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For one Reason

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Phase12.接近



 資料をどさどさと目の前に落とされて、Lと月は嘆息した。
 置いた張本人の真紀は得意そうな顔でどうですかと微笑んでみせる。
「これ、いつから」
「これは、応援がくるのが楽しみです」
「・・・そうだな」
 Lが急遽呼び寄せた(らしい)増援を盛大に活用する機会があるだろう。
 正直、状況証拠には十分すぎるほど十分なデーターを真紀はそろえ上げていた。
「着目のきっかけは株価?」
「まあそういうことで」
 にこり微笑んだ真紀にそれ以上突っ込むのはやめておいたほうがいいなと直感的に思って、月はぺらりと書類をさらにめくっていく。だんだんと資料を読むのに没頭して、隣のLの態度には気がつかなかった。
 気がついたのは、それがとてもとっても接近してからだ。
「う、わっ!?」
「月君」
「ち、近い! 近いって!!」
あわてて叫んで身を引くと、さらにずずいっとその顔が近づいてくる。
お前の顔はアップでいきなり見ると心臓に悪いんだ!!
「月君・・・横顔もとても魅力的です」
 ええいもう。
「竜崎っ、仕事をしろ仕事を――んっ」
 さらに近づいてきた竜崎に唇をふさがれる。
 ゆっくりと入ってきた舌が絡まり、口腔を犯す。
「ふっ――ぁ、やめ・・・んっ」
 カシャリ。
 カシャカシャ。
「!!! 離れろ竜崎ーっ!」
 思いっきり相手を突き飛ばして、月は口をぬぐいながらシャッター音のした方向を見る。
「あらもったいない」
「何撮ってるんですか!!」
「いいじゃない、売らないし」
「売られてたまるか! ってかぼっしゅ」
「月君、甘いわよ、竜崎のコーヒーより甘いわ!」
 高らかに言って真紀は笑った。
「この部屋の監視カメラには全て収まっているのよ! 動画で!」
「ぐっ・・・」
 ここで真紀のカメラを取り上げても、無駄なのだろう。
 だがしかし、そこは気分の問題である。
「そのカメラだけでいいから!」
「ちぇー」
 ドーゾ、とやけにおとなしく渡したことを不審に思いつつ、月は受け取ったカメラをパソコンの横に置く。
「あ、取り込むんですね」
「違う!」
 Lの言葉を一蹴し、月は早速画像を消し始める。かしゃかしゃと消していくたびに隣にのLの耳と尻尾垂れ下がるのはなぜだろう・・・いや、耳と尻尾は絶対に幻覚なのだが幻覚とは思えないリアルさがある。というか表情がいけない。
「後で真紀さんにもらうんだ・・・」
「もらうな!!」
 振り向いて叫べば、Lは不満そうな顔でジトーっと見上げてきた。
「じゃあリアルで観察して楽しむことにします」
「は? どういう意――」
 にゅうぅんと音がしそうなモーションで顔を近づけてきたLが、いつのまにやら肩に手をかけ唇をちゅーと突き出しているその(ある意味)怖い情景に、さしもの月も一瞬思考が停止した。だがそこはやはり夜神月というか、Lと過ごすうちに体性がついたというか、とりあえず正常な思考を取り戻すことに成功した。
「ちちち、近寄るな!」
「ひどいです・・・私のことを愛しているというのは嘘だったのですね・・・」
「まあ、月君ってば竜崎の純情な心をもてあそんだのね!」
「何が純情だ! ていうかどうして真紀さんにまで言われなきゃいけないんですかっていうか、そもそもあなたが元凶でしょうに!」
 あらまあ、と不思議そうな顔で真紀は首を傾けた。
「私の何が元凶なのかしら」
「月君はテレ屋さんなんです。次からシャッター音がしないカメラで撮影してください」
「違うから! ああもうっ、僕は休んでくる!」
 バンッ、とテーブルを叩いて立ち上がった月。
 その手首にはもう手錠はない。
「・・・やはり手錠はこう、いろいろ便利だったと思うんです」
 去っていく月を見ながらLは名残惜しげに呟いた。
「外したのはあなたでしょ」
「だって、月君の手首に痕がつくのは嫌だったし。それにもうつないでおく必要性はありません」
 彼は死のうとした。
 Lを殺さないために。
 たとえ、月が言ったとおりに、彼がいつかキラになってLを殺そうとするのだとしても、今の月は間違いなく夜神月だ。
「いつ月君がキラになるかわからないのに、豪気ね」
「わかりますよ」
 当たり前じゃないですか、とLはわずかに目じりを下げる。その変化は本当にわかりにくかったが。
「なんたって私は月君のエキスパートなんですからね!」
「よっ、専門家!」
 ドーナッツを複数突き刺したドーナッツ串を振りかざし、Lはいきなり声を張り上げる。調子にのって真紀もパチパチと手を叩いてはやし立てた。
「月君オタクと呼んでください。まさに私はスーパー月オタクなのです」
「スーパーサイア人のように!」
「夜神月カルトクイズだったら100%答える自信があります」
「では夜神月君が小学校で唯一満点を取らなかった教科は!」
「それは小学校四年生のときのこく」
「何でその話を知ってるんだお前は!!!」
 バシン、と扉を開けたのは月だった。
「月君、寝たんじゃないんですか」
「L、絶交」
「!? そ、そんな、ただのおちゃめな冗談じゃないですか・・・月君! 月君! らいとくんっ!!」
 ふいと背中を向けて去ってしまった彼の背に手を伸ばし、ばったりと床に倒れたLの横にしゃがみこんで、くすくすくすと真紀は笑う。その笑い声にLは何とか起き上がり、膝を抱え込んでびすびすとべそをかきだした。
「らいとくん・・・らいどぐん〜」
「・・・けしかけたのは私だけど、あなたほんとにほどほどって言葉を学んだほうがいいと思う」
 さしもの真紀もなんとも言いがたかったのか、とりあえずそうとしか言ってくれなかったので、Lはよりいっそう落ち込んだ。
「真紀さんも意地悪言うんですね・・・わかりました、もういいです。私は世界最高の探偵でも最低の男なのです・・・」
 ぐしぐしと自分の顔を袖で拭いて、ふらりとLは立ち上がる。
「ちょっと、竜崎」
「昔聞いたアドバイスです・・・追っても張ってもだめな相手は力ずく」
「え、それって犯罪者を捕まえるアドバイスじゃ」
「実践してきます」
 真顔で言ったLが出て行くや否や、その言葉を理解した真紀は顔を輝かせて即座に全スクリーンにLの寝室を表示させた。


 月はため息をついて、ベッドに腰掛けて、頭を抱え込んでいた。
 何もあんなところでべろチューしなくても。しかもそれ写真に撮られたし。今日は月とLと真紀しかいないからいいものの、あんなこと父親の前でやられたら。
 ・・・死にそうだ(父が)
「大体、真紀さんも真紀さんだよ・・・」
 感謝はしている、たぶん。いろいろな細かいトコを思い出せば彼女のおかげだと思う。だけど。
「月君」
「・・・絶交って言っただろ」
 勝手に入ってきた(ここはLの寝室なので当然なのだが)彼を睨むと、逆に睨み返された。
「それは許しません」
「許しませんってお前」
 かちゃ、と音がした。寝室の鍵を閉めた音だ――今までになかったことだ。月は音を聞いて初めて鍵があったことを思い出したぐらいだ。
「月君は忘れています」
「何を」
「――私は、Lです。私が君がキラだといえば、たいていの人は信じます」
「お前・・・」
作品名:For one Reason 作家名:亜沙木