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ティル・ナギ

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自覚2



昼前、例の石板の前でティルはルックと話していた。

「で?ナギに勉強教える事になった訳?あの子の部屋で。」

冷めた横目でルックが言った。

「そうなんだー。いやー我ながら良いアイデアだなって思って。」
「・・・ちょっと、ナギに変なコト、してないだろうね?」
「余計なお世話。勉強ならちゃんと教えたし。ただ最初だし、お互い慣れてないから、みっちり2時間じゃなくて、午前午後で1時間ずつてゆーことにさ、2人で、えへ、2人で相談して決めたんだー。ナギちゃんとね?」
「・・・・・。あんた、ちょっと情けないよ・・・。なんだか痛い。」
「ちょっと、今憐れみの目で僕を見てない?」
「あー、いたいた。マクドールさん。昼一緒に食べませんー?」

向こうからナギがやってきた。
勉強の後、ナギはシュウの所へ行ったので、ティルはそのまま降りて来て、ルックのところで油を売っていた。

「うん、行く行く。」

ティルはニッコリとナギに言った後ルックの方を見て言った。

「なんかデートのお誘いっぽいよね?」
「バカバカしい。」

ルックは呆れたようにため息をついた。
ナギはルックの方を見た。

「あ、ルック。ルックも行こうよ。ごはん、まだだよね?」

・・・そりゃ、近くにいたら誘うよね?あーくそ。

「ちょ、ナギに見えないのをいい事にそんな顔でおどしてもムダだからね。諦めなよ。」
そうは言いつつ、ティルと目を合わさないよう歩き出しながらルックはナギに言った。
「行くよ。」

歩きながらティルはそっとため息をついた。
せっかく2人で昼ごはん、と思ったんだけどな。
でも、まあいいか。これからいくらだって(週2回2時間だけど)2人きりになれるんだし?
とはいってもしっかり真面目に勉強教えるつもりだが。

「でさー、ルック。今度こそモクモクを見つける為にも、カレー持って行こうかって思ってんだけどさ。」

ティルはハッっとした。
妄想している間に会話においていかれている。
ってモクモク?カレー?どんなモンを見つけようとしているのだろうか?

「はあ。ちょっといい加減にしなよ。僕はもう付き合わないよ。っていうかカレーってなんだよ。」

レストランに着いて3人は席に着いた。
ルックはため息をついてそう言った。

「ムクムクに聞いたんだー。モクモクはカレーが好きなんだって。だからカレー持ってウロウロしてたらやって来んじゃない?って思ってさー。あ、マクドールさんも一緒に行きませんか?」
「えーと、ごめん、ちゃんと話聞いてなかったんだけど・・・。モクモクって何なの?あ、ナギくんに付き合うのは全然OKなんだけどさ・・・」
「ほんとにー?よっしゃあ。んじゃ嫌ならルックはいいよーだ。マクドールさんと行くからさ。」

ナギはルックにべーっと舌を出して言った。
舌・・・おいしそう・・・じゃない、それてるそれてる、モクモクだよ。
何なんだそれは?

ティルは考えていたが、ふとナギと2人で出掛けるんじゃ・・・と気付いた。
わぉ、そんならモクモクだろうがカレーだろうが何だっていいじゃん?
そんなティルを半目で見ていたルックはナギに向かって言いかけた。

「やっぱり僕も・・・「あーっと、ルック?ちょっといいかな?」」

ティルはニッコリ笑って立ち上がり、ルックの肩をつかんだ。
いくら最強魔術師といえども所詮ロッド使い。
ルックはミシッと鳴る肩をチラッと見て青い顔をしながらナギに言った。

「ああ、やっぱりサラダは止めてサンドイッチにするよ。こいつのシチューと一緒に頼んでてくれない?ちょっとティルと話あったの忘れてたからさ。すぐ戻るけどね。」
「ごめんね?ナギくん。ほんとすぐ戻るから。」
「??はぁ。んじゃ注文しときます。」

なぜここで話さない的な顔をしているナギを残して、2人はレストランを出て正面の出入口から外の洗濯場へ行った。

「まったく。あんた口調はやわらかくなったけど中身はほんっと変わらないね。」
「褒めても何もでないよ?つーかさっきから何な訳?何邪魔ばっかしようとしてるのかな?ルックんと僕の仲なのに?」
「どんな仲だよ!!僕はただ単に魔の手からナギを守ろうとしてるだけ。あんただろうと他の誰だろうと知ったこっちゃないよ。」
「えー?何それ?僕までその他AB扱い?ひどいよ?ルックん。」
「ルックん言うな!!」
「なんでそんなにナギちゃん守ろうとしてんのかな?別に恋愛感情とかないんでしょ?だいたいあの子だって強い子じゃない。別にお前に守られなくても自分の身くらい自分で守れると思うけど?」
「あんたは知らないからそんな事言えるんだよ!!」

え?
何このシリアスムード。

ティルは思った。
もしかしてナギの過去に暗い悲しい出来事でも?
ルックはため息をついて続けた。

「ここが本拠地になった頃すぐに僕は仲間になってたからずっと見てきたんだけどさ・・・ナギはね、ナギは・・・」

ティルはゴクッとつばを飲み込んだ。

「天然バカなんだよっ。」
「はい?」
「そりゃあ腕は強いから、その気になれば誰の助けもなく自分で身を守れるさ。でもね、”その気”がないってゆーか、本人分かってなければ意味がないんだよ。」
「・・・えーと、何か詳しい例かなんか話してくれない?」
「いいけど今度にしてくれない?ナギが待ってるからね。」
「じゃあ後で聞かせてもらうよ。とりあえずこれだけは言っとく。他のバカと一緒にすんな。僕は真面目だよ。それこそこの僕が好き好んで男好きになる訳ないだろ。ナギ、だからだ。いい加減な気持ちなんかないよ。他の子なんかいらない。ナギだから好きなんだ。だいたい僕は適当な気持ちで人に近づいたり近づけたりしないよ。3年前一緒に戦ったんだし、知ってるよね?僕は生半可な覚悟で大切な人なんてつくれない。」
「・・・・・。・・・そうだね。・・・分かった。どのみちあんたはナギに関してはヘタレだしね。」
「え?ちょっと、人が真面目に話してんのに何その台詞?ルックんてほんと素直じゃないよね?応援するよ、くらい言えないの?」
「うるさい。戻るよ。」

ルックは踵を返した。
ティルも後に続いた。

レストランに戻りながらティルは質問した。

「で、モクモクって何?」
「−ムササビ。」
「はい?」
「ムササビ探しに行くんだよ。あとは道中、本人に聞けば?僕は面倒くさいから説明しないし、同行もしないよ。」
「ルックん?」
「だからルックん言うな。どのみち僕は元々行きたくはなかったんだしね。あんたも行けば後悔すんじゃない?」
「へ?何で・・・」
「あーやっと戻ってきた。遅いよ。もう注文どころか頼んだモンきてんだかんね?俺先食ってるよー。」
「あ、ごめんね?ナギくん。」

ティルとルックも席に着いて食べ始めた。
シチューはグレミオには到底敵わないが、まあまあの味だった。少し冷めていてもおいしいと思えた。

その後ルックは石板の所へ戻っていき、ナギはまた夕方勉強会の時に、とティルに言って書類処理の為シュウのもとへ行った。
ティルはナギを見送ったあと、先程の話を聞かせてもらおうとルックのところへ向かった。

「・・・やっぱ聞きに来たんだ?」
「気になるからね?」

ルックは話出した。
作品名:ティル・ナギ 作家名:かなみ