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いつか愛になる日まで

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 たとえ凍夜がカカシさんだったとしても関係のないことだった。他人より能力が高くて、ときどき暗部の仕事をして、ときどきバカっぽい話し方をする。知りたがりで、ご飯を一緒に食べたがって、ちょっと寂しがり屋だ。それでいいし、知らないことはこれからゆっくり知っていけばいい。
 こたつで手を繋いだ二人はそれから一緒に布団をひいた。シーツの端と端を持って布団を整え、並んで歯を磨いた。そしてまた手を繋いで、互いに微笑みあった。
「初詣は朝にしましょう」とイルカは言った。
「はい」とカカシは頷いた。
 朝、布団は1組だけ乱れていた。


 正月明けに稲妻の速さで里内を駆け巡った噂は「ついにイルカとカカシが付き合いだしたらしい」という誰もが半信半疑のものだった。二人はデキテイルのかイナイのか、もう気になって気になって仕方なくてウズウズする。
 確認したいのはやまやまだが、イルカに確認して、「あいつにあんなことを言われた」なんて上忍様に告げ口されたら『殺しちゃうかもね』が現実になるかもしれない。自分じゃなけりゃ現実になってもいいが、もし現実にならなくても里の英雄に『馬鹿なこと言って生きてる価値あるの?』みたいな白い眼で見られたら死にたくなる。そんなわけで同僚たちは誰も確認ができなかった。
 が、そんなことはまったく関係ない人たちがここにいる。上忍たちは人の迷惑を顧みずにわーわーと好き勝手なことを口にしては笑っている。たぶん自分たちが楽しみたいだけだ。どうせまた賭けにする気なんだろう・・・ってか、もう賭けになっているに違いない。
 しかし、ここは受付だ。報告書を提出しにくる忍たちでごったがえす魔の18時だ。こっから2時間が勝負の時間帯だというのにそんなことは考えていないんだろう上忍たちは自分たちの報告書を提出しても立ち去ろうとせずにイルカに話しかける。
「私は元旦に手をつないでいるのを見たって聞いたのよ」
「いや、それは違うぞ。俺は正月3日間イルカの家で過ごしたって聞いた」
「うおぉぉ! いい話だ。一緒に走りませんか、夕日に向かって」
 このたいして広くもない受付に山ほど人がいるのに、上忍3人の会話がはっきり聞こえるのは目の前にいるからというより誰もが耳をダンボにしているからにほかならなかった。どいつもこいつも暇人か! と何度ツッコミをいれたことか。
完全に3人を無視してイルカは「はい、次の人」と『受付済』のゴム印を持って言った。
 しかし、並んでいたのはごくごく普通の中忍だ。上忍3人を差し置いて、報告書を提出できるほど肝が据わっているわけはない。『波風たてず、穏便に。黒でも白と言おう、明日のために』を地でいっている。
「イ、 イルカ」
 ぶるぶると首を振る同僚を見て、気にすんなと頷き、それから迷惑な上忍たちを追い払うようにシッシッと手を振った。
「ちょっと邪魔ですよ、あなたたち。もう正月は10日も過ぎているって言うのになんなんですか。人の顔を見ればそんなことばっかり言って」
 イルカもなかなか強気だ。それというのも、受付業務は絶対拒否と心に決めていたところに火影がアンコとともに平謝りに謝ってきたからだった。二人が謝ってきたからといって許す気はさらさらなかったイルカだったが、受付のあまりの混乱ぶりに同僚から泣きが入り、渋々業務に戻ったのが今日だった。
「だいたいですよ? あなたたちが毎日毎日人が残業しているところに押しかけて騒ぐから教員室を追い出されたんですっ、私は!」
 腹立ちまぎれにイルカはバンッと机を叩いた。おいおい、と周りの同僚たちがイルカをなだめるが、それをも台無しにするかのごとく紅はウインクまでして言った。
「何言ってるんですかー、イルカ先生。火影様にぺこぺこ謝らせたくせして最強でっす!」
「あのアンコでさえ頭を下げてたぞ。イルカ先生、スゲェでっす!」
「イルカ先生、青と春でっす! あわせて青春でっす!」
 ワル乗りしたアスマとガイがくだらないことを言って、3人揃ってゲラゲラ笑う。
 やっぱり、やっぱり上忍なんて中忍のことをこれっぽちも考えたことなんてないんだ! わかっているけどなんか腹が立つ!
 怒り心頭のイルカをさらにヒートアップさせるかのごとく、新たなるやっかい者が登場する。
「イルカさまー、粗茶をお持ちいたしましたっ」
「お茶うけはうさぎ屋の落雁でございますっ」
 うーん、まったくもって聞きたくない声だ。ふるふると両手を震わせながらもイルカは努めて冷静になろうと大きく深呼吸をする。
「げっ!」
「火影様っ」
「マジか」
 混雑している受付の人波が綺麗に二つに分かれて、その間を静々と火影たちが歩いてくる。神妙な顔が人を馬鹿にしているとしか思えない。
「受付業務、お疲れ様でございますー」
 普段より1オクターブ高い声でアンコが言い、火影が机に湯のみを置いたのに続いて小皿を置いた。
 驚いていた外野も火影まで登場して好奇心は抑えたくても抑えられない。もう絶対この場から動かないもんねと心に決めたかのごとく足場を確保、息をひそめてなりゆきを見守っている。
「アンコさん」
 イルカは痛む頭に手をやりながら静かに言った。
「はいっ」
 演技以外の何物でもないような元気な返事が返ってくる。
「気持ち悪いんですけど」
「お風邪ですか?」
 そのボケをどうにかしろっ、と怒鳴りたいのを我慢して「喋り方です」と言えば唸るような声になった。
「火影様。で、実際のところ、イルカたちってどうなんですか?」
 何が「で」だ。話に脈絡がないし、大きなお世話だ。ジロリと紅を睨むがまったく効き目はない。
「私がリークしたら賭けにならんだろう。で、オッズはどうなってる?」
 火影様まで何が「で」なんだ。どいつもこいつも腹立つことを言うのは上司ときている。この腹の中の怒りをどうしてくれよう。
「あれ?」
 静まり返る部屋の中に不思議そうな声が響いた途端、イルカは机に額を打ち付けそうになった。なんっで、あなたまで!
 戸口に立って首を傾げているのは噂の銀髪上忍だ。レッドカーペットが敷かれているかのごとく、真っ二つに分かれていた人垣を左右に軽い足取りでイルカの前までやってくる。気づいていないわけはないだろうに不自然すぎる雰囲気をものともせず、まっすぐやってくるとニッコリ笑った。ちくしょう、カッコいいじゃねぇかと言葉汚くイルカは胸の中でつぶやいた。
 受付はこれ以上ない興奮に包まれている。聞きたくても聞けなかったことが判明しようとしている。それも当事者2人が揃っている上に火影様まで賭け事容認とくりゃ気分はお祭りモードに突入だ。
 実際のところ、掛け率は「ガセ9、マジ1」といったところで、ほとんど誰もがイルカたちのことを本気にしてはいなかった。「マジ」に賭けたのは大穴狙いか、ガイのように『良いではないか、良いではないか』と正月お祝儀気分の者だけだった。
 イルカはご機嫌なカカシを無視して、バンッと机を叩いて立ちあがり、「できてるに3万円!!」と言って、懐から取り出した万札3枚を机に叩きつけた。
「配当はキッチリいただきますからねっ」
 呆気にとられている居並ぶ人々をギロッと睨むとイルカは里で一番腹の立つ女傑に言った。
作品名:いつか愛になる日まで 作家名:かける