りりなの midnight Circus
第十八話 アークソルジャー
時空間の連なりはまるで枝を伸ばす|葡萄の房(クラスター)のごとく、その行方も知らずただ貪欲に己の支配域を拡張していく。
どこまで続くのだろうか。この世界は、そして、どこへ向かおうとしているのだろうそのもの達は。
〈時空紀元前7500年 ソフィア・ブルーネス記す〉
エルンスト・カーネルはゆっくりと意識を呼び起こした。
強い閃光が、遮光グラス越しでもまばゆく輝きその瞬間に襲いかかったえもいえないほどの不快感に彼は意識を奪われていた。
「よう、起きたか」
隣に座るベルディナはすでに遮光グラスを外し、シートベルトさえも外し、飲み物を片手にずいぶんリラックスしている様子だった。
「状況は?」
すでに|自動航行状態(オートメーション・モード)に移行しているのか、パイロットであるはずのカーティスも彼とともに飲物を口にしていた。
「先ほど、時空管理局本局船の脇を抜けた。十分ほど前までそこのL級巡洋警備艦〈ホークアイ〉の追尾を受けていたが、連中の管轄圏内を越えたためその追尾も今はない」
「そろそろ、どこに向かっているか教えてもらうぞ」
エルンストは、凝り固まった肩や首をもみほぐしながら、ベルディナをにらんだ。
「ああ、そうだな。そろそろ頃居合いか」
ベルディナはそういうと、カップをそばのテーブルにおろし、一息ついた。
「俺たちが向かっている場所は、時空連合首都ミッド・クラスターだ」
エルンストはしばらく考察し、彼の言った言葉が自分の脳内情報端末のどこにも記載されていないことを確認し、一つずつ確認することとした。
「聞きたいことは多くあるが、まずは、その時空連合とは何かを聞かせてくれ。時空管理局に似たような組織とは類推できるが。今までそんな名前は聞いたことはない」
ベルディナは、面倒くさそうに首をかしげると、
「そうだな。この世界は隣接する多くの世界、パラレルワールドやそれに付随しない独立した時空間の連結によって成り立つと言うことは知っているな?」
「ああ、それをとりまとめる組織が時空管理局だということも知っている」
「ならば、こうは考えたことはないか? 宇宙よりも広い時空間の海に時空管理局のような、広い時空世界を統合する組織がほかにもあるのではないか、と」
エルンストは少し考え、首を振った。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪