実際体で感じてみて思い知ったよ。よくまぁずっと宿していられるね、慣れてきているとはいえ。」
「・・・そう。で、もうひと・・・」
「・・・でもまぁ今までよくなんともなかったね。最近ヒナタの周辺で何か変わった事は?」

ルックは腕を組みながらもう一つは、と言いかけたヒオウに向き直り、聞いた。

「・・・とくには・・・あ、でもグレッグミンスターに来る前に一度しばらく別々になったことがあった。もしかしてその時に何かあったのかもしれない。」
「ヒナタはその時のことをなにか言ってた?」
「いや・・・。ただその後からだな、なんとなく調子が悪いと言いだしたのは。」
「ふーん。」
「何?」
「いや、別に。てゆうか、なぜ別々に?」
「詮索するね。まあ、いい。別にけんかした訳じゃない。仕事の絡みでね。」
「仕事?」
「まあね。そりゃいくら不老っていったって、僕らは霞を食べて生きていけるわけじゃないでしょ。たまにちょっとした賞金稼ぎとかね。」
「で、なぜ別々に?」
「いやにそこ、ひっかかるんだね。ヒナタがさあ、酒場でとってきた仕事がね、一人で行く内容だったらしいからだよ。まあ、そんなのとってきた事に対しては僕は文句を言わせてもらった上で、僕が行くって言ったんだけどね、聞きゃあしない。」

ヒオウはため息をついて、ベッドに腰掛け、愛おしそうにヒナタの前髪をすいた。

「その前に僕が軽いけがをしたんだよ。それも大したこと、ないってゆうのにさ、休んでろってね。あげくのはてにヒナタが寝てるときに僕が朝食のパンを買いに出てるときをねらって出発した。」
「で、その仕事の内容って、どんなだったんだい。」

するとヒオウは軽くため息をついた。

「・・・詳しくは知らないんだよね。教えてくれなくて。で、買い物から帰ってきてから問い詰めようと思ってたら、出かけてた。ヒナタもなかなかやるようになったもんだよ。まぁ、僕の失点だね。」

ルックが黙ってると、ヒオウが続けた。

「なんでも誰かを救出する仕事だとか何とか。一見よくあるような事だよね。でも一人って限定してるとこがね。」

いつもヘラっとしてそうなヒオウが厳しい顔つきを一瞬した。

「・・・確かに、なんだか変な話だね・・・。」
「帰ってきてからは、さらに教えてくれなくなったんだよねー。アレのときなら気が緩んでしゃべるかなとか思って何度か挑戦したんだけど・・・」
「・・・。」

その時ヒナタが身動ぎした。

「ん・・・」

それからゆっくりと目を開ける。

「やぁ、おはよう、ヒナタ、大丈夫?」

ヒオウはニッコリしてそう言うと、顔を近づけてヒナタに口づけた。

「ん・・・、ンウ・・・っ!!!!!」

途中までは夢うつつのような感じで受け入れていたヒナタは、完全に目が覚めたのか、ハッとしたようになり、ヒオウを押しのけた。

「ひどいなーヒナタは。」
「って、何しやがんだよっ、ルックもいるってのにーっ!!バカバカ、恥知らずーっ」

顔を真っ赤にさせて避難しているヒナタにたいして、ヒオウはそれも愛しいとばかりにニコニコしていた。
ルックは呆れたようにため息をつくしかなかった。