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暦巡り

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立冬 11月7日




 ひらりひらりと舞い落ちる、紅く染まったモミジの葉。
 風もなく、穏やかに指す小春日和の陽光がよりいっそうその艶やかさを増していた。
 しばし落ち葉を掃き集める手を止めて我が家の過ぎ行く小さな秋を眺める。
 モミジだけではない、桜、ヤマボウシ、カツラにシャラの木、鮮やかに色付いた落葉広葉樹がなんとも目に楽しい。掃除は少々大変ですがやはり四季のうつろいを感じることが出来る庭は良いものですね。日本庭園素晴らしいじゃないですか。
 ひとしきり美しい紅葉を堪能してに満足すると、私は気持ちも新たにほうきを握り直し、中断していた落ち葉掃除を再開させた。


 小さく盛り上がった落ち葉の山を見下ろして、小さく「ふぅ」と息をはく。
 それでもまだ、枯れ葉ははらはら落ちてきますが、それはまた明日ということにして、もう気にしないことにしましょう。きりがありませんからねえ。紅葉が終わるまであと何回落ち葉掃きをすることになるんでしょう。
 さて、あとは集めた落ち葉の始末ですが……今日は風もありませんし、ここで焚くことにしましょうか。
 念のため隣近所に焚き火をすると一言断りを入れ、それから消化用の水をバケツに汲む。空気が乾燥して火事が怖い時期になりましたからね。十分に気を付けなくてはいけません。
 用意は整いました。さあ始めましょうか。
 マッチを擦り、ねじった新聞紙に火をつけ、落ち葉の中にくべると火種はすぐに枯れ葉に燃え移った。徐々に大きくなる赤い炎がちらちらと揺らめく。
 立ち上る白煙が青空に吸い込まれて行く様子を眺めていると、
「にほーん、いるかーい?」
 門扉の方から私を呼ぶ声がした。アメリカさんの声だ。
 あの人の訪問はいつも突然ですね。もし、私がいなかったらどうするつもりだったんでしょう?
「こっちですよ、庭の方に来てください」
 火の側から離れるわけにもいかず、声だけでそう返すと「オッケー」と軽い口調の了承が聞こえてくる。
 ほどなくして現れたアメリカさんは大きな段ボールを抱えていました。
「ど、どうしたんですか、それ?」
 中身はサツマ芋がぎっしり。
 そのあまりの量に驚いて思わずたずねると、アメリカさんはにんまりと口角を持ち上げ、
「焼き芋をするんだぞ!」
 それは楽しそうにおっしゃいました。
 ははあ、なるほど。焼きいもですか。それはなかなか結構な提案なのですが……まさか、それ全部ではないですよね? 焼き芋の行商にでも行くおつもりですか?
 しかし、嫌な予感ほど的中するもので。
「すごいぞ、日本! もう準備万端じゃないか! これが以心伝心ってやつかい?」
「え、あ、アメリカさん、ちょっとま――」
 焚き火を見つけたアメリカさんは興奮した様子で早口に捲し立て、制止する間もなくサツマ芋をその中に投入しました。

 どさどさどさどさっ!

 段ボール一箱まるっと全部、残らず全て。

 ぷしゅ〜。

 焚き火、鎮火。

「なんでだい!?」
「……多すぎたんですよ」
 芋が完全に焚き火を埋め尽くしているではありませんか。火が消えて当たり前です。
「小さな焚き火ですからね。芋を焼くなら、ひとつが限度でしょう」
 アメリカさんは「たった一個……」と不満そうでしたが、すぐに「仕方ないね。じゃあ、半分こにしょうか」そう言ってぱちんとウインクをしました。
「ふふ、そうですね」
 アメリカさんはきっと物足りないでしょうけれども、幸か不幸か、サツマ芋はいっぱいあります。あとで何かおやつでもこしらえることにしましょうか。
 アメリカさんに芋の山を片付けてもらっている間に、程よい大きさのサツマ芋を選んで、濡らした新聞紙で包んでから、さらにホイルをかぶせたものを用意します。そのまま焚き火に放り込んでも、きれいに美味しく焼くことは出来ません。
 再び起こした焚き火の炎が落ち着いてきたら真ん中に芋をうずめて、さあ、焼き上がりを待ちましょう。


 焼き上がった芋を半分に割ると湯気と共に甘い香りがふわりと立つ。
 鮮やかな黄色の実はホクホクで、我ながら美味しそうに焼けました。
 約束通り半分こにした焼き芋を、縁側に並んで座るアメリカさんに手渡す。
「熱いので火傷しないようにお気をつけて」
「ありがとう……あっふぃい!」
「ああ、ほら、言ったそばから」
 さっそく焼き芋に噛り付いたアメリカさんが、案の定その熱さに眉をしかめ、はふはふと息を吐く。
「大丈夫ですか? 火傷していません?」
「平気だぞ!」
 私の心配をよそに彼は「焼き芋、美味しいね!」と朗らかに笑うと、あっという間に半分の焼き芋をぺろりと平らげてしまいました。「なくなっちゃた……」と寂しげに呟くアメリカさん。やっぱり半分じゃ足りなかったんですね。
「私の分も、どうぞアメリカさんが食べてください」
「いいのかい? 日本全然食べてないだろ?」
「構いませんよ」
 珍しく遠慮するアメリカさんに、落ち葉が積もり始めた庭を見回してそう答える。また焚き火をする機会はあるでしょうから。……芋もいっぱい有りますし。視界の隅に映ったサツマ芋満載のダンボールに、思わず苦笑いを零す。
 「ありがとう、日本!」と、嬉しそうに私から芋を受け取ったアメリカさんがそれを食べ終わる頃には、陽もだいぶ傾いていました。最近すっかりと夕暮れが早くなりましたね。風も出てきたようです。庭木がばさばさと揺れて枯葉を降らせる。案外すぐに、また焼き芋が出来そうです。
「あ、雪虫」
 舞う枯れ葉たちの隙間に、ふわふわと浮かぶ白い綿毛のようなものを見つけて声を上げる。もうそんな時期なんですね。
「ゆきむし?」
「初雪を知らせる、冬の使者ですよ」




END

作品名:暦巡り 作家名:チダ。