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みっふー♪
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かぐたん&ぱっつんのやみなべ★よろず帳

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《付録》新・センセイのいざかやカフェへようこそ☆



その日カフェは賑わっていた。マスターは疲れていた。稼ぎ時だぜがっつかなきゃ!とかゆー気概はもともとないに等しいが、てかないと断言していいが、それにも増してぐったり疲弊しきっていた。
「おにーーーさまーーーーっ!!!」
全っ然ウレシくもなんともない野郎のドス声できゃっきゃ懐いてくるおさげ兄貴に、
「……俺はオマエの兄貴じゃねぇぞ」
マスターはオクターブ低めた圧に吐き出した。
「またまたーっ!」
兄貴はけらけら笑うと、威嚇するマスターの背をばしばし叩いた、
「ウチの妹子がお兄様のとこヨメに行ったら、ボクらギリの兄弟じゃないすかーーーっ!」
――キケンなヒ・ビ・キっ☆ 根拠はわからないが、とにかく兄貴は俄然ウカレチョーシこいていた。
「……。」
マスターは頭がガンガンした。眉間に縦皺ぐっちゃぐちゃにしながらチャイナ妹に問うてみた。
「……オイ、あれオマエの兄貴な、アホ毛持ちなだけじゃなくてリアルにアホなのか?」
「んもーっ、」
テーブルにダベってすこんぶジュースをちびちびやっていたチャイナ少女が、心底めーわくそうにおだんご頭を上げた。
「だからぁ、何度も言うけどぉ、私は基本自由人でちょっぴりミステリアスでかつひらめき的センスに溢れた純正一人っ子なんだってば!」
――兄貴なんか存在すら知らないね! 少女はつーいとそっぽを向いた。
「……」
拳を握ったマスターの天パがふるふるした。
「――おいグゥ子、」
と、おさげ番長のバカ兄貴がマスターの肩越しにひょいと顔を出した。
「グー子?」
腕組みのままマスターが振り向いた。兄貴はニカッと懐こい顔に笑った。
「こいつね、妹子って呼ぶとドコのゲテモノハンターだっつって怒るんすよ、で、いっつもお腹ぐーぐー鳴ってるから、だったらグゥ子じゃね?つって、」
「ああー……、」
マスターは頷いた。こいつの話す内容にすっと納得できたのはこれがこの日初めてである。
「お断りある!」
――ダン! それまでだらしなく寝そべっていたテーブルを叩いてチャイナ妹が起き上がった。眉はキッと吊り上がり、への字に結んだ口が強い抗議の意を表している。
「ただし、ぐらまらすのグラ子なら妥協のよちはあるね、」
やや表情を緩めた妹がフフンと胸を張った。
「……どこが?」
半眼のマスターはぼそりと悪気なく口にした。
「……」
ソファに腰掛けた少女がぐっと顎を引いた。視線がストーーン、どこにも引っ掛からずにチャイナの靴先まで落ちた。
「わぁぁぁ!!!」
すこんぶドリンクのグラスを巻き込んで少女はテーブルに突っ伏した。
「あっ泣かしたっ! 今のはマスターが悪いですよっ」
間髪入れず布巾持ってテーブルを片しにかかったメガネ少年が指差しで非難した。テーブル脇に待機していた少女の愛犬も耳を立ててむくりと起き上がった。
「オレかよ!」
唸るワン公のロックオンと思いがけぬ少女のダダ泣きに若干キョドリつつ、マスターはなお大人気なく反論した、「こっちの兄貴だろ、先にヘンなアダ名で呼び出したのはっ」
「えー、」
おさげの毛先を遊ばせながら兄貴がマスターの方を見た、
「やっぱボクが兄貴の方がイイですかぁ〜? まぁ立場上は確かにボクのが年下でも兄ってことになりますけどぉ、」
兄貴はへらへら笑っている。マスターは頭痛がした。――やっぱり無理だ、こいつと一瞬でも会話が成り立つと思った俺がアサハカだったんだ、マスターのやるせない慚愧など察する由もなく兄は言った、
「さぁ弟よっ! そういうわけでエンリョなく兄の胸に飛び込みたまえっ!」
満面の笑みで両手を広げて兄貴がカモン!のポーズを取った。
「……。」
マスターのこめかみが限界ギリギリビキビキ鳴った、
「殴っていーかオマエ、」
――ちっちっち、バカ兄貴が指を振った。それから心底上から憐れむ目をしてマスターを見た。
「……かわいそーに、キミはまだ愛を知らないんだねっ、そやってナンでもカンでもぼーりょくで解決しよーとするのは感心しないナァと、かのゆーめいなガンジン和尚もおっしゃっておられますよっ」
「間違ってんのか間違ってねーのかビミョーなトコ突いてくんじゃねぇよ……」
ツッコミ処理がめんどくせーだろが、マスターはうんざりした。
一方その頃、カウンター席でしっぽりおじさま(?)方に囲まれた先生はご満悦でお酌中であった。
「……いやぁ、活気がありますなぁ、」
注いでもらった盃を掲げてグラサンおじさんが陽気に言った、
「若者がガンガンやり合ってる喧騒をサカナに飲む酒はウマイ!」
――かんぱーい!
おっちゃんが、隣でにがよもぎ酒をシブくやってるガタイのいい世紀末劇画調長髪のおじさま(?)の盃に杯を合わせた。
「……」
おじさま(?)が軽く会釈を返す。歴戦勇士の見た目はイカチいが、性格はわりに温厚そうだ。気分よくぐびっとやったおっちゃんが盃を置いた。先生がいそいそと空になった盃を満たす。
「何というか、失われた政治の季節を思い出しませんか、」
「……」
おっちゃんが再び盃を上げてきた。同意を求められている様子なので、無頼風おじさま(?)も心持ち相槌を打つ。身を乗り出しておっちゃんが言った、
「やっぱアレでしょう、火炎ビンとか相当投げられたんでしょう?」
最後の方は口元に掌を添えて、やや落とした声のトーンに訊ねてくる、
「はぁ……?」
ヒッピー長髪にズタボロヘビィマントスタイルのおじさま(?)が困惑気味に首を傾げた。――や、こりゃいきなり失敬、おっちゃんがはははと後ろ頭を掻いた。
「……いやほら、そちらさん居住まいからしてかなりドープなラヴ&ピースでいらっしゃるから! 夜はセクトの皆でバリケードの中、焚火囲んでフォークギターじゃんがじゃんが、大熱唱してハモるんでしょうなぁ……」
おっちゃんがグラサン越しにうっとり遠い目をした。先生はそれを前髪の下からキラキラ見ていた。
「……はぁ……」
話し込まれたおじさま(?)の方はリアクションに困っていた。桃源郷から帰って来たおっちゃんが言った。
「私もね、こう見えて学生時代のサークルでフォークは少々かじったクチでしてね、……どーです、セッションなんかひとつ!」
ひといきに盃を空けたおっちゃんがパチンと指を鳴らした。すかさず先生がカウンターの下から使い込まれたギターを出した。
♪ジャカジャーン、しみじみと柔らかい弦の音色が、狭い店内に、――少女のわんわん泣き喚き声と犬のワンワン吠え声と必死になだめる少年と、あとリア厨とガチでやり合うアラサーのガナリ声に重ねて響き渡る。
「……」
盃を置いたボヘミアンおじさま(?)の口元がふっとニヒルに緩んだ。先生はわくわく☆した。おじさまは分厚いマントの胸元をふぁさっとダンディに探った。