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リオ・ナユ

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胸襟…ティント編



一方ナユのほうではその後夜、部屋に戻ると、またもやジェスが部屋の前で待っていた。
ていうか誰だ、部屋の位置教えたのは・・・。
ナユが見当違いの事を思っていると、ジェスは相変わらず、ナユを許さない事と、都市同盟は都市同盟の人間が救うべきだと吐き捨てるように言い放ち、ナユやナナミが返す言葉を待たずにその場を去って行った。
ナナミはそんなジェスの一方的な態度にいたく腹を立てている。
ナユはといえば、一体ジェスっていう人はなぜわざわざそれを、ご丁寧にもここで待ちぼうけてまで言うのか、とまたもや見当違いな事を謎に思っていた。
どうしても嫌味を言わないと気が済まないとか?
首を傾げつつ、ナナミをなだめてから部屋に入った。

今日もなんだか疲れた。あの吸血鬼はバカみたいだし、ジェスは困ったもんだし・・・。
道中を歩いていれば、変な奴らがニタニタと自分を見てくるし。
嫌な視線だった、思いだしてもゾワゾワする。絶対、この耳と尻尾のせいだとナユはため息をついた。
ルック全然来る様子ないし、ジーンさんはまだ調べてくれてないんだろうか・・・。
それに今日は結局リオを見かけなかった。確かに今回は戦闘要員の中に入っていた訳ではなかったが・・・でもいったいどこに行ったのだろう。
あの作り笑いですら恋しいと思っている自分を情けなく思いつつ、ため息をついてベッドに入った。

「・・・ナユ・・・」

どれくらい眠っていたのだろうか・・・?
声が聞こえてハッと目が覚める。起き上がれば、そこにレックナートがいた。

「よく頑張っていますね・・・。あなたの右手に宿った輝く盾の紋章は、ジョウイの持つ黒き刃の紋章と呼び合っています。それは運命の交わり・・・」
「・・・またあなたの言っている事が分からないんですが・・・。」
「・・・これから先、苦しい戦いになりますが、あなたのもとには想いがたくさん集まっている事を忘れないで・・・」
「いえ、だから・・・てゆうかあなたはジョウイのところにも行ってるんですか・・・って人の話を聞いて下さいよ・・・」

またもや何やら思わせぶりな事だけを言って、ナユが何か言っているにもかかわらず、途中でレックナートは消えていってしまった。
いったいいつも何しに来るんだ・・・?
まず言っている事がよく分からない上、わざわざ人が寝ているところを起こしてまで言う必要性も分からない。
ていうか人の質問にも答えてくれないし、もしやこれただの映像か何かを送ってきてるんじゃないだろうな?
変に起こされてしまったナユはため息をついて部屋を出た。

「・・・ナナミ・・・?」

部屋を出ると階段付近で窓の外を眺めているナナミがいた。

「あ・・・ナユ・・・起きてたの・・・?」
「起きてたっていうか起こされたっていうか・・・どうしたの?」
「あ・・・うん・・・ううん、なんでもないよ。」

ナナミは何かを言いかけてまたやめてしまった。やはり最近たまにおかしいとナユは思った。

「ナナミ・・・大丈夫?とりあえず部屋にもどろうよ、風邪、ひくかもだし。」

ね?とナユはナナミの肩をそっとささえるようにし、ナナミがあてがわれている部屋に送っていった。
部屋の中に入ると、じゃあ、と出ようとしたが、ナナミがまた口を開いた。

「・・・やっぱり・・・」
「ん?」

ナユは開けようとしたドアノブから手を離し、ナナミの方を向いた。

「や、やっぱり言っちゃう。ねえ、もう、やめようよ。」
「え?」
「なんでナユがこんな事する必要があるの?別にナユじゃなくたっていいじゃない。ビクトールのおっさんとか、シュウさんとかでいいじゃない。ナユがする必要、あるの?ナユが戦わなくちゃいけない理由なんてないよ。戦って、傷ついて、武器をふるって、人を殺めて・・・そんな事する理由はないよ。」
「・・・ナナミ・・・。」
「あのジェスって人が言ってた事、聞いた?都市同盟の人間・・・あたしたちはここの人間扱いすらされてないじゃない。そりゃあそうよね?だってもともとはキャロからきたんだもん。いくらキャロが昔都市同盟の土地だったっていっても・・・今はハイランドだもん・・・。」
「・・・。」
「ねえ、あたしたちってどこの人間なのかな?どこにも居場所なんてないのかな?でも、でもね、あたし、ナユやジョウイがいればそれでいいよ。たとえキャロに戻れなかったとしても、構わない。このままだと・・・このまま戦い続けたらいつかナユとジョウイが直接争う事になっちゃうんだよ?それでなくても、途中でどちらも命を落としちゃうかもしれないんだよ?あたしたち、まだ子供じゃない。なんでナユがしなくちゃいけないの!?」

ナナミは一気に言ってしまうと肩を震わしつつ顔を伏せた。
悲壮な叫び・・・ああ・・・ずっと・・・そう言いたくて悩んでたんだな・・・ナユは思った。

胸が苦しい。

ナナミに辛い思いをさせていた。一番大切な家族なのに。
どうしたらいい?もちろん自分だってたまに思う。なぜ僕が?と。だが自分は別にそれでも良かった・・・。したい、という訳じゃなく、僕しかいないなら、してもいいけど、そんな感じで始めた軍主だった。
このままナナミが言うように、何もかも投げ出して逃げてしまおうか・・・?

でも・・・。
今まで自分を信じてついてきてくれたたくさんの想いをどうしたらいい?
それをすべて投げ出して、裏切って、そんな状態でナナミと逃げて、それで自分はこの先ナナミを笑わせる事が出来るのか?
たくさんの・・・想い・・・

「・・・でも・・・やっぱり・・・ダメだよ・・・」

気づけばそう言っていた。

「ナユ・・・。」

ふとナナミがまた顔を伏せたかと思うと、次の瞬間にはニッコリした顔をあげて言った。

「あはは、だまされたーっ。嘘だよっ。言ってみただけ。ナユったらすぐ鵜呑みにするんだからー。だいたい今逃げたら、ナユ猫耳しっぽのままだもんね。」

そしてベーっと舌を出す。

「ナナミ・・・。」
「も、もう、ほんとにバカねー。あきれちゃった。あたし、ちょっとぶらぶらしてくるっ。大丈夫だから、あんたは部屋にもどって寝なさい。じゃあねっ。」

そしてナナミはナユが何か言う間もあたえず、部屋を出て行ってしまった。
ナユはハッとして自分も部屋を出たが、そこにはもうナナミはいなかった。まわりを見たが見当たらない。
ナナミが今はそうしたいと思ったのなら仕方がない・・・そう思い、うなだれながら自分の部屋に戻って行った。
すぐに階段をおりていたナナミは、踊り場でビクトールに会った。

「・・・よぉ。悪ぃな。聞いちまった。」
「な、なによおっさん、いい歳して立ち聞き?」
「悪ぃ。・・・よく、がんばったな・・・。」

ビクトールに静かに言われ、ようやく初めて、ナナミの目に涙があふれてきた。

「な、なによなによ、分かったような事言って、・・・ちょ、ちょっと胸貸しなさいよぉ。」

そう言うと、ビクトールによりかかり、肩を震わせた。
ビクトールは、まるで父親のように、優しくそんなナナミの背中をポンポンと軽くたたきながらあやしていた。
そんな状況も知らず、だが辛い気持ちのまま、ナユは部屋に戻った。

「おかえり。」
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ