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レイ・イチ ~けったいなお人は好きですか~

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甘い日



この日がきやがった。
イチはそう思った。

チョコレートの日。

城の中でもなんだか浮かれ気分な様子がただよってくる。
まあ、楽しそうで何よりなんだが・・・。

「イチー、あーようやく見つけたぁ。」

向こうから満面の笑みでナナミがやってきた。
まあ、隠れているわけではなかったけど、見つかってしまったか、と少しギクッとした。

「はいっ。これっ。」

ナナミがニコニコとしながら綺麗に包装された包をイチに手渡した。

「ああ、ありがとう、ナナミ・・・。」

イチは複雑な思いでそれを受け取る。

「じゃあね。他にも渡す人、いるからー。」

ナナミはそう言って手を振りながら走っていった。
イチはナナミが走っていった方向に手を合わせる。

「・・・他の犠牲者は誰だろうな・・・。ま、いいか。ナナミが一生懸命作ってくれたわけだし。」

イチはそうつぶやくと歩き出した。
途中幾度となく声をかけられ、チョコレートを手渡される。そのたび、礼を言いイチはにこやかに受け取った。

たくさんの包を抱えて自分の部屋に入る。

「ふう。」

ほっと溜息をつきながらそれらを机の上に置いた。

「んもう、イッちゃんたら人気者なんだからー。」

聞き覚えのありすぎる声がしたと思ったら次の瞬間には背後から抱きしめられていた。

「ばっ、離しやがれっ。」
「えー相変わらずつれないねん。」
「うるせ。・・・なんだよ、お前がいたところのそれらは・・・。」

レイがいたであろう場所には想像していた通りの、ありえないほどのチョコが山積みになっていた。

「えー?チョコ?」
「ばかにすんな、そんなん見たら分かるわ。お前さーどうせ食えねえのになんでうけとんだよ?」
「え?やっだイッちゃんたらヤキモチ?もう、可愛いんだからー。」
「ばっ、ちげえよっ。俺はただ・・・」

イチは真っ赤になって否定した。
・・・俺はただ・・・何だろう・・・。このレイの状態は予想していた事だった。
多分山のようにもらってくるであろうと。

そしてなぜか憂鬱な気分になっていた。いっそこなければいいと思っていた。

女の子が男の子にチョコを贈る日。

「イッちゃん、これねー、全部イッちゃん宛だよん。」
「え?」
「前にさ、イチ、食べないなら受け取るなって怒ったでしょ?あれからレイ、ちゃんとお断りしてるから。」
「あ・・・」

そう。前にイチはレイに対してそう言った。
腹を立てて。ひどいことだと。でも・・・半分はただ・・・。

「皆ね、いい子ばっかでちゃんと分かってくれたから。今日もね、ほとんどの子がレイ宛には持ってこなかったよ。たまにね、持ってきてくれた子にはきちんとお断りしたから。」

レイはニッコリとして言った。

「え・・・そ、そうなのか・・・?」
「そうなのー。レイはイッちゃん一筋だからねん。だから安心してねー。」
「なっなんだよそれっ。」

そう憤慨しながらも、イチはなんだか気持がとても軽くなった。

「でもん、イッちゃんこんなモテモテでーレイ、妬けちゃうなー。」
「こ、これはほとんどは義理じゃんか。」
「えーそうでもないよー?分かってないねん。まあ、その方が僕もいいけど・・・。で、イッちゃんは、全部、食べちゃうのん?」

レイが指を口につけ、こてんと首をかしげて聞いてきた。

「え、ああ、まあな。せっかくだし、食べなきゃ悪いから。まあ、まずはナナミのから食う。」

レイはやっぱりね、とニッコリした。

さすがまじめなイチ。もらったものはきちんと食べ、きっとお返しもちきんとするのであろう。
そしてやっぱりナナミのは、中身がどうであれ、ちゃんと食べてあげるのだ、まっさきに。

「そうだろうと思った。あ、そうだ、レイもね、これ、持ってきたん。近所においしいショコラ屋さんがあってね。」

レイはニッコリと小さな上品そうな包を差し出した。

「・・・え?だ、だって、今日って、女が男に渡す日なんだろ?」

ぽかんと口を開けた後でイチがあわてたように言った。

「えー誰がそんなの決めたの?レイはイッちゃんに渡したいから渡すだけ。それでいいじゃない?」

レイは相変わらずニコニコしたままそう言った。

「そ、そうなのか?・・・あ、ありがとう・・・。そ、その・・・」
「ああ、イッちゃんから?いいよん、どうせまじめなイッちゃんの事だから、女の子からっていう事、そのまま受け止めてるんだろなって思ってからん。用意、してくれてないの、気にしないよん。」

レイからの包をおずおずと受け取った後、赤い顔をしてもじもじしているイチを見て、レイはそう言った。

「え、いや、その・・・」

もごもごと何かを呟いたかと思えば、イチはさっと自分の机へ移動し、何やらごそごそしだした。
そしてまた俯いたままレイのところに戻ってくる。