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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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芳醇2


「ここかあ・・・。」

今日も相変わらずフードを深く被った男に連れられてやってきたのは、自分たちが泊まっていた街からさほど離れていない森の中であった。
道中ヒナタは何かと話しかけてみたが、男は「ええ」とか「いえ」くらいしか話さず、とうとうヒナタも諦めて黙々と後をついていく羽目になった。

「で、今から僕はどうすればいいん?なんか変装でもした方がいいの?」
「いえ・・・特には。あなたは見目がいいのでそのままで結構かと・・・。では申し訳ございませんが、このまま中に入っていただけますか?この中のどこかにきっといると思いますので・・・」
「ああ、うん、分かったよ。で、その捕らわれた人ってどんな人?そういえば聞いてなかった。」
「・・・少年です・・・あなたのような・・・」
「そっか、分かった、じゃあちょっといってくるよ。あなたはここでまってるの?先にお金もらっちゃってて良かったの?」

実はここに来るまでに男は先払いだと言って報酬をくれていた。

「ええ・・・では・・・よろしくお願いいたします・・・」

どうも好きになれないなぁてゆうかなんか・・・と思いつつ、ヒナタは男に背中を向けて門を開け、中に入っていった。

振り返らなかった。

俯いていた男の口元が少し上がったのも、その後、消えるようにいなくなったのもそのまま進んでいたヒナタには見えてはいなかった。
また、この男の気配はもともと薄かった為、消えてしまったのも特に感じられなかったようである。

ドアは鍵はかかっていなかった。
開けると少し古いものの匂いがした。

少しギギィと音が鳴ったが、思いのほか大きなドアは軽く開いた。
中に入ると上の方の窓からほんのり光が入ってはきているので見えるが、どうにも薄暗い。
そしてまったく人の気配はしなかった。

とりあえず進んでみた。武器を確認しつつ、普通捕らわれの身っていったら地下だよね、と心の中で呟きながら進んだ。
ドアが開いた時点で悟られている可能性が高いとは思うが、それでも気配だけは消して歩く。
地下へと続く階段の先にはいきどまりの壁しかなかった。
もしかしたら隠し扉があるかもしれないが、簡単に調べただけで、今度は上へあがっていく。

とりあえず1階を一通り調べた後、次に2階へと上がった。
どこを見ても綺麗に片づけられている。だがあまり生活臭が感じられなかった。
2階の部屋を一つ一つ調べていく。といっても部屋自体が大きいからか、さほど部屋数はない。両側に2部屋ずつ。そして奥に一部屋。
その奥の部屋を最後に開けてみた。

どこの部屋も薄暗いが、カビ臭い匂いなどはしなかった。最後の部屋も薄暗く、最初はあまり何も見えなかった。
そのまま気配だけは消して部屋に入る。

・・・かすかに何かの気配がした。
ヒナタはすっと意識をそちらに持っていきつつ進んだ。
目はだいぶ慣れてきている。
見ると大きなベッドの上に誰かがいた。

「・・・誰・・・?」

あちら側からはあきらかに自分が見えていたであろうことが分かった為、そのまま声をかけた。

「・・・僕を助けに来てくれたの・・・?」

その声はか細く小さかった。
ヒナタはとりあえず警戒だけはしたまま武器のかまえを解き、ベッドに近づいた。
ようやく慣れた目で見ると、ベッドの上には自分の見た目とそう変わらない少年がいた。
生気のない目でこちらを見ていた。とても華奢だが、背は自分よりは高そうだった。

見目、ね・・・。
男が言っていた、「見目がいい」。
この少年にはぴったりの言葉だと思われた。

「君は・・・ここに捕らわれてきたの?」

そういえばあの男に、名前すら教えてもらっていなかった。
少年はこっくりとうなずく。

「名前は?」
「・・・。」

少年は聞こえなかったのか、なんだか寒そうにベッドにうずくまっていた。

「?どこか具合悪いの?大丈夫?」

ヒナタはおもわず近づいた。

「・・・」
「え?何?」

聞こえるようにと、さらに近づいてかがんだ。
その瞬間、がばっと少年はヒナタに覆いかぶさり、はがいじめにする。
いちおう警戒はしてたものの、つい油断していた。

ヒナタは慌ててふりほどこうとするが、相手はそうとう華奢であるはずなのにものすごい力であった。
そのまま抱きすくめられ、気づけば馬乗りされ、手をおさえられ、身動きがとれなくなっていた。

「っく・・・お前が・・・吸血鬼・・・?」
「そうだよ・・・。あなたを見たときからあなたをわがものにしたかったんだ・・・。」

その声は先ほどよりは明確に聞こえた。

「って、その声・・・お前・・・あの男!?」
「ええ・・・ずっとご一緒でしたね・・・最初からあなたに手出しは難しいと分かってたからね・・・油断出来る時を作ったまでの事。」
「やっぱ怪しい奴とは思ってたけどねー。なんか気配まで変えてたの?・・・で?いったい僕をどうするつもりだよ。」

ヒナタは身動きがとれないままもいつもの調子で聞いた。
少年は見惚れるほどの微笑であった。

「あなたをね・・・我の仲間にしようと思ってるんだ・・・」
「冗談じゃないよ、僕は吸血鬼になりたいとは思わない、ごめんだよー。」
「ずっと、永遠に若さをたもったまま生きられるんだよ・・・?」
「ふ・・・そんなもん、一度だって望んだ事はなかったよ・・・。」

ふとヒナタは一瞬遠い目になって言った。
少年はけげんそうな顔をしたが、手を緩めることはなかった。

「・・・我は・・・あなたにそばにいてもらいたいんだ・・・」
「だからって強硬手段?そんなだと友達出来ないよー?」

のんきな受け答えをしているが、その間もヒナタは必死に自由をとりもどそうとしていた。

「・・・無理だよ・・・我は吸血鬼だからね・・・あなたがどうこうできるものではない・・・。確かにあなたの腕も相当なものだけれどもね・・・」

少年はさらに美しい笑顔を見せると、顔をよせ、ヒナタにキスをした。

「!!んんーっ!!」

しばらく口づけされ、口を離された頃にはヒナタの息も荒くなっていた。

「っく・・・なっ何すんだよっ。」

すると少年はさらに笑みを深くして次にヒナタの首筋に口をちかづけた。そうしてつと唇を這わされる。

「っんぅ・・・」

やばい・・・なんか知らんけど、やばい・・・。
ヒナタは必死に抗おうとしたがやはりびくともしない。
そうこうするうちに少年が這わせていた唇を止めた。

チュク・・・と水っぽい音が部屋に響く。
そして・・・少年の二つの牙がヒナタの首元にささり、食い込んだ。

「んぁあ・・・・」

それは感じたこともないような感覚であった。体中が熱くなる。脳みそが溶け出しそうだ・・・。
そのままヒナタは意識を失ってしまった。