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裏ふぁーすとでーと?

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「――あーまだ顎痛え」
「……あれはどう考えても桜田さんが悪いですよ」
顎をさすりながらぼやく俺に大宮が呆れた視線を送ってくる。
――失礼なヤツだ。
そういやなんで大宮がいるんだ?
「今更ですか?」
「うっせーな。なんでいるんだよ?」
はぁ、と軽く溜め息を吐くと、
「真冬さんや桜田さんだけだと不安なんで、一応フォロー役として俺がついてきたんです」
子分代表ですよ、と言われて考える。
「そこまでする必要があんのか?」
断るだけだろ?
俺の台詞にキッとこちらをにらみ付け、
「いいですか、桜田さん」
真剣すぎる表情に思わず姿勢を正す。
「な、なんだよ?」
「俺の集めた情報によると北校番長の葵さんは、俺らが女装して北校に潜入したときからずっと桜田さんが気になってたそうです」
……そ、そんなときから……?
「そんな一途に思い続けてた人が、簡単に諦めるとは思いません!」
……確かに……
「だからこそ今日二人には、誰から見ても入り込むスキがないというほどのバカップルを演じてもらわなければなりません!」
……ゑ……?
ガシッと肩をつかまれ、
「今日は恥ずかしいとかいう感情は捨て去ってください!
……まかり間違って葵さんとつきあうことになったら、俺らの中で桜田さんは星になったと思って次の番長探しますので、覚悟してくださいね?」
……ひょっとして……番長の座かなりヤバいのか……?
「さあ、真冬さんにもその覚悟をしてもらいますよ!」
暗澹たる気持ちで、待ち合わせの駅前の時計塔に向かう。
――とそこには軽く女の子たちの人だかりが出来ていた。
――なんだ?
「なんですかね?」
気になって女の子たちの間から顔をだして、覗いてみる。
「あのコ可愛くない?」
「美少年だよね~」
「彼女待ってるのかなあ?」
女の子の囁きと注目の的になっているのは一人の少年だった。
薄手のグレーのシャツに白いベスト。カーキ色のパンツ。首から下げられたシルバーのクロスのネックレスが印象的だ。
さらりとした薄茶色の髪と同色の瞳がこちらに向けられる。
ニコリと微笑むその顔は文句なしの美少年だった。

「桜田」

女の子たちの黄色い声の飛び交う中で、ソイツが発したハスキーボイスは俺を呼んでいた。
視線が一斉に俺に集中する。
「あーやっぱ彼女待ちかー」
「残念だねー」
「でもお似合いだよね~」
「彼女もカワイイし」
俺の焦りをよそにソイツはこちらにズンズン近付いてくる。
もう一度微笑み、顔を近付けられ、
「なかなかの美少年だと思わない?」
「――黒崎!?」

やっぱそうのかよ!?
作品名:裏ふぁーすとでーと? 作家名:如月花菜