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For one Reason

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Phase15.終局



「信じられない……」
 計らずとも、Lと月は同時につぶやいた。
「つまり、こういうことですか」
 キラの力は、人を渡る。
 そして、その力を振るっていた間の記憶は――ない。
「間違いない、と思う。これで……七人目だ……」
 局長の沈痛な声に、それなら、と月が声を搾り出す。
「竜崎は、正解だ……第一のキラは、僕だ!」
「月君!」
「大量の犯罪者を殺したのも、FBIの人を殺したのも、美空さんを殺したのも、僕だ!」
 ガタリと音を立てて立ち上がり、月は絶叫する。
「月君、落ち着いてください、そのとき貴方は操られて」
「それでも僕なんだ! 大勢の人の命を、おもちゃみたいに奪ったのは僕なんだ!!」
「月君っ」
 抱きしめようとしたLを拒絶して、月は両手を壁に打ちつける。
 キラを追いかけて、火口を捕まえた。そのすぐ後に、キラは復活した。
 真紀がつぶやく「キラの能力は、人をわたるのかしら」と。
 その線で調査して、第一のキラを一人目とした場合、すでに七人目のキラが捕縛されていた……
 どのキラも(火口以外)逮捕された時には記憶をなくしていた。だから、月が悩んでいたのも無理がない。
「月君……貴方は無実です。これは、伝染病のようなものです……」
 手を必死に伸ばして、Lは何度も繰り返す。
 正義感の強い彼にとって、どれほど「自分はキラだ」ということが堪えていたのだろうか。そうではないと慰めたいが、それはLにとっても真実と映る。何より自分の推理がたたき出した答えだ。状況証拠のみだが証拠もそろっている。否定する要素はどこにも、ない。
 疑惑は数%などと言ってはいたが、夜神月と弥海砂の実質疑惑は90%。そうでなければ監禁などという違法行為を断行などしない。
「貴方は、確かにキラだったこともあった……けれど、どうしようもないことだった」
「僕は、僕はっ」
「……一度、落ち着きましょう。皆さん、申し訳ないですが」
「あ、ああ。かまわない、残りはこちらでやっておく」
 局長にすみませんと小声で言って、Lは月にもう一度手を伸ばして、服の裾を掴むと歩き出す。
「ワタリ、なにか飲み物を」
「はい」
 引っ張るようにゆっくりと歩きながら、二人で使っている寝室に入る。
 表情の見えない彼をそっと座らせてから、ゆっくりと顔を近づけてその目を覗き込む。
「泣かないでください、月君」
「泣くわけ、ないだろう」
 手を振りほどこうとしたのを抑えて、Lは乾いた頬に指を滑らせる。
「仕方なかった、んですよ。貴方の所為ではないんです」
「でも、僕は――僕は、いったい何人の人を殺したんだ、L……」
 そのキラの「力」が。
 もしも、夜神月から生じたものだとした、ら。
「何人の人の人生を狂わせて」
 何人の人を、悲しませたんだろう。
 極悪な、犯罪者ばかりを裁いているならわかる。
 それは確実に悪とはいえないだろう。
 けれど――自分を追い詰めようとしているからって、何の罪もない人間を殺すのは、悪だ。
「僕は、怖い、竜崎」
 もしかしたらまた。
 キラになってしまうのではないだろか。
「大丈夫です、そのときは殴ってでも、月君に戻してあげます」
「……殺して、くれ」
 その時はきっと、死にたい気分だろうから。


――殺して、くれ。
「……そうはさせないわ、夜神月」
 モニタールームでそれを見ていた真紀は拳を握って、呟いた。
「そうはさせるものですか」
 真紀はデスノートで人を殺したことがなかった。唯一の例外が火口となった。真紀自身が手を下さなくてはいけなかった。これはある種のけじめだ。
 彼女は神の策を切り崩した。ある種の侘びでもあった。
「あなたは生きるのよ」
 彼を、彼は、Lとともに歩むべきだと思ってしまったから。
『これでよかったのか』
 レムは今、どうしているだろうか。そろそろ死神界へ帰っているのだろうか。彼女にはずいぶんと過労させた。しかしこれで完全に夜神月と弥海砂が罰せられる可能性はなくなった。無差別に移って行く「病」であるとしたら。そうだとすれば誰もがその対象になりうるのだから。
 七人目のキラがつかまった。七、それは意味のある数字だろう。ここで打ち止めにするのが妥当だ。
「さようなら」
 事件は終わった。
 初代キラ――夜神月の策は完全に消えた。すでに彼の持っていたデスノートも海砂の持っていたデスノートも地球にはない。機能させなくするならばパズルのピースをひとつ外せばよかった。だが根本から存在を抹消するにはこれしかない。
「……私は、頑張った」
 自分で自分を讃えて、真紀は椅子から立ち上がった。
 翌日にはもう、彼女の姿は何処にもなかった。

 ただ二週間後に、一通の手紙がL宛に届いた。

 開いた手紙を黙読していたLが、それを机の上に置く。
「竜崎、真紀さん、なんだって?」
 ベッドに腰掛けていた月に尋ねられ、Lは振り返る。封筒に戻すことはしない、月に見られてもそこはかとなくは問題でもそれほど問題ではない。多分。
「月君と元気にやれという内容です」
「あの人は……」
 ため息をついた月から少し離れたところからベッドの上に乗る。腰掛けるというおとなしいことはしないで、Lは月のところまで芋虫のごとく這っていくと、ぐいっと後ろからのしかかった。
「月君」
「重いよ竜崎」
「今日で監視カメラは全部切りました」
「今まで監視してたのか……」
 最悪だぞお前、とジト目でみられてLは何を言っているのかといわんばかりに首をかしげる。
「マイフェア月君DVD集を作ろうと思って」
「つくるなンなもん!」
 叫んだ月の唇をLは奪う。んう、と鼻に抜ける声を出して月はLの舌に自分の舌を絡める。くちゃくちゃと唾液の絡まる音をたてながら、月はLの背中に手を回す。
「りゅ、う、ざき」
 かすれた声にLは月の髪を撫でる。彼の背中に同じように腕を回しながら、器用にもベッドの上に押し倒す。
「ちょ、待」
「待ちません。先日でキラ事件は集結したと判断されました」
 だからもう仕事は終わりです、とLは言って月の首に口付ける。
「んっ……だ、だから」
「私はすぐに日本をたちます。次の依頼があるのです」
「……そうなのか」
「はい、だからしばらく会えません」
 そうか、と瞼を伏せた月の目じりにもキスをする。パジャマの間から手を入れて、肌に指を滑らせた。
「本当は連れて行きたいです」
「僕もついていきたいよ。お前一人にすると色々不安だから」
 せめて一人で靴下ぐらいはけるようになってからじゃないといい加減ワタリさんがかわいそうだ、とずっぱり言われてLはすねたように口を尖らせる。
「そんなこと言う月君はこうです」
「んなっ、お前何処……って言うか、まずやることがあるだろうその前に!」
 声を荒げた月にLは手をぴたりと止めて顔を見る。紅潮した月の綺麗な顔をうっとりと見つめてから、そうでしたと手を引いた。姿勢を起こしたLに月はあからさまにほっとした顔を見せる。
「そうそう、やっぱりさこんな明るいところじゃ」
「はい、忘れていました」
作品名:For one Reason 作家名:亜沙木