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きみのなまえをどうかよばせて

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side::枢軸




前髪ではねた陽

少し前髪が伸びただろうか。視界にうろつく黒が煩わしい。でも、暗い黒髪の隙間から見えた世界が嫌に眩しく見えて思わず目を伏せた。私の目がこんな綺麗な光に耐えられる筈もなく。伸びた前髪は切れなかった。
(97字)



選りすぐりの婉曲なら

どうして優しい人たちの言葉を素直に受け止められなくなったのか。彼らは自分の身を案じてくれているというのに。結局この口から出るのはいつもの決まり文句。もちろんいつもの下手な笑顔も添えて、「また今度」
(98字)



汚点のある肌

人の気も知らないで笑っている頬をつねってみた。やわらかい肌だ。いたいよ!と泣いている彼を見るのはちょっと楽しい。だから笑うつもりだったのに涙が出た。彼とはあまりにも違う己の汚れた手に、絶望したからだ。
(100字)



どれでも好きな灯を持って

静かに涙を流しているとぎゅっと抱きしめられた。この子も同じように泣いていて、肩越しに見えた彼は困ったように笑っていた。こんなに暖かい灯に気付かないなんて。人前で声を上げて泣いたのは初めてだった。
(97字)