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リオ・ナユ

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日常…群島諸国編



「・・・そろそろ起きなよ?」
「・・・ん・・・?」

珍しくリオに起こされ目を覚ました。

いつの間にか眠っていたようである。
目をこすって起き上がるが部屋の中は暗い。テーブルにあるランプのみの明かりのままだ。

「・・・暗いですけど・・・?」
「当たり前だ、ここは地下だよ?要は海の中なんだからね?」
「あっ、そうか・・・。よく起きれましたね?いつも僕より遅いくせに。」
「慣れない所だしね?眠りは浅いんだよ。僕はちょっと訓練の相手をしに行くから。君はどうする?まあ僕としては熱々の恋人らしい夜を過ごしたように思っててもらうのが都合いいから、昼くらいまで部屋にでも篭ってて欲しいところだけど?」

それを聞いてナユは赤くなり、ふざけんなと言おうとしたが、考えて思いとどまった。

確かに、この人とは恋人同士と思われている位の方が何かと都合いいかも知れない。
この際僕が清純派とかそういうのは、ここでは関係ないだろう。

「・・・分かりました。では昼に一度迎えにきてもらえますか?僕はまだ場所がよく分からないので。」
「いいよ?ふーん、何だか素直だね?」

そしてリオは、じゃーねと部屋を出て行った。
部屋を見るとテーブルにはパンと飲み物が置いてあった。

「・・・ほんとあの人って、よく分からないな・・・。」

とりあえず食べた。
別段何の変哲もない素朴なパンがとても美味しく思えた。

食べ終えると何もする事がなくなる。また眠る気にもならない。
本でも読むしかないか?
テーブルにある、多分リオが読んでいたであろう本を手に取った。

本読むのってあまり好きじゃないんだけど・・・何もせず座っているだけよりはマシか・・・。
そう思いつつ表紙を見た。

・・・・・読めない。
ところどころは何となく分かるが、多分古文であろう。
学校にも行っていない自分には到底読めたものではない。でもあの人はこれを読んでいる。本の途中にしおりも挟んである。

普段本を開いている所など見た事がない。
暇な時でも武器の手入れをしていたり寝ているかで、到底このような難しそうな本を読む風には見えない。

ただふとした時に、リオに知らない事はあるのだろうかと思うことはある。
歴史や兵法、挙句の果てには薬物関係の事であっても何でもよく知っている。
それをひけらかすのではなく、何かの拍子にサラッと言ってのけたり、やってのけたりして、ああ、こんな事も知っているんだと思わされるのである。

やはり英雄と呼ばれるだけはあるのだろう。
元貴族のようだし、昔は色々勉強したのだろう。
自分も今は軍主をやっているが、あまりの力量の差に、多少悔しくはあるが嫉妬や腹立ちは感じない。

・・・そういえばカイリは昔領主かなんかの所で小間使いの様な事をやっていたって言っていた。
今軍主としてどんな気持ちなのだろう。
昔と今(といっても僕ら的には過去の事だけど)だと変わったのだろうか?
機会があればケネスに聞いてみよう。カイリにはなるべく近づかない方がいいと思われる。
なんていっても元の時代のカイリも知っている訳だし、まずいだろう。

ナユは読む訳でもなく何気に本をペラペラめくりながら気付けば本とはまったく関係のない事を考えていた。


それにしても、さすがにあの殺戮魔でもこの世界では無茶な事はしていないようだなと思った。
まあ下手な事をして歴史が変わったり、自分が帰れなくなったりするのはまずい。
頭はいい人だからその辺わきまえる事は出来るんだろう。だったら普段からわきまえて欲しいとは思うが・・・。
昨夜の宴会でも、自分から見ればかなり人当たりの良い感じがした。
普段はあんなに無茶で意地悪なのに。

・・・意地悪といえば寝る前もからかわれたっけ?
ナユは顔が少し熱くなったような気がした。あんな事しておきながら途中で速攻寝るなんて。

・・・あんな、事・・・。

「・・・う、わあ・・・」

今度こそ熱いどころか自分でも真っ赤になっている事が分かった。

そうだっ!!
何度も、キス、されたっ!!

今更ながらに気付いた。
なんか、普通に受け入れてて、今の今まで意識していなかった事ないか?
まずい。
全然まずい。
頬どころの話ではない。マウス・トゥ・マウスじゃないか。
それをされて怒りもせず逃げもせずの自分って・・・。

もしや清純だなんて思っているが実はアバズレだとか?
てゆーかアバズレって男にも使う言葉なのか?
もしくは実はキスというのは自分が知らないだけで日常茶飯事、どこでも誰とでも出来るものだとか・・・?
いや、少なくともどこでもはないだろう、外で皆がしている所なんて見たことないし。

てゆーか誰とでもてのも無理じゃないか?
想像してみれば分かる。
ビクトールと・・・シュウと・・・ゲンゲンと・・・ガンテツと・・・ロンチャンチャン・・・と・・・。・・・やめよう、なんか気持ち悪くなってきた。
てゆーかなんで男ばっか想像してるんだ?
女の子としてるとこ想像すれば・・・って無理だ、なんか照れるしその子達に悪い気がする。

・・・話がそれてるけど、結局誰とでも、も無理なのでは?
リオ限定!?
ちょっと待て、それはおかしいだろう?ってあれ?なんか少しずつ話ずれてないか・・・?

ああ、もう止めよう。考えても仕方がない。

そう、考えても仕方ない。
どのみちキスしてきたリオだってリオじゃないんだ。
うみっていう少年で、ナユではなくソラという少年の恋人・・・。そう、キスしてきたのはリオじゃない・・・。

あれ?
なんか気分落ちてない?
まさか!!
いやいや考えない。

えーと、そう、架空の人物。
現実じゃなく架空の場所で、自分は架空の人間を演じていれば良い。
そう、自分は今、役者なんだ。矢でもキスでも持ってこいってなもんだ。そうなんだ!!

「何、本握り締めて気合入れてる訳?君は?」

ハッとしてドアの方を見た。
リオが立っていた。え?もうそんな時間!?
自分はまた何時間も色々考えて過ごしていたのか?

「え、あ、いえ・・・。あ、そう、その僕は今、役者なんだっていう気合を入れていた所です。」
「は?」
「えーと、だからほら、僕達今、うみとソラっていう人物なわけじゃないですか。あなたもきちんと四六時中うみでいてるようですし、その、僕も何も考えずに頑張って恋人役を演じようと、気合を・・・」
「ふーん、そう。僕も四六時中、ね・・・。そうだったかな?まあいいよ、せいぜい頑張って?」
「何ですかその人事風な言い方は。あなたもそうじゃないですか。」
「・・・へえ、気合入れて演じれば良い訳?恋人ってのを?ふーん、いいの?もう清純派とか言ってられなくなるよ?」
「・・・何を言って・・・。・・・・・。・・・!!」

なぜか一瞬怒っているように感じたが、それよりも途中でリオの含んだような言い方の意味に気付いて、ナユはまた赤くなった。
バカだよね?とリオにバカにされつつ2人は昼ごはんを食べに上に上がった。

料理はやはり魚料理が多かった。
とても美味しかったが、たまに不思議な食材があったりした。
そしてふと前にテッドが言っていた事を思い出した。
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ