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リオ・ナユ

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遠征…ティント編



「まだそのままかよ。」

遠征当日。
ビクトールがナユの姿を見て言った。

「はあ・・・。てゆうか病気やコスプレじゃないんです。寝て起きたら戻ってるとか、そんなわけないでしょう。」
「まあそりゃそうだが。ていうか今回はリオも行くのか?タンデムとか、珍しいな。ナユの格好にやられそうな野郎への牽制か?」

今回はまだ行った事のない場所へ行く為、ルックやビッキーの転移魔法が使えなかった。
依頼されてから2日たってしまったが、コウユウという少年の案内で竜口の村を越えてティント市へ行くのである。

おとついに城にやってきたコウユウは自分の兄弟分を助けて欲しい、と言ってきた。話をきくとどうもきなくさい。
ティント周辺にアジトをもつコウユウ達山賊は、王国軍に縄張りを荒らされていたが、その王国軍が撤退。ようやくせいせいしたと思ったところに気持ちの悪い軍勢が襲撃をしかけてきたというのだ。
それがどうもゾンビのようだということでビクトールはネクロードという吸血鬼の事を思い出した。
ティント市まで調査にいくべきだ、と提案するビクトール。
シュウは山あいに軍を出すのは危険だと言って勧めなかったが、ビクトールは強引にナユを誘ってティント市に向かおうとした。
コウユウの強い頼みもあり、結局ナユ達はそこへ向かう事になったのである。
とはいえ行ったこともない場所への遠征となるため、昨日は色々と準備がなされていた。

そして転移魔法が使えない為、移動は馬か徒歩となる。
ナユは最初、ナナミには残ってもらおうとした。
行った事もない場所だし移動が大変である。そしてあのネクロード。
だがナナミは、「あの変なおっさんをやっつけに行くなら絶対あたしも行く。」と言って聞かず、結局彼女を連れていくことになってしまった。

普段はナナミと一緒に徒歩での移動のナユが、戦場でもないのに乗馬しているというのも珍しいが、ナユを前にしてリオが一緒に乗っている姿はビクトール達も初めて見た。

「ふざけた事言ってると殺るよ?どうも軍主様はお疲れのようでね?もともと人数に入ってない僕がサポートしてるだけだよ。」

ほんとに殺りそうな勢いでニヤリとリオがビクトールに言った。
いやいや、そのサポート自体珍しいだろうが、と思ったがあまり突っ込まないでおこうとビクトールは思った。

「ていうか、恥ずかしいのでやっぱり一人で乗ります。」

ぼそっとナユがリオに言った。

「へえ。別にかまわないけど、貴様、その状態で一人で乗れるの?歩くのもきつそうだしね?」
「って誰のせいだと思ってるんですか!?」
「貴様の格好のせいじゃない?」

ふざけるな、と振り向こうとしたが下半身が思うように動かない。
うう・・・と唸り、頭をもたげるとともに耳がぴくぴく動く。

「まあ貴様はそうやって煽るのをどうにかすれば?」
「煽ってません!!ていうかあんだけしておいてまだそんな事!?だいたいそれならそれでもうちょっと分かりやすい反応でも示してくれませんか・・・。」
「ああ、その辺の奴らやカイリみたいに?この僕が?貴様、ふざけた事言ってると貴様も殺るよ?」

ああ、そうゆうところは相変わらずだ・・・ナユは遠い目になってそっと苦笑した。
だいたいそういう関係になっても実際のところリオが自分をどう思ってるのかがいまいち分からない。
自分がリオのものだ、と言ってはくれていたが、だからといって自分がリオを好きなように、リオも思ってくれているのかが分からないのである。

ただ、たまにみせてくれる優しさが、少しは期待してもいいのかな、と思わせてくれる。
今のこのタンデムも、もとをただせばリオがナユを離してくれなかったせいではあるが、一人で馬に乗るのも、ましてや歩くなどという事がとてもじゃないが出来ない状態を察しての事であろうと思われるし・・・。
そんな事を考えながらの移動だったが、休憩しつつも夕方になるころにはへとへとになっていた。
慣れない乗馬に昨日の行為。そしてタンデムのせいだと、ナユは思った。
ナユの背後からお尻にかけては小さ目のクッションが敷かれていたが、それでも体自体の密着度は高い。背後にリオの存在を絶えず感じるのはナユにとってそうとう落ち着かないものであった。
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ