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a hose and a queen

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Buon compleanno.


 コンコンコン、とドアが性急にノックされた。部屋の主のリボーンはちょうど朝食を終えて戻ったところで、一人掛けのソファで新聞を広げており、ノックに反応したレオンがその左肩でちょろり、と動いた。
「どうぞ」
 新聞から顔を上げずに言うと、ドアが開いて山本がひょいと顔を見せた。
「ぶおん、こんぷれあんのー」
「…発音が間違ってるぞ、30点」
「手厳しいのなー」
 と、さして悔しがる様子もなくドアを閉め、ソファのすぐ隣まで来るとそこでようやくリボーンは新聞から目を離した。
「出かける前で悪いけど、これ、プレゼントなのな」
 そう言うと山本は花飾りに作った黄色いリボン付きの長方形の箱を差し出した。Grazie、と答えて受け取り、包みを丁寧に開けていく。
「今、行ってきたのか?」
「いや、昨日からあったんだけど…持ってくるの、忘れてさ」
「だからさっき出て行ったのか、しょうがねぇな」
 悪ぃ、と言って苦笑する山本に、リボーンも箱を開けながらちょいと肩を竦め困ったように笑う。箱の中身は、光沢の美しい薄いラベンダー色のネクタイだった。小さな黒い水玉柄が入っているなと、よく見るとそれは藍色の色で縫い取られた猫であった。リボーンはそれを手に絡めとると、目の高さまで上げた。
「……山本、俺はサラリーマンじゃねーぞ。威厳てもんが…」
「でもカワイーだろ?」
 ちらりと横目で見ると、山本は満面の笑みで「して見せろ」と訴えてきている。リボーンは視線をネクタイに戻すと、またちょいと肩を竦め、瞬く間に今しているネクタイを解きプレゼントのネクタイと締め替えた。そうして襟と形を整えるとソファから立ち上がり、90°回転して、
「どうだ、似合うか?」
 と胸を聳やかして見せると、山本は満足そうに頷いた。
「似合う似合う、カワイー」
「俺はいつでも可愛いぞ」
「はいはい」
 そうして、ふん、と鼻から息を吐くとおもむろに締めたばかりのネクタイを外し、元のネクタイを締め直した。顔にクエズチョンマークを張り付かせている山本の前でプレゼントのネクタイはきれいに元の箱に納められ、リボーンはそれをクロゼットの引き出しに入れてしまった。
「え、締めておいてくれないのか?」
「俺がこれから出かけるのは知ってるだろ」
「持って行けばいいのな」
「そうしたいのは山々なんだがな、お前から貰ったばかりのものを連れて行きたくない」
 そう言ってリボーンは、先程まで読んでいた新聞の記事を山本に突きつけた。しかしイタリア語で書かれたそれは山本にはまだ読めず、ただ掲載された写真から、あぁ危険な仕事なのだ、と理解するだけだった。
「山本」
 名を呼ばれ、はっとして記事から目を離すと、カバンとボルサリーノを手にしたリボーンがすぐ隣に立っていた。
「辛気臭い顔をするな、他にすることがあるだろう」
 他に?と尋ねるように小首を傾げると、リボーンはわざと不機嫌そうな顔を作り、ちょいちょいと自分の唇を指差した。


2008.10.13 SC/O0


作品名:a hose and a queen 作家名:gen