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リオ・ナユ

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邂逅…群島諸国編



気付けば水の中に落ちていた。


びっくりして口の中に水が入る。
え?水?
何コレ、辛い。塩?
何だこれは?
ってゆうか誰か、助け、て。

もがくしか出来なかった。

「オーイ、誰かが溺れてるぞー!!」

いつものように上から様子を見ていたニコが海中でおぼれている者に気付き、下に向かって叫んだ。
その声を聞き、人が集まってきた。誰かが網を投げる。
沈みかかっていた者はその網にかかり、すぐさま引き上げられた。
甲板で網から出された者は、赤い服を着た小柄な子供だった。

「・・・まだ子供じゃねえか。」
「女の子か?男の子か?どっちか分からんがえらい可愛らしい子だな。」
「なんでまたこんな所で・・・?まるでこないだのあいつみたいだな?」
「おい、そんなことより、意識ねえんじゃねえか?人工呼吸を・・・」

その時人だかりからすっと1人の少年が出てきた。
そして徐に寝かされた意識のない子供に覆いかぶさり、人工呼吸を始めた。
珍しくもない光景の筈だが、やたら見目がいい2人のせいか、なんとも美しい光景に見えてくる。
そのうち、意識のなかった子供はゲホッとむせ、水を吐き出した。皆はホッとする。

「う・・・げほっ・・・あ、こ、ここは・・・」

うっすらと目を開けた。
すると目の前に・・・いる。

ずーっと自分の頭の中から出て行かなかった人物が。
あの作り物の笑みを浮かべて。
あ、どうしよう・・・、なんか、僕・・・。

起き上がった子供はいきなりボタボタと目から涙を落としたかと思うと、目の前の人工呼吸を行った少年に抱きついた。
いきなり抱きつかれ、びっくりしたのか唖然とした顔をした少年だったが、またすぐに元の顔にもどり、背中に手を回してポンポンとあやす様に軽く叩いた。
周囲では皆がポカンとしてその様子を見ていた。

「えーと、うみ、この子、まさかお前の知り合い、とか?」

後頭部で髪を縛りつつも下は刈上げという不思議な髪型の男が聞いた。
それが耳にはいり、ナユはアレ?と思った。
・・・ああ、そうか、念の為偽名使っているんだな・・・。
多分目の前に入ってきたものをそのまま使ったんだろうな、この人。
それにしてもうみと言えば、さっきの辛い水。何なんだ、アレ?あれが、海なのか?だれか大量の塩でもこぼした訳?

「・・・そうだよ?僕の・・・恋人。」

おーっと周りからどよめき。

・・・え?何つった?
この人今何つった?
てゆーか、自分も何してんだ今。

「って何言っ」

ガバッと離れようとしたら、引き戻され耳元に口を近づけて言われた。

「・・・貴様、そーゆー事にしときなよ?でないと襲われるかもだよ?・・・分かった?」

訳が分からないまま、とりあえず先にこの場にいて様子の分かっているであろうリオの言う通りにしようと、コクッと頷いた。
良し、とそっと言って、リオは耳に軽くキスをして、次にギュッと抱きしめてきた。
そしてリオは皆に聞こえるように言った。

「会いたかった。もう会えないかと思ったよ?」

まず聞くことのないような事を言われて、ナユは真っ赤になった。
周りでは口笛やはやしたてる声。そしてリオは離れ、ナユを立たせた。
その時先程のけったいな髪型の青年が話しかけてきた。

「俺はケネス。お前は何て言うんだ?」
「え、ぼ、僕ですか?その・・・」

周りでは、なんだ男か、という声が聞こえてきた。
まさか自分の事を言われていると思っていないナユはその言葉は気にせず、ケネスの質問に困って上を向いてつと考え、次にケネスに向かって言った。

「僕はソラっていいます。」
「そうか。よろしく、ソラ。で、お前はなんでこんな海で溺れてたんだ?お前といい、うみといい、なんかいきなり海の中から現れたみたいだ。うみに聞いてもまともに答えないんだよな。」

まあ、この人がまともに答えるとは思えませんが。ナユはそう思いつつ、とっさに考えて話し出した。

「えーと、僕とこの人は事情があって行く所があったんですけど、この戦争に巻き込まれちゃって、離れ離れになっちゃったんです・・・。多分この人も漂流中に海に流されたんだと思いますが、僕も小さな筏的なもので漂流してたときに流されちゃって・・・」

考えつつ話したので、少し途切れ途切れになってしまったが、それが妙に気持ちの入った言い方になったようだ。
しんみりとケネスは言った。

「そうか・・・。それは大変だったな。まあ、事情とやらは聞かないけど、悪かったな、巻き込んじまって・・・。お前ら確かにここの者でも、クールークの者でもなさそうだしな。まだ子供だってのに、大変な思いしたみたいだな・・・。」

子供と言われてナユはピクッとなったが、ここで気にしていても仕方ないと思い、ただ俯いた。

そこに、どうしたんだい、と聞き慣れた声がした。

「お、帰ってきたか、カイリ。」

やはり、そうだ。
昔のカイリだ。

見ると2人の青年と1人の女性と一緒にこっちにやって来るカイリがいた。
ケネスがカイリに先程からの事を話す。

見た目は今と変わらない。でも目が。
なんとなくカイリの目は冷たく感じた。

「ふーん、そう。分かった。その事情とやらで行く所、どこか知らないケド、そこに行ける様になるまでこの船にいるといいよ?俺達の邪魔しない限りいくらいてくれてもかまわない。」

じっと見てきたあと、カイリは言った。
ナユは内心、邪魔をすれば絶対殺される、と思った。

「ありがとう、ございます。一緒に戦う事は出来ませんが、船の中で僕達に出来る事ならなんでもします。」
「へえ、殊勝だね?そう。だったら俺の相手もしれくれるのかい?」
「へ?」

ナユの前にリオが立つ。
ケネスが言った。

「カイリ、止めてやれ。ソラはうみの恋人らしいぞ。放っておいてやれ。」
「ふーん。残念。俺の好みなのに。」

・・・カイリさん・・・。

長年生きようが生きまいが、あなた元々何でもありなんじゃあ・・・。
ナユは遠い目で思った。

「まあ、良いよ。なんかやれる事あったら適当にやってて。じゃあ、キカさん、シグルド、ハーヴェイ、行こうか。」

そう言ってカイリは踵を返した。

「ああ・・・。」
「失礼しますよ。」
「じゃーな。」

4人は船内に入って行った。それを見送りながらケネスが言った。

「じゃ、部屋はうみんところでいーよな。うみ、案内してやってくれないか?俺は今は甲板での警備番なんでな。今夜、歓迎の宴でもするか。それで色んなヤツと知り合えるだろうし。じゃ、その時にな。」

周りにいた人々も、それじゃあまた後で、と散っていった。

「じゃ、行こうか?」

リオがナユを部屋まで案内した。

かなり大きな船だ。間違いなく迷う。
自分の城でもたまに今何階にいるのか迷うくらいだ。
ここだと下手をすれば部屋から出たら2度と戻ってこられないかもしれない。

「えーと、すいません。僕今のところ1人で船内歩く自信ゼロです。暫く側にいてもいいですか?」
「へえ、貴様の口からそんな言葉が出るとはね?それより、どうなってる訳?」

まだリオにまったく説明していない事に気付いて、ナユは元の世界での話しを説明した。

「ふーん、そう。分かった。」
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ