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カイトとマスターの日常小話

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四月馬鹿






「マスターなんか、大嫌いです」


一曲歌い終えたカイトが唐突にそう言った。一瞬、何を言われたのか解らず、俺はカイトの顔を見やる。


「嫌い」


カイトはもう一度、そう言った。


 嫌い。


カイトからそう言われたのは初めてで。いつもなら、ウザいくらいに「好き」、「大好き」と抱きついてくるクセに一体、何事かと思う。
(…嫌われるようなことをしたか?…言ったか?)
そう思うが思い当たるフシなどあるはずもない。カイトが不快感を露にするのは俺が資料を引っ張り出して、片付けずに放置しているときだけだ。…今日はまだ、散らかしてないはずだが…。そう思いながらどう反応したもんかと思い、視線をさ迷わせる。カレンダーが目に入る。


 今日は、4月1日…エイプリルフールか…。


(…ま、関係ない…よな…)
そう思い、カイトを改めて見やる。カイトは俺の様子をそわそわと伺っている。それにピンっとくる。カイトの「嫌い」は嘘だ。…ってか、エイプリルフール知ってたのかよ。それにしては性質の悪い冗談を言ってくれる。俺は傷ついたぞ。大事に思ってる相手に嘘でも「嫌い」だと言われたくない。
「そうか。じゃあ、一緒にいたくないよな」
俺がそう言うと、カイトはえっと目を見開いた。
「丁度良かった。新しいボーカロイドを買おうと思ってたんだ。お前がいるからって思ってたけど、お前、俺と一緒にいたくないんだろ。お前を欲しいって奴がいるから、そいつにお前を譲渡して、俺は新しいボーカロイドと暮らすよ」
努力して出来るだけ淡々と冷たくそう言い、カイトから目を逸らし、背を向ける。その瞬間、背中に衝撃が来た。…危ねぇな。そう思うが予想通りの反応過ぎて、笑ってしまいそうだ。
「マスター、嘘ですよね?僕を譲渡するって」
「お前、俺のこと嫌いなんだろう?」
顔は背けたまま、そう言う。顔を見られたら嘘がばれてしまいそうだ。カイトの回された腕にぎゅうっと力が籠もる。
「嫌いな訳ないです!大好きです!!」
「じゃあ、何で「嫌い」なんて言うんだ?」
回された腕を掴む。カイトを見やるとカイトは涙と鼻水で顔をぐしょぐしょにしていた。…汚い顔だな。まったく泣くくらいなら、下手な嘘吐くなっての。そう思いながら、デスクのティッシュで顔を拭いてやる。カイトは嗚咽を漏らした。
「…今日は、エイプリルフールで、マスターに嫌いって言ったら、マスターはどう反応するのかなって、思って…、嘘吐いてごめんなさい。嫌いにならないでくださ…い」
なる訳、ないだろ。馬鹿。でも、ちゃんと言っておかないとな。
「嫌いって、お前に言われて傷ついた」
「…ごめんなさい」
「…まあ、直ぐに嘘だとは解ったけどな。…でももう、こんな嘘は吐くなよ」
「あい」
頷いたカイトの頭を撫でてやる。子どもに嘘を吐かれると辛いもんだな。でもこうやって、成長していくのかね。感慨に浸っていると控えめにシャツの裾を引っ張られた。
「…マスター」
顔を上げたカイトがじっと俺を見つめた。
「何だ?」
「マスター、僕を譲渡したりしないですよね?他のボーカロイドを買ったりしないですよね?」
不安そうな顔で訊いて来る。俺の言ったデタラメを信じているらしい。
「…カイトが俺にまた嘘を吐いたときにはそうするかもな」
「もう、嘘なんかつかないです。だから、絶対、駄目です!!」
「はいはい」
「マスター!!」
いい加減な返事にカイトの垂れていた眉が釣りあがる。存外に嫉妬深い。…カイトはマスターへの依存度が高いと聞いていたが…。アンインストールな展開は御免だしな。
「エイプリルフールの嘘だよ。譲渡予定もボーカロイドを買う予定もない」
「…うそ?」
「お前が可愛くない嘘を吐くから悪い」
「…うーっ、マスターのばか」
カイトはむうっと眉を寄せ、言うに困ってそう言うと俺に抱きついた。コイツが親…もとい、マスター離れ出来るのはいつの日か…。まあそんな日、来なくてもいいが。俺はそう思いつつ、カイトの頭を撫でてやるのだった。




オワレ…。