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ふざけんなぁ!! 5

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23.あなたの希望は何ですか? 1




さあ、何時でも来い!!
帝人は拳をぐぐぐっと握り締めた。


「お会計は、3200円になります」


レジのお姉さんの明るくて元気な無情の一言に、がっくりと肩を落とす。
握り締めていた十円玉と一円玉、それぞれ9枚ずつを、敗北感に苛まれながら、はちきれそうになってる財布の小銭入れに戻し、改めて五千円札をぽしっと清算ケースに置いた。
ああ、今日も財布が更に重くなる。


「1800円のお返しです」


彼女はにこやかにお釣りを寄越してきたが、お金の下には何故か、信号機と全く同じ組み合わせの、細長い三色の紙があって。

「出口にペンがありますので、宜しかったらどうぞ」
流れる手の動きに吊られて見ると、外の街燈に三メートルぐらいの笹の木が縛り付けられており、風に煽られた短冊と紙細工がゆらゆらゆれていた。


「ああ、そういえば、もう直ぐ七夕だぁ♪」

小さい頃は正臣と林に笹を切りに行き、祖父母と四人、競って折り紙で星や天の川、それにちょうちん等の紙細工を作ったものだ。

池袋のような都会では、故郷の田舎みたいな満天の星空は望めないだろうが、懐かしいイベントの想い出に、自然と目と口がにんまり細くなる。
非日常が服着て歩いている、池袋最強と呼ばれるあの人は、一体どういう願い事をするのだろう?
とっても知りたくなった。

「……えへへ、しっずおさぁぁぁぁん♪……」

食材をマイバックに手早く詰め込み、帝人は軽い足取りで外に駆け出した。



★☆★☆★


この頃何処の建物でも、完全禁煙か、喫煙ルーム、もしくは外に行けと隔離を強要される。
煙草愛好家にとって煩い世の中になりやがってと思いつつも、愛しい帝人の肺に害ある煙を入れたくない訳で。
静雄は少女の買い物を待ちつつ、日差しがきつい炎天下の元、一人静かに煙草を燻らせていた。

一週間に一度の休日は、何時もだったら午前中は家で帝人とゴロゴロぐうたらして、午後からは彼女の行きたい所へ一緒についていくのが、今までのパターンだった。
花見、映画、はとバス、お台場、水族館、動物園、ライブ、舞台、美術館、コンサート、テーマパーク、スタンプラリー、フリマ等々。
彼女はお得クーポン券や割引券、それに無料招待券をせっせとかき集めてくるから、懐具合もメッチャ優しいし。
自分だけなら絶対近寄らないだろう人ごみも、逆に静まり返った高尚な芸術の場も、帝人と一緒なら何でも楽しく心も癒された。

四月以来、日曜日の午後は静雄にとって、高校時代に逆戻りしてしまったような、大切なデート時間だったのだが、今週はどうしても遊び歩く気になれなかった。


煙をふかしつつ、ちらりとガラス越しに書籍コーナーを覗けば、大量に平積みされた今日発売の女性週刊誌の見出しには、でかでかと『羽島幽平 失踪!?』とある。
今、静雄の一番の頭の痛い悩みは、弟の幽の事だった。



三日前、帝人に無理やり婚約を認めさせたあの夜。
彼は何とハリウッドの仕事を途中で切り上げ、急遽帰国していたのだ。
あの仕事中毒かと思うぐらい俳優業を愛し、デビュー以来役柄を一切選ばず何でもこなしてきたパーフェクト俳優『羽島幽平』が、まさかの途中降板だ。

不幸中の幸いか、渡米していたから日本での仕事は今の所入っておらず、ドタキャンする危険はほぼ心配要らなかったが、世間は今、幽が忽然と消えたせいで、滅茶苦茶な騒ぎになっている。

おまけにあの夜以降、弟は、ずっと静雄の家に住み着いていて。
元々の彼の部屋は片付けるのも面倒だったので、家を出た時のまま手つかずで残してあったから簡単な掃除と布団干しだけで済んだし、帝人と静雄の関係も、今まで通りの清いお付き合いを保っている為、三人での生活は、一切困った事はなかったのだけど。

彼は現状、ずっと自宅に、所謂引きこもり状態になってしまったのだ。
理由は一切判らない。
私生活の幽は元々饒舌ではないし、静雄も口下手だ。
兄弟揃ったとしても、日常の挨拶以外、録に会話も成立しない有様で、二人の世話をせっせと焼いてくれる帝人の方が、まだまともにしゃべっているぐらいだ。

情けない事に自分は幽の事が全く判らなくて、どう元気づけてやればいいのか方法一つ思いつけず、これでも兄なのかと悔しくて。
せめて弟が自分の気持ちにケリをつけるまで、静かに暮らせるように守ってやるのが自分の役割だと腹を括った。

だから静雄は現在、上司のトムにすら、弟が転がり込んできた事を告げていない。
帝人にも、「幼馴染に絶対言うな」と釘を刺しておいたのだが、昨日再び確認した時に目が泳いでいたから、多分口を割らされた筈。
あの少年は軽薄そうに見えるが、タイプ的には門田と同じ部類で義理堅い。
帝人が困るような事は絶対しない……、そんな確信があるからこそ、静雄は今の所呼び出しての口止めもしていない。

(あー、でもなぁ、幽が所属するプロダクションぐらいは、一言言っておいた方がいいかもな)

確か「何かあったときの連絡先よ」と、母親に言われて登録しておいた覚えがある。
そう多くない入力済み番号を確認しようと、スラックスから青い携帯電話を取り出し、二つ折りになっていたそれを開く。
すると、見覚えのないアドレスからのメールが一通入っていた。
よくよく確かめれば、それは帝人の母親から転送された、来良学園からの保護者への案内で。

「………三者面談のお知らせ。………竜ヶ峰帝人は、……7月7日の火曜日14時って……、明後日……。ったく、急すぎるじゃねーか……、もっと事前に言いやがれ!!」
期末テスト前の試験週間、授業が半日になるから、空けた午後にやっちまおうって事らしいが、今から上司に頼んで、半日休みを貰えるだろうか?
それに帝人の母親……、電話でも感じたが、やっぱりいい根性してやがる。

【まだ高校一年で進路に殆ど影響のない娘と、その担任の顔を15分見る為に、埼玉のど田舎からわざわざ上京するぐらいなら、パートに行って来ます♪ 平和島家で判断宜しくお願いしますね♪】とあった。
暗にお前が行って、報告寄越せと言っているようなもんだ。

面倒臭せぇとは思わなかった。
帝人がどんな学校生活を送っているのか興味あったし、それに七人がかりで彼女を取り囲み、来良辞めろの大合唱しやがった件の、お礼参りも済んでねぇ。

それに将来の義母に、ここは一つ良い所を見せておきたい虚栄もある。

幽の所属事務所の件をすっぱり忘れ、がじがじと煙草のフィルターを齧りつつ、アドレスから上司の携帯番号を探していると、バックを右肩に担いだ帝人が、小走りで駆け寄ってきた。

「えへへ、静雄さん♪ これ、レジで貰っちゃいましたぁぁぁ♪」
彼女はぽくぽく顔を綻ばせ、七夕の短冊三枚と、出口で借りてきた筆ペンを見せびらかす。

「さあ、願い事を書きに行きましょ♪ 二枚は静雄さんにあげますから、しっかり書いて下さいね♪」
スーパーのささやかなイベントごときで、どうしてそんなにはしゃげるんだか。
静雄にとって永遠の謎だけど、彼女のきらきら輝く嬉しそうな顔を見ていると、こっちまで明るく晴れやかな気分になってくるから不思議だ。


「あー帝人、お前二枚書け」
「え?」
作品名:ふざけんなぁ!! 5 作家名:みかる