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りりなの midnight Circus

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第十九話 束の間


 ひとまず、現状の把握からだといってベルディナは、今まで裏で何か起こってきたか。エルンストをはじめとして、この件に巻き込まれたもの達がどのような思惑で運用されていたのかを少し詳しく話をすることとした。
 この件はエルンストにリカルド・マックフォートの殺害許可が出されたときにもう始まっていたこと。
 そして、情報部のたれ込みにない航空戦隊が彼を殺害したエルンスト達を消そうとしたこと。それによってエルンストの元相棒が死亡したが、エルンストは何とか生きて帰還したこと。
 そして、現在。裏でリカルド・マックフォートの名をかたり暗躍しているものがいると言うこと。
 食事を片手にベルディナはそう語った。
 アークソルジャーの食堂で出された食事はどうやら士官待遇のものだったらしく、ミッド・チルダの陸士隊や機動中隊で口にしたものよりも幾分か美味だった。それは、ミッド・クラスターで食されている料理という物珍しさからだったのか、ともあれ、異空の世界であってもその基本的な食文化には違いはないと感じ、エルンストは少しだけ安心した。
「とまあ、かいつまんで説明するとこんな感じだ」
 いったい何杯目のお代わりになるのか。山盛りのライスに分厚い肉のステーキをほおばりながらベルディナは時々話を料理にそらせながら一通りの話を終えた。
「結局、1から10まで私たちは利用されていたと言うことですか」
 さすがのなのはもそれを聞かされてはおもしろくない様子で、浮かべられた笑顔の上にぶっとい青筋を浮かべているようだった。
(あれは、怒っているな。まさに激怒だ)
 エルンストは、すでにすんだ食事を前にしてそんななのはの様子を評した。
 その様子からは、今にも首にかけられた【レイジング・ハート】を起動させ、大規模砲撃を彼に浴びせそうな勢いだったが、狭い艦内でそれをすればどういう結果となるかはさすがの彼女でも理解できていたようだ。
「まあ、そうだな。なかなか扱いやすい手駒だったよ」
 肉の最後のかけらをライスとともに胃に流し込むと、ベルディナは給仕を呼びつけ、さらに追加を要求した。
 エルンストは手駒と言われても何も感じなかった。事実、彼はそれを自覚して今まで過ごしていたし、消耗品である自分に多少の誇りも感じていた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪