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朱璃・翆

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runaway



「ったく、さっさと片付けなよね、このクズが。」
「・・・。」

俺は黙ってテーブルの上の食べ散らかったごみを片付け始めた。

俺を睨みつけていた娼婦の1人はフンと鼻を鳴らすと化粧を続けた。

ここは売春宿。
それも変態共の色々な要望を満たせるようにと色々な商品(人、道具)が取り揃えられている非合法な所であるが、対象が金持ち相手の為ずっとまかり通ってきている。
所詮世の中は金次第という訳だ。
客は皆すべてどこぞの貴族や将軍など、地位の高い者ばかりだが公に満たせない歪んだ欲望をここに満たしにくる最低な奴らばかりだ。

だからと言って商品である娼婦や男娼も同情に値するような奴らなんていない。
確かに無理やり売られてきたような奴もいるが、ここにいるのは金の欲にやられた、金の為ならなんだってする商品ばかりだ。

俺を産み落とした女もそういった者の1人だと聞いた。
顔は上等だが中身の腐った、くそ女。
自分が孕んでいる事に気付かず、気付いた時にはもう降ろすという段階は過ぎていたらしい。
だからといって体を大切にする訳もなく、孕んで膨らんだ腹に興奮するような変態を相手にしていたらしい。

・・・そう、金の為に。

そしてそれで腹の中の俺がダメになるならそれはそれでもうけものと言っていたそうだ。
俺を産んだせいで結局死んでしまったらしいが、まったく感謝する気にもなれない。

ただ俺が生まれても暫くは生きていた『母親』は、最低限の事はしてくれていたようだが。
要は餌を与えてくれていたってわけだ。勿論客の前でな。

その女が死んだ後、俺はそのまま捨て置かれるところだったが、この館の主は女の容姿を受け継いだ俺に目をつけた。
そう、いい商品になると踏んだ訳だ。

俺は結局その館の下僕として育てられた。
我も分からない頃からこき使われ、口が利けるようになる頃にはすでに客を取らされていた。
もちろん俺の懐にはなにも入らない。すべて売り上げは主のもの。
こんなに都合のいい商品はなかっただろう。

俺の容姿は商品たちの中でもずば抜けており、変態共の間でも人気商品だった。
どんな事だってさせられた。
いっそそのまま殺して欲しいと何度思っただろうか。
そして商品の間では俺はやっかみの対象でしかなく、誰も温かい声をかけてくれるような者などいなかった。

俺はそんな中でずっと生きてきた。
いや、生きていた訳ではないな?
ただ、あるだけだった。

そんなある日、俺の中で何かが粉々にくだけるような、闇雲に叫びだしたいような、爆発するような感覚があふれ出した。
多分今まで少しずつ培ってきた狂気が俺という容器いっぱいに溢れてしまい、こぼれだしたのだろう。

俺は道具の中にあったナイフをつかむと今まで俺を貪っていた客に切りつけた。
その客の目が恐怖でいっぱいになるのを見て、俺は心底快感に打ち震えた。
我を忘れ、気付けば目の前にはただの肉片と化したかつての生き物がころがっていた。
叫び声に気付いて誰かが駆けつけてきた。
俺はそいつも切り殺し、部屋を飛び出した。ただ主をめざして。邪魔してくる者はすべて切り殺していった。
どこにそんな力があったのだろう・・・。
6歳か7歳位のただの子供は今や殺人鬼となり、その館の主のもとへ駆けていた。


主を殺った後は俺は気が抜けた。
あんなに俺をこき使い、ときには自分も俺を貪り、客に好きなようにさせていた悪魔は情けないほどの怯えぶりだった。

こんな愚かなモノに俺は・・・。

気付けばずたずたに切り刻んでいた。
そうして暫く放心していたが、大勢が駆けつける音に我に返り、俺は逃げ出した。
途中何度か危なかったが、ぼろぼろになりながらもなんとか俺は逃げ切った。

ただ人里離れた所に館はあった為、結局森に迷い、もうどうとでもなれとその場でばったり倒れ込み、そのまま眠ってしまった。
作品名:朱璃・翆 作家名:かなみ