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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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芳醇1



あの日。

ヒオウは朝にいつも焼きたてのパンを買う為に外に出ていく。
それを知っていたからこそ、ヒナタはそれまでは本気でぐっすり寝ていた。
そしてヒオウが出ていった音で目が覚める。これは意識しておいたから簡単な事だった。

「・・・ごめん、ヒオウ。」

出て行った方向にそっと謝ると、ヒナタは起きだして準備を始めた。

今回の依頼はヒナタが一人、酒場にいるときに手に入れたものだった。

ヒオウはその前にかるい怪我を負っていた。とてつもなく強い魔物を相手にしていたヒオウとヒナタ。
それでも多分普通ならしなかった怪我であろう。ヒナタが少し油断してしまったのだ。
ヒオウはそんなヒナタを迷う事なくかばった結果、負ってしまった傷。

傷自体はほんとに大したものではなかった。ただ薄皮一枚はがされたせいか出血が最初ひどかった。
それを見たヒナタは生きた心地がしなかった。結局そのひどい出血もすぐにとまり、大したことはないと分かってもとても落ち込んでいた。

「大丈夫だよ、そんな落ち込まなくても・・・」
「う、うん・・・でも僕が油断してたから・・・」
「そんなの気にしなくたって。ね、大丈夫だから。僕は全然大丈夫。」
「・・・」
「ふう、そんな落ち込まれると困るね?よし、じゃあこうしよう、助けたお礼をしてもらう、これでどう?少しは気が済むんじゃない?」

そう言われてヒナタは目にもみえて明るくなった。

「うん、そうだね、そうして?僕、なんでもするからさ。」
「じゃあ、ありがたく」

結局怪我をしたはずのヒオウよりヒナタの方がある意味動けなくなってしまった。

その数日後に、ヒナタは一人で酒場にいた。
ヒオウは酒場はあまり好きではないようである。何かと機嫌が悪くなる要素があるらしい。

そうは言っても、そろそろ少し稼いでおきたい状態でもある。
本当はヒナタが一人で酒場に立ち入るのもとても嫌っているようではあるが場所によってはお許し(笑)が出る。

そう、雰囲気の悪くないところ。

「まったく、小うるさいんだから。」

ヒオウがいないのをいいことにちょっとつぶやいてみながら、ヒナタはカウンターへ向かった。

「やあ、いらっしゃい。」
「なにかいいの、ある?」
「へえ、君みたいな子どももハンターなのかい?まあ私も色々見てきているからね、君がタダものではないってくらいは分かるけどね。」

ニヤッとわらいつつマスターらしき男が言った。

「へえ、見る目、あるよマスター。で、どうなの?」

見た目が子供なヒナタ達はよく甘くみられる。だからこういう人に出会うと嬉しかった。
ヒナタもニッコリしながら聞いた。

「うーん、今は・・・ちょうど切らしてるとこなんだよなあ。昨日までならいくつか依頼はあったんだけどね。」
「そっかぁ、しゃあないね。じゃぁまた来るよ、ありがと。」
「おお、また入ってくると思うよ、ここんとこまた物騒になり始めてるからね。」

ヒナタは手を振ってからカウンターから離れて行った。
出口に近づいた時、ふいに誰かが近づいてきた。

「仕事・・・探してるのですか・・・?」
「え?」

見ると深くフードをかぶった男がそばにいた。

・・・こんな奴、いたっけ・・・?

「ちょうど依頼に来たところだったんですよ・・・。先ほど失礼ながらお話が聞こえまして・・・。マスターの言う事が正しいなら、あなたはかなり腕が立ちそうだ。いかがです、話、聞きませんか?どうせ今マスターに持っていったところで奪い合いになりますよ・・・あなたがたがお話しているのを聞いている人が数人いましたからね・・・。多分彼らも仕事を待っている口だ。」
「それはありがたいけど、なんで見ず知らずのあなたが僕にそんな気を使うんです?」

あやしげな感じがしてヒナタはもっともな事を聞いた。

「まあ、正直わたしは腕が立つ人ならどなたでもいいんですがね・・・あなたのような若い方がこういった事をしているというのはよっぽど訳がありそうだと思ったもので・・・。あとですね、お若い方の方が好都合なんですよ・・・。どうします?」

若い方が都合がいいという理由は分からないが、若い者がハンターをしている事について言われるともっともな気がした。
先ほどはマスターにきちんと扱ってもらって嬉しいと思ってのに・・・どうも自分の外見をついつい忘れてしまう。
普通に考えて子供がこういう仕事をしてる事は珍しいだろう。

「じゃあ、話だけでも聞かせてもらうよ。」

結局ヒナタはそのフードの男とその店の奥に移動し、話を聞いた。

どうやらとある森に1軒の屋敷があるらしい。その屋敷に、この男の身内がとらわれてしまったそうだ。

「だったらこんな依頼にせず、もっとおおやけにしたほうが・・・」
「普通だったならばね。ここのお屋敷は、前からどうも化け物が出ると言われていて・・・」

その化け物がかなり危険なものらしく、誰も近寄りたがらないのだそうである。

「ふーん、で、その化け物って、どんななの?」