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一日一ミハエルチャレンジ

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2/2 シュミット





「ねえ」

「なんですか」

信号待ちで隣に並んで立つシュミットを、思い切り見上げてミハエルが声をかける。
言葉遣いは丁寧だが、どことなくぞんざいな調子をにおわせつつ、シュミットは前を向いたまま答える。
普段から尊大と取られがちな態度のシュミットではあるが、ミハエルにそれを出すのは珍しい。
しかし、当のミハエルは大して気にした素振りもない。
にこり、笑った。

「イライラしてる」

「…していません」

「してるよね?」

否定に被せて身を乗り出すようにして、更に尋ねると、

「…………しています」

渋々といったていでシュミットが眉間に皺を寄せた。

「そんなにイライラばっかりしてると寿命が縮みそうだよね」

あははと屈託なく笑うミハエルに、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「何とでも言ってください」

苛つくものは苛つくのだから仕方ない、と、ここでシュミットが開き直る。

「2軍の不甲斐なさには呆れ果てるばかりだし」

「まあ、2軍だもんね」

「もう一勝で優勝確定というところで突然マシンは不調になるし」

「ちょっとメンテが甘かったかなあ」

一番得意な人がいないもんね、とミハエルが口を挟む。
シュミットが小さく眉を顰めた。

「この信号は無駄に長いし」

「あはは、それ完全に八つ当たり」

「八つ当たりだろうが何だろうが、苛つかずにいられますか」

「うーん、そうだね、」

ミハエルが面白がるように下から覗き込む。

「それに、エーリッヒもいないし?」

「……………」

ぐぐ、と更に寄った眉間めがけて、ミハエルがえい、と指を突き出した。

「いきなり何ですか、リーダー!」

危うく目を突かれそうになって、シュミットが抗議の声を上げる。
しかし、ミハエルの指は離れることはなくて、

「寿命。縮まないように、おまじない」

「は?」

「おまじない」

繰り返して、シュミットの眉間をぐりぐりと解すように指を動かした。

「シュミットのイライラが早く治まりますように」

にこにこと邪気のない笑顔がそれを後押しして、毒気を抜かれたシュミットが、小さく溜息を吐いた。

「かないません、リーダーには」

「そう?」

「かないませんよ」

今度はゆっくりと肩の力を抜いて言われた言葉に、ミハエルは満面の笑みで答えた。

「おまじない、すぐに効いたね」




2010.02.02