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For one Reason

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Phase14.消去



 火口はデスノートをたたきつけた。信じられなかった。ありえなかった。
 あの海砂の新しいマネージャーの名前は大田みつえ。だがそれは本名ではない。彼女の本名は遠藤真紀。わざわざプロダクションにまで接触してチェックした。それなのに彼女はまだ生きている。先ほど電話があったばかりだ。からかうような声で。
『おかげであなたが黒と確定したわ。そろそろさくらTVでもみてみたら?』
 あの女の言うことに従うのは酌だったが、火口は仕方なくテレビをつける。むしゃくしゃした気分は晴れない。なんだあの女、本籍でもみなくてはいけないのか。もともとの芸名だったのをそのままマネージャー名に転向させたのか。
「な・・・なんだこれは!!」
 思わず絶句した。それはさくらTVの特集。
 特集内容はキラ。そしてその真相を知る人間へのインタビューの生中継。一瞬たおれた衝立から見えたその姿は見覚えが有る。あの海砂の元マネージャー。
 絶句した男の手の中の携帯が鳴る。半ば無意識に火口はそれに出る。
『ねえ、あれ、海砂の元マネージャーよ』
 まずいんじゃない? くすくす笑う声に火口は携帯電話を握り締めて家を飛び出した。
 あの男が生きていた、名前を念のために書いて始末したはずだったのに。こうなればもう手段は選んでいられない。あの男のほうを殺しても女のほうが残っている。
 殺すしかない。
 たとえ自分の寿命を半分にしたとしても。
 火口はアクセルを踏み込みながら呟いた。
「取引だ」
『・・・わかった』
 火口の目に死神の目が宿る。強烈にアクセルを踏み込みながら火口はプロダクションの事務所に向かう。警備員にはヨツバの社員証でアッサリと通され、階段を駆け上がる。
 ファイルをあさること十数分、火口は口汚く罵ってファイルを床へぶちまけた。
「くそっ! ない!」
 あの男のマネージャーのファイルがない。死んだことになったから抜かれたか。しかし火口の手はもう一つのものを掴んでいた。あの女のファイル。確かにあの女の写真。その上にかぶって見える奇妙な数字。そして名。
―――遠藤真紀。
 ノートを捲る。そこに書かれた名前、それはたしかに遠藤真紀。このノートに名前を記された人物は四十秒後に死ぬ。確実に。絶対に。それがデスノートだ。
「くそっ!」
 舌打ちして火口は身を翻す。どういうわけかあの女は死んでいない。かき間違えたか、否、間違えてなどいない。ならばなぜ、どうやって、どうして、なぜ、なぜ、なぜ!
 あざ笑うように電話が鳴る。
『急がないと、彼は話してしまう。ヨツバも終わりね』
 うふふふふあははははは、と高らかに響く声に火口は歯軋りをする。いらなくなった携帯電話を床にたたきつけて外へ出る。アクセルを限界まで踏み込んで、さくらTVのスタジオへ向かった。
 そこで冷静になる。あの女の姿はあの日以来見ていない。携帯電話からの声は似ているが同一人物とは限らない。そうだ、あの女はすでに死んでいる。電話をかけているのは別人物に決まっている。
 だがさくらTVのほうは捨て置けない。確かにあの男なのだから。
 この死神の目があれば最強。絶対に負けない。すぐにあの男を処分する。
 いっそうアクセルを踏み込んだ火口の車に、白バイが接近してきた。


 ヘリの中で真紀は息を潜めて最大限に集中していた。火口は死神の目を得た。彼の荷物にはデスノートが入っている。あの男は必ず口を割るだろう。それだけは。
 デスノートは海砂が所有し月が所有しレムへ託されたもの。アレに触れれば月は記憶を取り戻す。そして彼はそのまま火口を殺す作戦があるに違いない。おそらく何処かにノートの欠片を。
 そう踏んでLをたきつけ調べさせた結果、彼の腕時計には仕掛けが施されているのが判明し、真紀はノートの欠片を抜き取った。だから月はノートを手にしてももう火口を殺すことはできないはずだ、たぶん。
 しかし記憶が蘇れば、たとえ一瞬でも、それは彼に影響を及ぼすだろう。そしてノートの存在が知られれば事態収拾が困難になる。
 避けなくてはいけなかった。それだけは。
「いた、火口だ!」
 月の声にLは地上を見下ろす。
「ワタリ!」
 Lの声に真紀の隣に座っていたワタリが引き金を引く。正確無比な軌道を描いた銃弾に撃たれて、ポルシェは回転しながら壁にぶつかる。
「く、くるなぁ!!」
 叫んで火口は銃を取り出し、それを自分の米神に当てた。
 さすがに警官たちも戸惑ってしまう。自分の命を人質にとって、どうする気なのだ、この男。
 あまりにみっともない火口を、真紀は冷たい目で見た。
(・・・あんたは、生かしておけないの、ごめんね)
 余計なことを吐く前に、ノートの存在にLが気がつく前に。
 抹殺しなくてはいけない。
 真紀は。
 手の中のメモを握りつぶす。
火口葉一
○月×日 **:** 拳銃の引き金を引いて暴発し それが車のガソリンに飛び火して爆発、焼死。
 銃声の代わりに爆発音。
 駆け寄る警官達。しかし彼らの行方はガソリンを餌に広がった燃えさかる炎で阻まれる。それをLは呆然と見ていた。手掛かりが自ら消えた、こんなに近くで、これほど追い詰めたのに、火口は死んだ。殺し方を胸に秘めたまま。
 目の前の火球が膨らみ、響いたのは大きい爆発音。それは車をガラクタのように空に舞わす。
「くそっ・・・!」
 隣で月が低い声を漏らす。彼の手が窓を打ちつけた。
 無念だろう、ここまで必死に追い詰めたキラが死んだ。
 二人は警察官が火の海からなんとか火口を救い出そうと無駄な努力しているのをただ見ていた。だから彼らは気がつかなかった。いや、そうでなくとも気がつけやしなかっただろう。
 白い死神がノートを片手に、闇夜へ溶けていく様子など。
 それを見ていたのは真紀だけで、だから彼女は視線を一瞬だけ赤く燃える空へと向けた。しかしすぐにその視線を降ろす。
「終わった・・・」
 呟いたその一言の重みは、ドットにしかわからない。
『ああ、終わったな。お前の勝ちだ、真紀』
「ええ、終わりました・・・こんな形で終わるとは・・・正直予想外です」
 Lが呟く、月は感情のままに叫んだ。
「こんな・・・こんな終わり方あってたまるか! 竜崎、ここをあけてくれ僕も外に」
「いけません」
 それにはきっぱりと答えて、Lは操縦桿を握る。
「竜崎! 火口はまだ助かるかも」
「無駄です」
 ガソリンの海の中で爆発を受けた。火口は生きていない。推定も何も必要はなかった。Lは火口の生には執着も興味もない。ただ、キラの殺害方法が知りたかっただけだ。しかし月は違っていた。
「見捨てられるか!」
「ダメです」
 操縦桿を動かす。ヘリコプターは離陸する。
「竜崎!」
 月がLに食って掛かった。しかしLは操縦桿をブラさず、かわりに静かに語りかける。とても静かに、駄々っ子に言い聞かせるように。
「月君、冷静になってください。火口はもう助からないし、あの分では車の中にあった物証は全滅でしょう」
「だから、まだ」
「彼の自宅は手付かずです。ウェディも潜入が困難だった。なにか手掛かりがあるかもしれません」
作品名:For one Reason 作家名:亜沙木