二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

鳥の歌

INDEX|8ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 

二、


 そこにいるような気がして、呼びかけそうになった。
 けれどもすぐに錯覚だとわかり、どうしようもなく気分が沈む。
 松陽が死んで、五日過ぎた。
 思想犯として処刑されたのだ。
 処刑されるまえにしばらく牢獄にとらわれていたから、その間この家にはいなかったのだが、あたりまえのことながら、死んだあとのほうが喪失感は大きい。
 たまについさっきのように松陽が死んだことを忘れて行動して、そのぶん現実を思い知らされて、嫌だ。
「クソッ」
 ひとりだからだれに向かってでもなく、銀時は吐き捨てる。
 そのとき、玄関のほうから訪れを告げる声がした。
 放っておこうかとも思ったが、畳から起きあがる。
 玄関に行く。
 戸を開けると、外には桂が立っていた。その向こうは薄い闇に包まれている。少しまえまではまだ明るかった時刻なのだが、最近、日の暮れるのが早くなった。
「入っていいか」
「どーぞ」
 返事したあと、銀時は踵を返し、部屋のほうへと向かう。背後で戸を閉める音がして、そのうち、桂が付いてくる気配がした。
 部屋に入ると、畳に腰を下ろし、胡座をかく。
 桂は銀時の正面に正座した。
 しばらく、お互い、なにも言わなかった。
 やがて、桂が沈黙を破る。
「高杉のことを聞いたか」
「あ?」
「左眼を刀で突いたそうだ」
 そう銀時を真っ直ぐに見て告げた。
「……あとを追うつもりなら、片眼潰したってしかたねェだろ」
作品名:鳥の歌 作家名:hujio